殺しは慣れたものにござる。
この刀、楠切村正は、どこまで行こうとも殺しの得物ゆえ、それらを差す拙者とて、また。
だから……別段気負うところは無う候。ホントござるヨ？

しかしまあ、仕事にオーダーの多いのは辟易ござるな。
何事もシンプルが一番よく、枝葉増えるごとに厄介になり申す。
それでもやり遂げるのが、プロござるけどね。

対象も、もっと早くに手を打たれれば、むざむざ無残に死ぬことも無かったろうに。

――さて。拙者は『ジャミング』による保険的な情報閉鎖と、【不殺】を持つ『観音打』による拷問を受け持ち仕る。
筋書きとしては、『財産の隠し場所を明かさない対象に暴力で口を割らせようとする』といったところか。
指の一、二本。耳の片方。生皮。まだ取り返しの付く場所を、重点的に。
エスプリ『魂喰らい』の効果を持つ通常攻撃と『潜り夜鷹』は、【必殺】っちゃうので封印ござる。

なに、こう言ったウェットワークは、拙者、処女ではのうござるよ。
懐かしいと思うくらい、離れてはおり申すけどね。

（もし……あの『暮六晩鐘』に居たままであれば。
　きっとわたしは、残り２百時間の拷問学講義も、受けていたことでしょうね）

さて、仕事を終えたならば、疾く疾くこの場を離れましょう。
ウィルド殿の馬車に乗って……できれば行き先は、広い風呂か泉のあるところがようござるなァ。