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シキアの樹

落葉の夕暮れ、笑ふ影法師

或る秋の日。陽の落ち始めた黄昏の頃。
ゆるりと沈んでいく陽が、シキアの影を長く伸ばして。
風を受ける枝葉の影が、まるで笑うかのように揺れていた。

――かぁかぁ、親烏が鳴いている。そろそろお家に帰ろうね。
――かぁかぁ、かわいい我が子と連れ立って。枝葉を揺らし飛び立った。


一方で、親から逸れた土の雛。
日中と変わらず其処に在り、水晶の目玉を緩慢に動かして。
……帰る場所を、探していた。





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それとなく、のんびりと。

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俺も知ってるよ、その唄。
夕焼け小焼けで日が暮れて、って奴でしょ。

(懐かしそうに瞳を細めて笑う。
 短い曲だから、何度も聴いている内に自然と覚えてしまった。
 風が吹いて、シキアの葉がさわりと揺れる。僅かだけ透けた片手で風に遊ばれる髪を抑えながら一度夕空を見やり、相手へと視線を戻して小首を傾げ)
 
こんな時間に人が居るなんて珍しい。どしたの。
お前も、帰る家がないの?

(相手の種族を聞いたことはなかったけれど、相手も自分と同じで旅人という奴だったりするのだろうと予想を付けた)

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