冒険
闘技場設定は『練習場』から!
夫がドスコイマンモスアマゾネスに誘拐されました。
あなた宛てに一通の手紙が届いた。
「夫がドスコイマンモスアマゾネスに誘拐されました。
いきなりのお手紙、失礼いたします。
名雨まり美と申します。28歳のドスコイナウマンゾウです。あなたに助けていただきたくて、連絡してみました。
少し、語らせてください。
昨年の夏、夫と共に鉄帝国へドスコイマンモスの生態調査に行った際、夫が現地のドスコイマンモスアマゾネスに誘拐されました。
私たちはドスコイマンモスのルーツの解明のために、彼らの目撃情報の多い鉄帝国へ出向いたのです。
到着して何日間か、私たちは鉄帝北部、ドスコイ地区に住まうゾウに話を聞いて回っておりました。しかしそこに突如として現れたドスコイマンモスアマゾネスの群れに囲まれ、私は彼女たちのその巨大な牙を突きつけられたのです。
私が恐怖で怯えていると、意を決したように夫が鼻を振り上げました。そして、「まり江、逃げてくれ! お前は違うかもしれないが、少なくとも僕はお前をーー」と叫びながら、ドスコイマンモスアマゾネスたちを引き付けるように、山奥へと駆け出して行ったのです。それが最後に見た、夫の姿でした。
実は、もともと私たちは親同士が決め結婚したのであり、好いて一緒になった訳ではないのです。
ドスコイナウマンゾウの雑種化が進んでいることをご存知でしょうか。ドスコイナウマンゾウはドスコイマンモスよりも種としての出現が早く、長らく繁栄してきました。
しかしある時から、人なるものが力をつけ始め、屠られ食肉にされ、更に私たちよりも身体が大きく力の強いドスコイマンモスまで現れたーー。しかもこのマンモスは、ドスコイナウマンゾウと交雑が可能でした。
もうおわかりでしょうか。草木の下生えの少ない鉄帝において、生存競争という種の戦に敗れた私たちの祖先は、勝者であるドスコイマンモスたちに文化を奪われ、交雑し、マンモスとして振る舞わされ姿を消していったのです。
私と夫は、ドスコイナウマンゾウの純血です。両家はこの種の血を絶やさないために努力し、そして私たち夫婦が生まれたのです。夫は私に対して義務感しか抱いていないものだとーー。
話が逸れましたね。どうでしょうか。お願いです。夫を、夫の名雨マサシを、どうか探していただけませんか。私はあの時、足を怪我して自由に動くことはできなくなってしまったのです。」
目が滑る。あまりよく理解はできなかったが、同封された鉄帝北部らしきマップには、「夫の消えた地点」の文字と添うように、矢印がとある里まで伸び、そこを指していた。
鉄帝ゾウ、ドスコイゼシュテルエレファントの里「ドスカラー」。おっと、なんだか嫌な予感がしてきたぞ。
シナリオ:ハイエナ
参加者一覧 | |
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イグナート・エゴロヴィチ・レスキン(p3p002377) 黒撃 |
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センキ(p3p001762) 戦鬼 |
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ノワール・G・白鷺(p3p009316) 《Seven of Cups》 |
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エルシア・クレンオータ(p3p008209) 自然を想う心 |
探索記録
イグナート・エゴロヴィチ・レスキンは、マップに示されたドスコイ地方の里、ドスカラーへと向かった。
高い山々に囲まれ、冷たい風の吹きすさぶゾウの里「ドスカラー」。住民の高齢化著しい、保守的な村社会のこの里に、あなたはさてどう情報収集をしたら良いものか、考えあぐねていた。
里のドスコイゼシュテルエレファントたちが遠くから不審げに「イグナート・エゴロヴィチ・レスキンのチーム」を見ている中、一頭の血気盛んな若ドスコイゼシュテルエレファントが、こちらに突っ込んできた。
「よそ者だ! 今すぐ帰れ、さもなくば!」
若ドスコイゼシュテルエレファントが叫び鼻を持ち上げ、高い声を発した。その合図で、里の子飼いのモンスターたちが解き放たれる。モンスターはドスコォイ、と謎の鳴き声を上げこちらに向かってきた。
イグナートたちは戦闘に勝利した。里のモンスターたちはコイコイ、ドスコォイと悲しげに泣くと、長老ドスコイゼシュテルエレファントのもとへふらつきながら歩み、その足元で倒れた。
「もしやあなたは……この国で有名な<特異運命座標>!」
イグナートの戦う様子を見ていた若ドスコイゼシュテルエレファントが、また叫んだ。その大きい眼をさらに見開き、おもむろに鼻を持ち上げ、ブオオオ、ブオオオと何度かに分けて鳴らした、いや、鳴いた。その声はさながら戦に使われるほら貝のようだ。
鉄帝のゾウは強きを好む。イグナートやチームメンバーのうち、この国で活躍し名声を確立している者がいたのであろう。若ドスコイゼシュテルエレファントの合図にぞろぞろと集まった老ドスコイゼシュテルエレファントや壮ドスコイゼシュテルエレファントたちは、イグナートに挨拶を交わすと、歓迎の意を込めて鼻をぶんぶんと振り回し、握手を求めた。
先ほどのお詫びに、とメスドスコイゼシュテルエレファントが北の海に生息するドスコイノーザンゼシュテルエレファントアザラシのステーキをふるまってくれた。うまい!
倒された子飼いのモンスターたちは、長老ドスコイゼシュテルエレファントたちの手、いや足によって丁寧に埋葬された。
「あっぱれな最期であった、さらばだモン太郎……」
長老ドスコイゼシュテルエレファントはひとり、ひっそりと涙を流した。
挨拶も終わり、一息ついたイグナートは、若ドスコイゼシュテルエレファントに、ドスコイナウマンゾウを攫ったドスコイマンモスアマゾネスについて尋ねた。若ドスコイゼシュテルエレファントは一瞬表情を曇らせたが、少し考える様子を見せ、それからゆっくりと口を開いた。
「はい。ドスコイナウマンゾウの夫婦は確かにこの里に来て、しばらく滞在していました。」
若ドスコイゼシュテルエレファントは鼻を力なく垂らす。
「私たちは、隠れ里に住まうドスコイマンモスアマゾネスから過去何度か、襲撃を受けていました。奴らがこの里から力の強いオスのドスコイゼシュテルエレファントを攫い、自分たちの里へ連れて行くので、このもともとゾウ人口がなかなか増えないドスカラーはさらに衰え、メスと老いたドスコイゼシュテルエレファントしか残らないのです」
そこまで言って、若ドスコイゼシュテルエレファントは黙ってしまった。その後ろから別の、メスの若ドスコイゼシュテルエレファントが進み出て口を開いた。
「このゾウは私の恋人なの。うちの里にはもうこのゾウしか若いオスはいないから、次攫われるのは、って皆で悲しんでいたわ。でもあのドスコイナウマンゾウの夫婦が来て……。その日、アマゾネスたちの襲撃があったの。そして、私たちは差し出してしまった」
老ドスコイゼシュテルエレファントたちがひそひそと話す声が聞こえる。
「あの善良なる者を差し出すんじゃなかった」
「でもなあ、こうでもしなければドスカラーは……」
「いや、ドスカラーは遅かれ早かれ滅びる運命……」
なんだかいまいち理解できないイグナートだったが、とりあえず、いやなんとなく。一頭ずつドスコイゼシュテルエレファントをぶん殴ると、先ほどの若ドスコイゼシュテルエレファントをもう一度、今度はマップを握りしめた手で引っ叩いてから、それから優しくアマゾネスの隠れ里の位置を聞いてみることにした。
「ドスコイマンモスアマゾネスの隠れ里に行くのですね? 私たちも過去に何度か仲間を取り戻そうと、アマゾネスを追い里へ行ったことはありますが」
そこまで言うと、また若ドスコイゼシュテルエレファントは黙ってしまった。沈黙が気まずい。色々面倒くさくなったイグナートは、とりあえず若ドスコイゼシュテルエレファントをどついた。
「痛いですよ!?」
イグナートは若ドスコイゼシュテルエレファントを再度どついた。
「聞いてます? ……はい、はい。話しますよ。そうですね、スカラーから隠れ里に向かう道は、起伏が少なく開けていて、実際通りやすいんです。ただ、道中のモンスターがちょっと強くて何度も返り討ちに遭いました。ちなみにもう一つの道は、もっと簡単です」
その道を教えて、とイグナートは口を開きかけたが、素早く動いた若ドスコイゼシュテルエレファントの立派な長い鼻の先がイグナートの顔面を小突き、言葉を遮った。
「この道は、男性ならすぐにでもわかると思います。ほら、ドスコイマンモスアマゾネスたちのオスをいざなうためのフェロモンが、そこらじゅうからぷんぷん漂ってくるでしょう? このフェロモンはモンスターが忌避するので、この隠された道を辿ると安全です。酔って倒れて攫われるかも知れませんが」
先ほどから、ふかした芋のような不思議な香りがしていたのは、そのフェロモンとやらのものか。特に惹かれるような香りではなかったが、「イグナート・エゴロヴィチ・レスキンのチーム」はそれが強く強く香る方へと、歩み始めた。
「あれ? このフェロモンに酔わないの? ゾウにだけ有効?」
若ドスコイゼシュテルエレファントがひとり、つぶやいた。
道中いろいろあったが、凍てつく川を渡り枯れた草木をかきわけ、洞窟を潜り抜けた先で、「イグナート・エゴロヴィチ・レスキンのチーム」はようやく今、ドスコイマンモスアマゾネスの隠れ里に到着した。
ドスコイゼシュテルエレファントの里スカラーとは違い、固く高い地層に守られたそこには、牙や蹄を使って掘られた形跡のある穴ぐらがいくつもあり、採られて間もない新鮮な草や、薬草等が種類ごとに分けられきれいに詰められていた。
「え、え? だれ? ママじゃない!」
イグナートがすぐ近くの大きめの穴ぐらをのぞいた時、中から泣き出しそうな声が聞こえてきた。目を凝らしよく見てみると、それはドスコイゼシュテルエレファントの子どもよりもがっしりとして毛深い、子ゾウだった。これがドスコイマンモスアマゾネス、いや、子ドスコイマンモスアマゾネスなのだろうか。嫌な予感がしてきたぞ。
子ドスコイマンモスアマゾネスが泣いた。思いっきり大きな声で泣いた。すると、どこからともなくドスドスドスコォイと地を揺らしながらイグナートの背後に急接近してきたものがあった。
振り返ると、そこにいたのは大きな大きなドスコイマンモスアマゾネス、いや、母ドスコイマンモスアマゾネスが怒りに肩を震わせ、こちらを見下ろし睨んでいた。荒く熱い鼻息がイグナートの顔いっぱいに吹きかかる。
「うちの子に! 何の用! 侵入者!」
母ドスコイマンモスアマゾネスに続き、次から次へと他のドスコイマンモスアマゾネスが子ドスコイマンモスアマゾネスの穴ぐらへと集まり、侵入者の存在を視認するや、見る見るうちに毛が逆立ち、地を掻いて威嚇しはじめた。
「待ってくれ! この人たちの話を聞いてやってくれ!」
突然、ドスコイマンモスアマゾネスの群れの中から一頭の小柄なマンモスが躍りでて、イグナートたちをかばうように立ち塞がった。周りのドスコイマンモスアマゾネスたちは、不服そうな表情を浮かべながらも、逆立っていた毛を寝かせ、苛立たしげに地面や岩壁に当たった。
「スカラーのドスコイゼシュテルエレファントたちの匂いがするじゃないか! 僕に対する使いの者じゃないのか?」
振り向いて、そうなんだろう?と問う小柄なマンモスは、周りのドスコイマンモスアマゾネスと少し様子や風貌が違っている。そもそもこの場にいるマンモスの中で、彼だけ、大人のオスであった。
挑戦結果
(もしかして、ドスコイナウマンゾウ)
あなたは目の前のドスコイナウマンゾウに、名雨マサシさん、と呼びかけた。すると突然、ドスコイナウマンゾウは前足からがくりと崩れ落ちた。
「ああ、ああ! 君、妻を知っているかい? 照れ屋で可愛くて力持ちな僕の妻を!」
こらえきれず泣き崩れたオスドスコイナウマンゾウに、あなたは持ってきた手紙を取り出し広げて見せる。
「妻の、まり美の字だ! なんてことだ、僕なんか愛されてないと思ってた。でも、探してくれていた!」
日がとっぷりと暮れた。
スカラーへ戻るあなたを見送るドスコイマンモスアマゾネスたちの群れの中に、オスのドスコイナウマンゾウは残っていた。彼はまだ帰ることができない。そのかわりに、あなたは新しく書かれた手紙と、隠れ里で丁寧に織られた乾草の敷物を携えていた。
早くまり美にこの手紙と土産を渡してあげよう。
「いきなりのお手紙、失礼いたします。
名雨マサシと申します。30歳のドスコイナウマンゾウです。まり美、お元気でしたか。足の調子はどうですか。
僕は今、ドスコイ地方のドスコイマンモスアマゾネスの隠れ里にいます。アマゾネスたちに攫われた後、監視されながらも僕はこの里の仮のリーダーに据えられました。ドスコイマンモスアマゾネスのオスは身体が弱く、無事に大人になれるのは稀なため、正統なオスの子が育つまで、外部からオスのゾウを攫い、子ゾウを他部族から守らせ、役目が終わると死ぬまで里で面倒を見ていたと、この里の者に聞いたのです。実際に老ゾウの穴ぐらには、アマゾネスたちとは別種のゾウがいて、床ずれもなく大事に世話されていたのです。先代を守り導き見送ったと、彼は話してくれました。
まり美が懸念していたドスコイマンモスとドスコイナウマンゾウの交雑も、ここではほとんどないということでした。
僕にも小さなオスの子ゾウとの縁ができてしまい、この子の成長を見届けるまでは……帰れません。
でもねまり美、今度、里のものたちが君を迎えにいくみたいだ。足を不自由にさせてしまった償いをしたいみたい。そうしたらここで、僕たちは一緒に住もう」
あなたはここで、はっと目を覚ました。見慣れた天井が見える。
ーー夢を見ていたようだ。
戦績
攻略状況:攻略成功!