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シキアの樹

落葉の夕暮れ、笑ふ影法師

或る秋の日。陽の落ち始めた黄昏の頃。
ゆるりと沈んでいく陽が、シキアの影を長く伸ばして。
風を受ける枝葉の影が、まるで笑うかのように揺れていた。

――かぁかぁ、親烏が鳴いている。そろそろお家に帰ろうね。
――かぁかぁ、かわいい我が子と連れ立って。枝葉を揺らし飛び立った。


一方で、親から逸れた土の雛。
日中と変わらず其処に在り、水晶の目玉を緩慢に動かして。
……帰る場所を、探していた。





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それとなく、のんびりと。

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……貴方の、世界。
この唄は、貴方の故郷のモノ?
(ジンジャ、ケイダイ。
 世界の理のおかげで、響きとしてはすんなりと自分の中に入ってくるけれど。
 あまり物を知らない己には、ピンとこない言葉だった。
 ……男性にしては高く、女性にしては低く。中性的な声音が、耳に心地良い)

……うん。すごく、助かってる。
ここに来て”疲れる”ことが、多くなったから。
(雲と共に、近くへ降りてきた貴方から視線を外さぬまま。
 座り込んだ足を三角にするように立てて、膝の上に顎を乗せてみる。
 ”住所不定”なんて揶揄するようにからりと笑う貴方につられて、微笑うように目を細めた)

そっか。一緒、なんだ。
……ねぇ。良かったら貴方の故郷のお話しとか。聞いても、良いのかな。
(休憩するついでにでも、と言葉を添えて。すぐ傍に佇む貴方に向けて呟く。
 ……自分の知らない世界の話を。聞いてみたいと、思った)

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