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雨が止んで月が現れるまで
そう……だったんだ。大事なもの……渡せたのは、本当に……良かった。
……じゃあ。もしまた、機会があった時……には。おれの方から、ご馳走……するね。
(ありがと、と小さく微笑んでみせた後、メニューに視線を向ける。暫し考え込んでから、果物が乗せられたケーキを選ぼうと)
……じゃあ。もしまた、機会があった時……には。おれの方から、ご馳走……するね。
(ありがと、と小さく微笑んでみせた後、メニューに視線を向ける。暫し考え込んでから、果物が乗せられたケーキを選ぼうと)
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このくらいの霧雨じゃ、傘を差す程じゃない。
髪は少し濡れるけど、このくらいならすぐ乾くだろう。だけど、季節はすっかり秋。少し肌寒くなってきたからあまり濡れるのはよくない。風邪をひくかもしれないから。
「あ、あの……これ」
チックが少し凍えた手で一枚のICカードを拾い上げる。
「それ、俺の学生証!」
チックの声に振り向いた雨月は、彼の手に掴まれたカードを見て思わず声を上げる。
「落とし、もの……どうぞ。……ん?雨月?」
「あ、チックさんじゃないですか!どうも、ご無沙汰しております。ありがとうございます。これ、大切なものなんですよ。うっかり落としちゃって。チックさんに拾っていただいて助かりました」
雨月は面映ゆい表情でチックからカードを受け取り、それを鞄にしまうと、是非ともお礼をさせてほしいと、近くの喫茶店に誘うのであった。