店主「…………………………」

カウンターの向こう側に無口な中年男が立っている。
「いらっしゃいませ」の一言も無く、ただ黙々とグラスを磨いている。明らかに客商売向けの人間ではない。

だが、誰もこの男を咎めはしない。
何を見聞きしてもこの男は絶対に他言しない。余計な詮索も一切無い。
ただ、黙ってカウンターに立ち、言われるがままに酒を提供する。

この男の前では何を話しても問題ないだろう。

（雑談スレッドです。）

（マスクが外れたら食べに来てみようと、ガスマスクの下で好奇心を覗かせながらもキドーの言葉に再び首を傾げる）
不思議ダネ？スープとかナラ美味しく作レルのかな。
……ア、そっか。コッチではお酒飲めナイんだっけ。
（思い出したような声音が漏れた）
（ご馳走のように抱えていたジュースを、些かしょぼくれた手付きでテーブルに置く）

（入ってきたリョーコをちらりと見てから、報告書にゆっくりと目を通す）
（指で辿りながら読み終えたそれを置き、苦しげな声を出していたプラックを横目で窺った）
……ドイツもこいつも、苦しソウなのにちゃんとタベるんだね。

キドーは常連サンじゃなく、居候？
……マア、柄良さそうナノは少ないネ。
（ぐるりと周囲を確認し、納得したような声が出た）