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造花の館

執務室

一般的練達人を迎える応接室とは違い、セレマの執務室は半分私室と化している。
幻想風の調度品ばかりかと思えば、執務机の中央にはコンピュータのモニターが鎮座し、もっといえばエアコンまでついている。
アンティークに紛れて文明の利器がそこかしこにある。
再現性の民に言わせれば「古典趣味的」な部屋だろう。

セレマは訳知りの個人的客人はこちらに通すらしい。
いつ来ても部屋いっぱいに焚かれた香(のような独特の香り)があなたを出迎えてくれるだろう。
然るべき客人であるならば。


●やってはいけないこと
・知らない声が聞こえても返事をしてはならない
・書類や機械は勝手に触らない
・執務机の載せた天秤はアンティークではないので触れてはいけない

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(屋敷の後片付けも半分ほどまで済んだ2月のクソみてえなある日のことだ。)

(ボクの美しい両手は薄力粉と片栗粉に白く汚れ、爪の間にはそれら混合物によって形成された黄色い塊が挟まっている。むせ返るようなクソ甘い香りに満たされた、石鹸臭いババアの家を思わせる中、ボクは肩で息をしながら作業に打ち込んでいた。)


(もうかれこれ4時間ほどビスケットを作り続けている。)

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