PandoraPartyProject

ギルドスレッド

商人ギルド・サヨナキドリ

浄罪の谷

底の見えぬ深い谷

罪人をここに落としていたのだとか、育てきれぬ赤子を口減らしに放り込んだとか、暗い逸話がそこに眠っている。

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「ヨタカ、ヨタカ、ヨタカ、ヨタカ、ヨタカ……」

(無かったことに)

(触手があなたを地面に引き倒そうと)
っぐ…は…!!?(伸びる触手に引き倒され、息が詰まりそうになり。)
(好機だと思ったか、ひたひたひたひた、気配が距離を詰めてくる。じぃ……とあなたを見つめながら)
見るな…!!!俺を、俺を見ないで、くれ…!!みないで、みないで…!!!(止めてくれと顔を隠そうとするのにそれすら許されない。)
「ヨタカ、ヨタカ」

(女性だったものがゆっくり近付いてくる)

(気配が近付いてきて、あなたの腿に、腕に、腹に、首に、頬に、右目に触れる。人の手の感触がする)
気持ち、悪い…触るっ、な…。(触らせまいと藻掻く。止めろと叫ぶ。本性が。本当の俺が暴かれていくようで恐い。)
(触れる手は、暴く眼は、武器商人と呼ばれるソレより遥かに冷たい)

(女性だったものがあなたの目の前にまでくると、残りの触手を伸ばしてきた)
(母に似ていた何かが伸ばしてくる触手に、首を横に振って。あぁ、手を離すなと言われていたのに、あのヒトの手を、自身の唯一の灯火であろうヒトの手を離してしまった。惨め過ぎる自身の過ち。それでもあの手に触れられ、あの瞳に見られる方が、その方が良い。蜘蛛の巣に掛かった蝶のように藻掻き、声を振り絞る。)ひっ、嫌だ、いや、だ…!!!しょ、にん…!!
(ぞろり、と闇が蠢いて)

ーー悪いね、その小鳥は我(アタシ)の所有物(モノ)だ。モノガタリも紡げぬ亡霊モドキにはやれんなァ。



(ごとん)


(ゴロゴロゴロ……)


(小鳥の右腕を掴んでいた触手が緩む。倒れる様な重い音と共に小鳥の傍へ転がって来たのは女性だったものの真後ろにあった頭部だ)

(女性だったものが倒れると、気配が蜘蛛の子を散らした様に去っていく)
(凄い音と霧散していく気配に、息を落ち着けながらソロりと目を開ける。何が、あった…?助かった…?)
……全く。随分遠い所まで引き離されたものだ。

(左手に身の丈ほどもある大鎌を携えたソレが女性だったものの背後に立っていた。服には点々と赤い血が垂れては黒く染まり塵となって空気へと溶ける。右手をだらりと降ろし、首から頰にかけて黒い痣の様なナニカに覆われ、微かに前髪の隙間から見えた右目が閉じられそこから血を流している。声はいつもの通りなのに、なんとも酷い有り様だ)
っ……商人……!?(商人の状況を見て、血の気が引いて行く。俺がこのヒトの手を離したから。余計なことをしたから怪我を追わせてしまった。解放され、まだ少し違和感のある身体を引き摺るように商人へと近寄って。)
おや、小鳥。この世に焼き付く残留思念が如き、亡者共との逢瀬は楽しかったかぃ?(自分の怪我の具合など何一つ気になっていないかの様な顔でクスクス笑う)
楽しくない…楽しくない……!!!(幼子の様に謝りながら首を横に振って商人の元へ。何度も何度も謝る。俺のせいで、商人が怪我をした。此処へ着いてくると言っておきながら足でまといなことしかしていない自身に憎悪が募る。)
おや、まァ。

(小鳥の錯乱ぶりに声を漏らすと、大鎌を影の中へ沈め、空けた左手で小鳥の髪を撫でる)

悪かったね。此処は空間が曲がっているから、なるべくああいうのが少ない場所を視て通っていたのだが……そのせいでちょっと注意を向けるのが遅れてしまったね。本末転倒だったか。

(そう言って小鳥の脇をすり抜け、だらりと下げた右腕をぎこちなく動かしながら自分が刎ねて転がした首を両手で拾いあげる)
ちが、う…俺が…商人の手を離して…しまったから…。(首を横に振って。涙を流して何度も謝って。)

っ……その首……。(痛々しげな腕に息が詰まりかけるが更に転げた首に眉をひそめて。)
(袖から見えた右腕は握り潰さんばかりに女の手の痕が残って、その周りが黒ずんでいる)

あァ、どれでもよかったけど、せっかく今目の前にいるんだしね。

(穏やかな顔付きの女の首を持って正面へ掲げ上げると、その唇に口付け)
っ……何、して…!?(痛々しい痕にそっとヒールを施そうかと近寄ろうとしたが、目の前の状況に目を白黒させる。)
(時間にして5秒以上はある長い口付け。さながら、ヨカナーンの首に口付けるサロメの様に。残酷だがどことなく官能的な間の後に口を離すと、べ、と舌を出して銀貨の様なものを取り出す)

ンっ……持ってる、持ってる。しかも貯め込んでいるな。ヒヒ……。

(そう笑って銀貨を握り、また首へ口付け)
っえ、ええと……その銀貨は…何……?(しばらく見とれていたがなにやら見てはいけない雰囲気に少し恥じらって目を逸らし。)
(数える事5回、その口付けを繰り返して。そうして首を手放す)

ン?聴いたこと無い?葬儀の時に、死人の口にコインを詰める風習。そのコイン。

(間違い無く5枚ある事を確かめると、それをひとまとめに小袋へ入れて影の中へしまった)
あぁ…まぁ、聞いた事は…。(だからってその取り出し方はどうかと、とゴニョゴニョ言う。)

じゃ、ない…商人…!!傷口を治療させて…欲しい…。
手で受け取ると渡さなければならないからね。治療?……あァ。いいよ、放っておけばそのうち治るし。無駄に魔力を使う事もあるまい。
そ、それもそうだが……。
嫌だ…。(首を横に振って此度は強く拒否する。)
おや。なんでまた。(ぽたりぽたりと流れる血を適当に拭って。それも時間が経つと塵となって消える)
傷の治りが早いかも…しれない…自分の傷に…頓着等…無いかもしれない……此度のだけ…此度の傷だけでいい……治療させて欲しい……。(お願いだから、と最後は懇願に近い。紅と黄の瞳で商人に縋るように見つめて。)
(片目でそれを見返して) ……いいよ、“それをキミが望むなら”。
無理を聞いてくれて…ありがとう…。(そっと負傷している右腕に触れ、残った魔力でヒールを施す。)
(大人しく治療を受けている。縋るような、欲する様な女の手の痕や潰された右目は比較的治りが速く、黒い痣の様な怪我は少し治りが遅い)
この痣は……治らない……?(いくらヒールを施しても消えない痣に不安が募る。)
ンー、この辺は呪いというか未練の類かなァ。魔力があれば、手っ取り早く喰えると思うけど。(自分の腕や首元を触って)
キミ固有の魔力でも……うン、足りるね。
ふむ。

(いつも通り近付こうとして、ちょっと止まって足で数度地面を叩く。キィン、と硬質な音がして周囲から気配が一気に遠のいた。空間を“区切った”らしい)

(小鳥に近付いて抱きしめると休憩がてら地面へ転がる。岩肌の感触がなく、気を抜くと自分が寝ているのか起きているのかもわからなくなりそうだ)

食べていいと言われるとなんだかお腹が空くような、それとはまた違うような気分になるね。口移しの譲渡だと接触だけよりは手っ取り早いけど、する?(くすくす。からかうような口振りで)
ん……。(急に遠のいて行く気配に周囲を見渡して。)保護結界…のようなもの…?っ、ゎ……。(抱き締められながら共に転がり。)何だか…此処は…また違った感覚…のする…場所だ……。

んんん……いや、それは…いい…。(さっき母の顔をした亡者とキスをしてるのを思い出して。目を逸らしながら商人の唇に手を当てた。)
此処は我(アタシ)の領域では無いから、一時的なものだけどね。

ちぇー、残念。(さほど残念でもなさそうに、その手に口付けをする。前髪の奥から濃い紫水晶の様な瞳が覗き込んで) それじゃ、仕方ない。ゆっくりいただくとしよう。

(ぞろり、ぞろり。主と眷属の繋がりを介して、ソレが腹の奥から心臓、魂まで撫でるように小鳥の存在へと這入り込む。そうして小鳥が特有で持つ魔力と、先ほどまで小鳥が感じていた不安と恐怖、自身への嫌悪や憎悪。それらを暴き出して喰い荒らし出した)
暫くは…大丈夫…という感じ…かな…。

んんん…からかわないで欲しい…。(手に口付けられるのさえ顔を赤くして。アメジストの瞳が覗き込んでも覗き返せなかった。)

ん、んん゛……。(ぎゅっと目を瞑って、いつもの身体中の魔力や感情を喰われる感覚に口を押えて耐える。先程のマーキングの時よりも鋭さを感じて唇を噛む。)
からかっちゃいないよーぉ。接触だけより速くて、血を貰うより負担が少ないからね。

(負の感情の在り処が根深い分、ソレも根深いところへ入り込んで喰うしかない)

……苦しい?(耳元で甘やかに囁き)
そ、そうなのかも……しれないが……。(最後の方は聞き取れないほどの声でモゴモゴ言い。)


くる、しい……じゃないけど、何か…変、だけ…。(囁く声に少しだけ肩を震わせて。五感の全てが鋭くなったような、そんな感覚に肌が粟立つ。)
ン?なぁに?(首を緩く傾げて聞き返すし、苦しくないという返事にはそう、と頷いてまた不安や哀しみを喰い始める。最早、魔力を喰うよりそちらがメインになっていた)
んん……しょう、にん……俺の反応…っ、楽しんでる、だろ……。(声を抑えながら睨め付け。当然恐さ等微塵も感じない。)
楽しんでるって言ったら、抵抗する……?(くすくすくす……と耳元で笑って)
っ、抵抗なんて……させてくれない…だろう……?(その声に、視線に、指先に、瞳に。蜘蛛の糸のように絡めて飛べないようにしたのは誰だとブツブツ言い。)
キミは我(アタシ)の所有物だからね、当然だろう?(ねぇ?と首を傾げて同意を求める様に紫の瞳が覗きこむ)

(首から頬にかけて広がる痣がゆっくり消えていき)
んんんん……。(これ以上答えるともっと遊ばれそうで、口を噤む。)


痣……消えてきた…?(そっと頬に触れて。ホッとした表情を見せる。)
(ソレが不満気に目を細めた)

おや、まァ。あの亡者モドキに拐かされた事といい、もっともっと深く理解させないと駄目?

(触れて来た手を捕まえてその繊細な指先に軽く噛み付く。ソレにとっては自身の見てくれが呪いに侵されているより遥かに重要なことらしい)
ん、ぃっ…!?(指先に噛み付かれ、ピリッとした痛みに目を瞑って。)理解は……してる、つもり…だが…。
そぉ?(ちゅ、と指先を花蜜の様に吸って。喰った魔力の代わりにソレの保有している魔力を注いでやると、“堕落しそうな味”が小鳥の身体に広がるだろう)
はぅ、っ……!(体を走るのは甘い官能にも似た響きで。一気に身体が虚脱感に見舞われる。)

しょお…にん、これ以上は…。(自分で喰ってくれと言ったがこれ以上されるとまた足でまといになってしまう…と、少し泣きそうな声で言い。)

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