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シキアの樹

落葉の夕暮れ、笑ふ影法師

或る秋の日。陽の落ち始めた黄昏の頃。
ゆるりと沈んでいく陽が、シキアの影を長く伸ばして。
風を受ける枝葉の影が、まるで笑うかのように揺れていた。

――かぁかぁ、親烏が鳴いている。そろそろお家に帰ろうね。
――かぁかぁ、かわいい我が子と連れ立って。枝葉を揺らし飛び立った。


一方で、親から逸れた土の雛。
日中と変わらず其処に在り、水晶の目玉を緩慢に動かして。
……帰る場所を、探していた。





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それとなく、のんびりと。

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そう。八千夜の、世界にも。
(そうか、と呟き交じりに復唱した。
 同じもの、似たようなものが。別の世界にそれぞれ存在して、親しまれている。
 そういった異界の交わりは、とても不思議なものに感じられた。
 ――狭い部屋の中の世界しか知らなかった己には、殊更に)

オレのは、今まで動きなれてなかったっていうのも、あって。
でも……レベルダウン。確かに、影響してるの、かも。
……貴方が透けて見える、のは。弱ってしまったのと、関係があるのだろうか。
(軽い調子で零す貴方の言葉を受けて、水晶に心配の色が翳る。
 陽に当たって赤く染まる、透き通った白いカンバセ。
 噂に聞くユウレイのようだ、と。子どもたちに聞いた話が、僅かに思考を過った)

……じゃあ。
八千夜の居た故郷から、見える景色。
どんな風だったの、かなって。
(己の世界では、ついぞ”見ること”しか叶わなかった。
 だからこそ、一番に気になるのだ。世界から見える、景色が)

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