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造花の館

少憩

外洋豊穣の、上等なホテルに、予約が一件あった。

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(踏込。室内へと上がる時、靴を脱ぐ。
 鬼楽でのやり方にも慣れていたため、あまり違和感は覚えなかった。

 客室係に導かれ前室。
 これはやたら荷物を預かりたがる。仕事なのだろう。
 だが、見ず知らずの他人に荷物を預ける気はないので断った。
 当然、荷物は自分ひとりで持ち運べる最低限の物しかない。

 主室。
 イグサで編まれた床材の特有の香り、土の壁と、木と…
 ……この様式の部屋が上質であるのか、という見識はまだ浅い。おそらく上質なのだろう。
 これを今後の判断基準に加えることとする。

 床の間の異国情緒に溢れる調度品と、自然から切り取ったような構築物めいた家具は、整頓や洗練にはまた違う趣がある。そのように見える。

 庭を臨む広縁には、小さなテーブルと、それを挟むように二脚のチェアがある。
 使う予定は今のところなさそうだ。)
いらない。
(客室係に、明日の食事について尋ねられたのでそう答える。)

明日には出る。
(1日遅れてきたとはいえ、予約は三日。
 一泊二日、楽しもうと思えば楽しめる。
 だが、今のところここに長居する理由もない。)

(困惑を含んだ客室係に、「金は三日分払う」と伝えて、下がらせる。)
(沈黙。)

(構造のせいでもあるが、ガラスがないせいもあるだろうか。
 庭先の鹿威しが震わせる梢の、その小さな囀りまでが耳に届く。
 きっとこれを風情とでもいうのだろう。自分には静かすぎる。)

(まずは部屋の中を一通り見て回る。
 勉強もあるが、周辺の把握は大事だ。)
 
   *   *   *

(鏡の無機質さは、この部屋の気風には合わない。
 脱衣所の隅に薄く立ち尽くす、姿見と対峙し、そう思う。
 採光用の窓から柔らかに注ぐ光を、事務的に、無感情に、反射した奥に立つ己。
 鏡に収めるべき姿でありながら、風景からは浮いてしまうその光景は、このアンバランスさを含めて芸術とすら言える。)

(腕を広げて、初めて着る室内用の浴衣の具合を確かめる。
 着心地はともかく、10月の肌寒さが沁みつくのを感じた。)
綺麗だな。
(事実ではなく、自身の価値を再確認するために、あえて呟く。
 賛同する者はいない。必要もしていない。自分自身のための行動。)

(……このまま自己陶酔の為に時間を使ってもいいが、そういう気分でもない。
 聞くところによると近辺は観光地となっているようだ。
 陽が傾くまで散策に時間を費やしてもいいだろう。)

(浴衣の上からコートを1枚重ねて、香水をかけ直す。
 それから…用心の為に細剣と指輪を携帯しておくべきだろう。)


それじゃあ、行ってくる。一通り見たら戻る。
(踏み込みで、振り返り。あえて声を大きくして言う。

 誰かに向けている言葉ではない。
 言葉をかける相手などいない。
 貴重品は携帯しているが、防犯のために行うポーズに過ぎない。
 一人旅は用心に越したことはない。)
 
   *   *   *

二人分はいらない。
(夕餉が近くなった頃、客室係の言葉を突き放す。)

連れはこない。
(なにか言いたげな客室係を、『金は払う』と言って黙らせた。
 ここの客室係はいちいち余計なことを言いたがるきらいがあるらしい。)

(ほどなくしてやってきた料理は…良質なものなのだろう。
 自分の慣れ親しんだ『豪勢』とはかけ離れてはいるが、良いものであることはわかる。
 素朴ではあるが丁寧な味付けをされた料理は喉を通りやすい。
 それに皿の一つ一つが小振りで食べやすく、種類が多くて飽きない。
 特に酒もそれひとつでコースであるかと思うほど数が揃えられており、どれも質が良かった。
 勉強にはなる。)



(一方でこの客室係は少し気に入らない。
 皿が運び込まれるたびに、よく喋る。喋りすぎる。
 先も『赤い米はめでたい折に食べるもの』であることを殊更に主張しているようであった。

 なにか引っかかるような気がした。大したことでもないような気がした。
 酒に身を浸しながら、気が向いたらそれについて考えることにしよう。)
 
   *   *   *

(ここは静かすぎる。
 静かすぎる上に、自分の塒でもない。
 気を抜くほど安心できず、警戒するほどのなにかもない場所は、余計なことを考えさせる。
 そういう時は、読書に耽るか、それとも酒で思考を宥めるのがいいと決まっている。)

(すでに今夜分の酒を用意させたこの部屋に、これ以上誰かが来ることもないだろう。
 ひとりはいい。何かに気兼ねをする必要はない。
 ひとりになるにはここは些か静かが過ぎるが。)

(広縁のチェアに身を預けながら、枯山水の行き先を視線で辿り、無為な思想に落ちかけるたびに、鹿威しに耳を叩かれる。その繰り返しは微睡む様に似ている。
 時間を浪費していると思う。
 それに同意するものは、片割れのチェアにうなだれる酒瓶共しかいない。)
(本当に時間の無駄だ。
 ある種の感傷だと思う。

 「思う」などと曖昧な自己分析しかできない時点でどうかしている。)
(酒杯を干しながら、思考を続ける。
 思考ができれば何でもいい。

 そもそもなぜ自分がここにいるか。
 「仕事のついで」といえばそうだ。それ以上の理由はない。
 なぜと問わねばならないのは、なぜアレがこんな場所をわざわざ取ったかだ。
 旅行を計画していたのだろう。それはそうである。
 しかも2人分であった。こっちの予定も確認しないとは身勝手が極まる。
 なにがアレにそうさせたのか、考えてみればわからなかった。
 単なる思い付きか何かかもしれないが、それにしては随分と前から予約を取っているようだった。)


(………アレについて考えさせられるのも随分と久しい。
 後始末に追われる間は、何度か考えさせられる場面があったが……
 やはり時間というものは全てを褪せさせるのだろう。
 そういうことについて考えることももう随分とない。

 そろそろ声を忘れた頃だろうか。
 記憶を掘り返してみたが、顔の記憶が曖昧な気がした。
 それなりにいい素材であったことは確かだった。それは間違いない。

 その事実に対して…『まあそうだろう』と考えた。
 一個の生物である以上そんなものだろうし、それを淡々と受け止められる己は契約魔術師として正しいのだと、その現実を受け止めた。)
(薄情だと、そう思う。
 肴にもならない曖昧な思考を酒で流し込む。)
(忘れることによって困ることが、特に思い浮かばなかった。焦燥もなかった。
 思い返すほどアレは手がかかったばかりで、それに見合う見返りは得られなかった気もする。
 忌憚のない表現をするなら、時間を浪費する結果に終わった。

 仕事としては失敗だった。それに尽きる。

 であるからこそ…アレの置き土産であるこの一室の意味は知る意味があった。
 ひとかけらでも損失を取り戻すために。
 部屋や近辺を一通り見て回ったが、特別なものは何もなかった。
 経験としてはいいものを得られたが「それだけだ」とも言える。)


(この場にいない、顔も声も存在しない人物の。
 行動、所作、鬱陶しさをひとつひとつ思い返して…
 現実として存在するこの場所と照らし合わせる。)
(そういえば『めでたい折に食う飯』と言っていたか?
 なにか関係があったか…………)



























(気付くのに時間がかかった)



(驚愕に瞳を見開いてしまった)













(事実に気付いて尚、心中が凪のままである自分に。
 その内面の動きに、動揺してしまった、)

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