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シキアの樹

Aug.昼

陽の照りしきる夏の日。
青く澄みわたる空に、恵みの雲は見えず。
時折に吹き抜ける風だけが、僅かな涼を与えてくれる。



穏やかに揺れるシキアは、今日も憩い人を歓迎していた。

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(樹の反対側から顔を出したのは、ふたり)
(一人は猛禽を思わせる鋭い眼光に広い背を覆う様に折り畳まれた翼を持つ大柄な男)
(”ヒト”以外を未だ見慣れぬ影は、思わず其の翼をつぶさに観察しようとして、視線を逸らした。余り不躾に眺めては、失礼だと思った故に)

あの、えと……。

(そっけない男の了承に謝辞を述べて良いものだろうかと視線を泳がせていたら、文字通り”雲が飛んできた”ものだから。思わずぽかんと、唯目の前に広がる光景を見つめた)

(其の人物は、目前の青年よりも、もっと。”傍のもの”に近しい気配を感じさせた。藤に彩られた髪、淡く色付く曇り空の双眸。中性的と云うよりも、性の概念を感じさせない、不思議な風貌――恐らくは、”外のもの”なのだろう)

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