PandoraPartyProject

ギルドスレッド

潮騒の従者斡旋所

幻想は燃えているか

時を昼に引き戻すかのような灯りは、ぱちぱちと鳴る。

まばらな拍手にも似た。
そう思わせるぐらいに、聴衆は少なすぎた。

見つめる影が、二人分。
喝采のない悲劇を眺めていた。

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私、火が苦手なのですよね。ほら、海種ですから。
もう見ているだけで恐ろしくて恐ろしくて。
あら奇遇ね。私もよ。
お日様の光ほどではないけれど。
なんとなく……全てを無に帰されてしまいそうで。
おやおや、似たもの同士ですね私たち。
これはまったく夜にはそぐわぬ灯りです。
実際に、すべてが無に帰りそうな光景ですけれども。

私としては、お金を返してくれるならそれで良かったんですけれどねえ。
ええ本当に。不幸な事故だったわ……。
欲をかけば却って全てを失うということかしら?
人間、ほどほどが一番ね。
事故。
……そうですね。原因と結果の結びつきとも言いましょう。
物事にはすべて因果があります。

道の真ん中で寝ていれば馬車に轢かれるように。
約束を違えなければ事故には遭わなかったでしょうに。
噂は彼、方々から借りてたみたいよ。
取り立てに来たのも私達が最初じゃないんじゃないかしら?
なんだか対応が手慣れてたもの。
まあ、むべなるかな。
哀しいですねえ。本当に哀しい。
本人も、きっと慣れたつもりで応対してくださったのだと思いますけれど……

今までイレギュラーにお金を借りたことがなかったのでしょう。
そうね。とても残念なことだわ。
イレギュラーズといえども鬼ではないもの。
ちゃんと話し合えば、お互いにとって有益な結論に辿り着けたはずなのに。
……犬をけしかけられたときは、ちょっとだけムキになってしまったけれど。
おや、犬はお嫌いで?
私は賢い犬は好きですよ。賢ければ。
猫などと違ってちゃんと言うことを聞きますもの。

まあ、犬は仕える主人を選べませんからね。
泥舟に乗って沈むが如くは、まるで狸のような。
犬にはあまりいい思い出がないのよ。
「あちら」にいた頃には追い回されたこともあるし……。
あの子達鼻がいいでしょう?
人間は私みたいな異物をあぶり出す時によく使うのよね、犬。
おやおや、追われる側の感想ですね。
そういう時は水に飛び込むことをお勧めしますよ。
こんな風に暑苦しいこともありませんし。

ああ、お肌が乾燥してしまいますねえ。
弱点を晒すようだけれど、泳ぎもあまり得意ではないの。
……私って苦手なものが多いのね。

この間もせっかく水着を仕立ててもらったのに、夕暮れのビーチで大人しく座っているしかなかったわ。
あえて弱みを見せるのも淑女の嗜みですもの。
さほど気にされることでもないと思いますわ。
良いものはただそこに「在る」だけで良いものですもの。

苦手の代わりに、楽しいことがたくさんあると良いですねえ。
良いものはただそこに在るだけで良い……。
レモラはいいことを言うわね。
ねぇ、あなたもそう思わない?
(視線の先、地面に転がった男に声をかける。顔を覆う頭陀袋の下からは、もごもごと唸るような声が聞こえる)
……何を言ってるのかわからないわ。

楽しい事ならこっちに来てからたくさんあったわよ。
今日のお仕事もその一つね。
ふふっ。
メリンダさんのように正しく評価をいただける方は好きですよ。
まったく、誰かも正しい評価をくださればよかったのに。
(眼下にあるそれを認識しつつも、言葉は宙に向けて)

まあ、それはそれは。
誰かの不幸は蜜の味とも申しますし。
発端は不幸な事故でしたけれど、終わり良ければ全て良し、と。
うふふ。
私たち、良い関係を築けそうね。

……でも本当に良かったのかしら?
私は楽しかったけれど、レモラの目的の方は……。
ご心配なく。
こういう輩は無い無いといって、その実どこかに隠し持っているのです。
天井裏にはありませんでしたし、金庫もありませんでしたけれど……

であるならば床下でしょう。
燃え尽きた後に掘り返せば何かしらでて来るのではなくて?

ねえ?
まあ、さすがレモラだわ!
私が大立ち回りを演じている間に、そんな所まで調べていただなんて。
レモラに一度目をつけられたら、万に一つも逃げられないわね。
洗いざらい話してしまったほうが楽になれるんじゃないかしら?

ねえ?
ふふっ、そう褒められると思わず耳が動きます。
きめ細やかな心配り、それと目配せが私のお仕事ですもの。
獲物を定めたら追い詰めるのが鮫の矜持であり相手に対する礼儀です。

話しづらいなら歌でもサービスしましょうか?
心を落ち着けてくださいな。
もえる もえるよ なにもかも ♪
おそらがもえれば こころももえる ♪
おうちがもえれば いのちももえる♪
(レモラの歌に合わせてくるくると踊る)
本当に楽しい夜だわぁ。
話に聞くキャンプファイヤーもこんな風に楽しいのかしら?
今度はお友達も呼びましょう。
みんなで歌を歌って、マシュマロを焼いて……。

あなたも来てくれるわよね?
(激しく首を横に振る頭陀袋。それを見て満足気に頷く)
おやおや振られてしまいましたか。
でも、それが正解かもしれませんね。
私、完璧ですけど降霊術も死霊術も学んだことがなくて……

お恥ずかしいですわ全く。
ですがお片付けは得意ですのご安心くださいませ。
誰にだって出来ないことの一つや二つはあるもの。
だからこそ人は支え合って生きているのよ。
支えてもらってばかりでは帳尻が合わないわ……ねぇ、聞いてる?

そうだわ。ネクロマンサー志望のお友達にお願いしてみようかしら?
怖がらなくても大丈夫よ。修行中だけれど、きっと上手くいくと思うの。
それに一度死んでしまえば俗世の欲とは無縁になれるわよ。
うふふ、支え合う……素敵な調べですね。
そうそう、借りてばかりでは帳尻も合わぬでしょう。
ですのでこれは「お返し」なのですよ?

ああ、素敵なアイディアで。それにそろそろ世間は収穫祭。
話足りぬことはままあれど、
そろそろ私達もパンプキンパイを焼きあげましょうか。

かぼちゃをたたいて つぶして つぶし♪
ごうごうもえる オーブンへ ♪
こんがりやけたら できあがり ♪
そうねぇ。そろそろ茶番にも飽きてきたことだし……。

(再びくるくる踊って男の元へ。しゃがみ込んで、頭陀袋を剥ぎ取る)

あなた、心のどこかで私たちが本気ではないことを期待しているんじゃないかしら?
(伽藍堂の眼窩を大きく見開き、相手の眼を覗き込む)

だとしたらご愁傷様だわ。

(意味不明な叫びをあげる男を軽々と持ち上げると、ゆっくりと歩き出す。未だ勢いの衰えない炎に向かって一歩ずつ——)
あらあらまあまあ。
まだちゃあんと歌えるじゃないですか。
じゃあ、後は貴方の独唱でお願いしますね。

(手を振って見送りつつ、完璧な笑みを炎に照らし出して)
いえいえ、聞こえの良い言葉はもうお腹いっぱいでして。
もう少し空腹のうちであればこの耳も傾いたでしょうが……
故に、喉を枯らして歌いなさい。

おまえの言葉に真実が含まれるなら、
神さまとやらが救ってくださるやもしれません。
その後の男の行く末を知る者は少ない。
収穫祭の折、男に似た屍人姿の人物を見たとの噂もあるが、はたしてそれは魔女の魔法によるものか、それとも……。
神さまによるものなのだとしたら、やはり祈るべき先を間違えたのだろう。
言い直せば、頼る相手を選定する時点から。

……
昏い水面に映る三日月のように、
口の端を吊り上げて、語り部は笑った。

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