特設イベント
『遊楽伯爵』の祭事
●オープニング
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幻想たる国の世には憂鬱が多い。
軽く額を抑えていた手を放し、彼は――ガブリエル・ロウ・バルツァーレクは窓の外を見る。
さて、悩み事は一体『どれ』だったか。フォルデルマン三世現王の事か、それともフィッツバルディ公かアーベントロート侯爵の事か。その陰にて日々に増長する貴族共か。鉄帝国の圧力? 聖教国の干渉……
あるいはその全てか。
「……」
吐息一つ。瞼を閉じて思考を打ち切る。
現状の巨大すぎる課題に対し諦めの感情を抱いたのではない。ただ今この場で思考を張り巡らせても無意味であり、解決の糸口は見えぬと判断したが故にである。それに。
「アレが、近かったですね」
再度、窓の外を見る。
太陽は天に。ここは己の領内。ならば今はこの地の事を見据えねばならぬ時。
あと幾何もすれば『アレ』が始まるという事を彼はようやく思い出した。厳密には忘れていたというより……憂鬱事で一杯だった彼の脳内の前面にようやく出てきた、と言った所である。が、まぁそれはともかくとして――
――『アレ』はとても楽しく、美しい。
道には人々が溢れその脇には多くの露店が立ち並ぶ。
それぞれの顔には笑顔が溢れ、活気が満ちる。
ああ、その様の――何と美しい光景であろう事か。
心が躍る。人は、その光景の事を――
●
「――祭り?」
あぁ、と返すのは偶々酒場で知り合った年配の男だ。
彼は酒を飲み干すように杯を高く掲げ、一気に飲み干せば。
「伯爵様の領地でな、あるんだよ。あちこちの食い物という食い物が並ぶんだぜ。アンタもどうだ?」
「なんで食い物メインなんだよ」
「知らねぇのか? あの方はな――グルメなんだよ」
――トップの趣味かよ。
「ハハッいやいやそう言うな。決して悪いもんじゃねぇよ。
旨いモンも変なモンも探せばあるし、それ目当てに結構人が集まるから活気もある。
ついでに申請さえすりゃあ自分で店を出すことも出来る――てな。中々楽しいぜ?」
「楽しいというか、それは……」
自由だな、という考えが真っ先に出てきた。
遺憾ながらこの国。レガド・イルシオンの国家情勢は火……こそ点いていないものの楽観できる程な平和とは言い難い。故に、酔いの面はあるとは言え目の前の彼からそんな、陽気な言葉が漏れてきたことが些か不思議で――
と、そんな思考を見透かしたかのように、彼は言う。
「あそこは良い所だよ」
繰り返す。酒をもう一度、注いで飲めば。
「本当にな、良い所なんだよあそこは……なぁ、アンタもどうだ? 一度くらいよ」
――きっと楽しめるぜ、と彼は付け加えた。
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誰かが来るだろうか。誰が来るだろうか。
幻想たる国の世には憂鬱が多い。
なればこそ。この様なせめてもの催し事の際は、盛大にこそ――
「……あってほしいものです」
夜が来る。間もなく間もなく夜が来る。
楽しき楽しき――夜が来る。
●茶零四より
お世話になります。茶零四と申します。
夏の一夜。『遊楽伯爵』ガブリエルの領内にて食べ物メインのお祭りが開かれるようです。
お祭りを巡る側、もしくは露店など食べ物を出す側と言ったお祭りに参加するプレイングをかけて下さい。
食材等は様々な所から仕入れられているようです。
よっぽど特殊な品でなければどこかにはあるでしょう。
本シナリオには、ガブリエル・ロウ・バルツァーレクがNPCとして描写される可能性があります。
それでは、ご参加頂ければ幸いです。
●備考
・夏イベント『盛夏の残照』シナリオでの同一参加は出来ませんのでご注意ください。
リプレイ
※1 当リプレイの返却はメールで通知されません。
※2 当リプレイはキャラクターの参加・注文状況・履歴には掲載されません。
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