PandoraPartyProject

特設イベント

飴色ストリート

●オープニング


 秋空は高く広く、そのアジュール・ブルーを一面に展延していた。
 幻想首都中心部のほど近くに、ルミネル広場と呼ばれる場所がある。
 昼は小綺麗に着飾った貴族や血気盛んな商人たちでにぎわい、夕暮れ時には恋人たちが蜜を語らっている。
 道行く人々の向こうにちらほらと見えるのは、大道芸人や吟遊詩人か。僅かばかりの路銀を得るため、腕前の披露に勤しんでいるのだろう。

 こんな場所でこの国の現状を、端的に見渡すことが出来るなどという話を知る者は少ない。
 或いはわざわざ意識する人の数は多くないと述べるほうが、より正解に近い認識となろうか。

 乾いた飴色の石畳が、中央の噴水へと円形の幾何学を描いている。
 その中央には王家の象徴たる獅子の象が、水しぶきの虹色に輝いている。
 おおよそ、そこだけを抜き出したならば、麗しい広場に見えるだろう。
 泉には愛や願いを込めた硬貨が投げ入れられ、其々の物語に花を添える。
 だが朝早く訪れれば、あろうはずの硬貨など一枚たりとも見かけることはない。
 貨幣を捨てる程の豊かさもあれば、それを拾い集めねば生活すらままならぬ者も居ることでもあるのだ。

 広場から延びる三本のストリートは、其々がこの国の地位を象徴するかの如く様相を変えていた。

 最初のジルバプラッツ通りは、広場から続く飴色の石畳にパターンを加えて華やかに続いている。
 行き交う人々の身なりは良い。貴族の子弟や商人、そしてなんらかの成果を携えた冒険者達だろうか。
 趣味のお忍びでもなければ市街に足を運ぶこともない大貴族はともかく、ここに足を運ぶのはそれなりに裕福な者達に違いない。
 立ち並ぶ商店も、小綺麗な店構えで雰囲気はとても穏やかだ。
 そこにはゆったりとした時間が流れている。

 黒猫の看板が揺れる洒落たカフェに、繊細なガラス細工や美しく輝く宝石のアクセサリーショップ。
 ベルベットの布地から仕立てられるのは、舞踏会用のドレスだろうか。
 夜には質の良いジレを着たマスターが、葡萄酒や琥珀色の蒸留酒を出してくれるバーもある。

 その左側、ラドクリフ通りはどうだろう。
 露天商の快活な掛け声にオレンジ色のワンピースを着た女性が笑顔で応じる。
 小さなカフェの扉を開ける男女の仲睦まじい様は、吟遊詩人の好む所であろう。
 そこは大国たる幻想の活気と豊かさが集約されているとも言える一角なのだ。
 ただし先ほどの通りと比べるならば、やや雑然とした風情が垣間見える。
 活気があるには違いないが、飲食店で供されるのはゴブレットやグラスではなく、木製のコップであったりするのだ。
 商店には勢いがあり、普通の生活の中で欲しいものは、だいたいなんでも揃ってしまう。

 道を歩けば、カゴにめいっぱいの食品を詰め込んだご婦人とぶつかりそうになる。そそっかしい性格なのだろう。
 賑やかな食堂の隣には武器を売るお店、その横には集合住宅。かけはぎ繕い。小麦粉や油の量り売り。なるほど雑多である。
 工房の職人はずいぶんと腕は良いらしいが、どうやら頑固者だという噂である。いくら金を積まれても首を縦に振らぬこともあれば、儲けにならぬような仕事でも安請け合いしたりするらしい。ともかく裕福ではなさそうである。
 夕暮れ時には路地裏の民家からパンを焼く香りが漂ってくる。夜には笑顔とエールを明日の活力へと変えるのだろう。ここはそんな場所だ。

 最後に問題の三本目、プリマヴェーラ通りである。
 通り一本で様相ががらりと様変わりすることは、都会ならではだろう。
 一見して翳りが見えるのは手入れのされていないグレーの石畳の舗装所以か、それとも単純に日の光が届きにくいのだろうか。
 道行く人の数も疎らであり、誰もかれも地味な色合いをしている。
 見えるのは怪しげな飲食店、賭場。雨戸の閉ざされた家。真昼の酔っぱらい。暗い服装で足早に動く者。場違いに派手な身なりで威圧的な気配の男。おおよそそんな所だ。
 露店で売られているものも、見るからに粗悪であったり、妙に分不相応そうであったりする。
 夜になれば強引な客引きや、きわどい服装の女性、強面の大男等の姿も見るだろう。喧嘩沙汰など日常茶飯事である。

 もっとも極端にひどい地域と比較すれば、治安は優しい部類ではある。
 不慣れな旅行者や、子供は夕刻からはおすすめできないという程度だ。
 ただ、だからこそこうした比較や観光にうってつけとも言えるのだが。


「アルエットは街に甘いクッキーを買いにいくの。あなたも一緒にどうかしら?」
 アリスブルーの可憐な衣装を身にまとった『籠の中の雲雀』アルエット(p3n000009)が振り向き問いかける。
 お目当てのクッキーは二本目の通りに露店があるらしい。
 小さな店舗と併設されたカフェはこじんまりとしてお気に入りの場所。
「他にもたくさんお店があるわ。あなたのお買い物にも、アルエットついて行ってもいいかな?」
 小さく小首を傾げてふんわり笑う少女は、手を差し出した。

●もみじより

 初めまして。もみじです。
 アジュール・ブルーの空の下、飴色の街で散策。
 なんでもない日常を、なんでもない街角で過ごしてみませんか。

●目的
 お買い物にお食事、お散歩に暇つぶし。
 あるいは道に迷って?
 もしかすると、この辺りに住んで居たりするのかもしれません。

●ロケーション
 街の中には広場や通りがあり、大抵のものはあります。
 番号を振っておきますので、自由な場所でお寛ぎ下さい。

 1、【ルミネル広場】
 願いが叶うとかいう噴水は、待ち合わせによく利用されています。
 人の数は多いです。

・大道芸人や吟遊詩人を見ることも出来るでしょう。
・人気の露店は、黒パンにソーセージを挟んだものです。
・お散歩に、待ち合わせに、人間観察にも最適です。

 2、【ジルバプラッツ通り】
 綺麗な通りで、いずれもややお高いお店が揃っています。
 露店はありません。
 人の数は少なめですが、数人の衛視が安全を守っていますのでゆったりできるでしょう。

・小奇麗な仕立て屋や美容室:おしゃれな人が多いです。
・綺麗な喫茶店:陶器のカップで紅茶を楽しめます。テラス席では秋の風を感じられます。
・レストラン:中々に本格的なコース料理が出てきます。
・バー:落ち着いた空間で葡萄酒や蒸留酒、珍しいお酒等、品数が豊富です。

 3、【ラドクリフ通り】
 普通の通り。もっとも広く、もっとも賑やかです。

・露店:可愛らしいアクセサリ店、みずみずしい果物やジュースを売る店、焼いたお肉を薄パンに挟んだ物を売る店等があります。クッキーの露店もあるみたいです。
・主婦御用達な日用雑貨のお店:食器からゴミ箱まで、家の中の道具がだいたいなんでも揃います。
・小さな宿:一階は賑やかなパブです。冒険者や旅行者に好まれています。ミートパイにぬるいエールなんてのも乙でしょう。
・おなじみ武器や防具のお店:安価なものばかりですが、冷やかしも楽しいでしょう。
・ありふれた食堂:お肉や魚の大皿料理や、サンドイッチやパスタ、パンと具沢山のスープなんかが人気です。
・他には小さな工房や路地裏の民家、小さな集合住宅もあったりと、非常に雑多です。

 4、【プリマヴェーラ通り】
 麗しい名前とは裏腹に、得体の知れない空気が渦巻く通りです。
 破綻していないのは、その筋の人が守っているからでしょう。
・うさんくさい露店:得体のしれない物ばかり売っています。
・うすぐらい酒場:入りにくいですが、隠れ家的な魅力もあるかも。
・小汚い食堂:統一感のない客層が特徴で、意外と活気があります。
・あぶない賭場:喧嘩は名物です。
・ちょっとあやしいお店も見えますが、えっちな描写はありません。

●注意
 未成年の飲酒喫煙は出来ません。

●参加NPC
『籠の中の雲雀』アルエット(p3n000009)
 ラドクリフ通りのオープンカフェでお茶しています。
 誘われればどこにでもついていきます。PCに絡まれない限り空気として扱います。

●備考

・秋イベント『爽秋の一時』シナリオでの同一参加は出来ませんのでご注意ください。


リプレイ

※1 当リプレイの返却はメールで通知されません。
※2 当リプレイはキャラクターの参加・注文状況・履歴には掲載されません。


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