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造花の館

閉架式書庫

セレマの図書室は造花の館のなかでも大きな割合を占めている。
入ってすぐ目につくのは、一面に並んだ自動スタックランナーの列だ。
練達の技術によって自動化された図書室は、常に書物にとって最適な温度と湿度を保ち続けており、微かに香るミントの香りで満たされている。

セレマ自身が使うためのテーブルもソファもあるので、ここで快適に本を読むこともできるだろう。


●主要な蔵書
・混沌各地で集めた物語
・異世界の戯曲や脚本多数
・歴史書ならびに民俗学書
・魔術関連の一般的学術書
・詩集、画集、楽譜などの芸能に関する本

●やってはいけないこと
・天秤を載せた丸テーブル席に座ってはならない
・意識がハッキリしないならここにいてはならない
・奥にある開かずの扉の先にあるものを気にしてはならない
・知らない声が聞こえても返事をしてはならない

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(書庫を出る直前…… 件の人皮装丁の本に一瞥を向ける。)

(なるほど。想定以上の価値があったことを認めざるを得ない。
 いうなればあれは異界の怪物自身の手で作られた、怪物の革の本だ。
 ギフトか、特性か、ある種の特異性を持ち込んだままこの世界にいるのだとしたら。
 あるいはここにいる美少女と同等かそれ以上の力をもつのだとしたら。
 ……直ぐにでも『部屋』へと移すべきだろう。)

(だが、今は。
 変に気取られぬよう、そして屋敷内の余計な部屋に立ち寄られる前に動くべきだ。)


(数拍遅れて、書庫の扉が閉じられた。)

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