店主「…………………………」

カウンターの向こう側に無口な中年男が立っている。
「いらっしゃいませ」の一言も無く、ただ黙々とグラスを磨いている。明らかに客商売向けの人間ではない。

だが、誰もこの男を咎めはしない。
何を見聞きしてもこの男は絶対に他言しない。余計な詮索も一切無い。
ただ、黙ってカウンターに立ち、言われるがままに酒を提供する。

この男の前では何を話しても問題ないだろう。

（雑談スレッドです。）

まあ、まあ…せんねん。千年ですって。とても長生きでいらっしゃるのね。
わたしもたくさん生きられるように頑張りますわ。

みながみな。それぞれの見方がありますし、みんな正しくて、それでいい。隣人ですら価値観の違いで争いあう世の中ですもの。言葉にするのも、理解しあうのも難しいありさま。
世界が違えば猶更ですわ。

あ、マスターさん、マスターさん。甘い奴が欲しいのです。
きっと、お酒はどこでも受け入れられるよいものなのですわ。