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シキアの樹

落葉の夕暮れ、笑ふ影法師

或る秋の日。陽の落ち始めた黄昏の頃。
ゆるりと沈んでいく陽が、シキアの影を長く伸ばして。
風を受ける枝葉の影が、まるで笑うかのように揺れていた。

――かぁかぁ、親烏が鳴いている。そろそろお家に帰ろうね。
――かぁかぁ、かわいい我が子と連れ立って。枝葉を揺らし飛び立った。


一方で、親から逸れた土の雛。
日中と変わらず其処に在り、水晶の目玉を緩慢に動かして。
……帰る場所を、探していた。





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それとなく、のんびりと。

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(ひとしきり口遊んでは、不可思議そうに首を傾げる。
 これで合っていただろうか? 何せ、聞いたのはあの子が唄っていた一度きりだから。
 八日ほど前の記憶を巡らせながら、もう一度口遊ぶ。おててつないで、みなかえ、)

 ――あれ。

(ふと陰る視界。陽の赤を遮ったものは何だろうと顔を上げる)
(上げた目線の先。ふわふわと浮く雲と、その上に見える人影。
 きょろりと辺りを見回していたその顔は、最近よく見るようになったヒトのものだった)
(日中ならともあれ、この時間に誰か遭うのは珍しい。ぱちくり、水晶の瞳が瞬いた)

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