揺らぎ消えゆは花霞

登場人物一覧

名前：花榮・かすみ
種族：鬼人種
性別：女
年齢（或いは外見年齢）：25歳
一人称：私
二人称：貴方
口調：～ね、～よ、～だわ
設定：
　神威神楽の武家たる鬼人種の一門、花榮家の長女として生を受けた娘。
　年の離れた義妹を可愛がり、幼馴染みたる久泉 清鷹の事も実の弟のように可愛がっていた。
　薙刀を始め、刀剣の扱いに長けた『じゃじゃ馬姫』と幼い頃より称されていた。
　剣の才は清鷹の実兄に継ぎ、幼き日の清鷹との練習試合にて彼を圧倒し見事にプライドをへし折った。
　桜色の姫君の剣の才へと嫉妬と羨望を抱いた清鷹の心の内にいつの間にか抱かれた恋慕。
　その恋慕は日に日に背丈とかんばせの似る彼女の義妹へと辛く当たる切欠にもなった。
　花榮家の『お家騒動』により巻き込まれたかすみが姿を消し――今はその行方は知れない。

補足：
「ほら、清鷹。私の勝ちよ」
　ふふん、と鼻を鳴らしたかすみに清鷹は一度も勝てたことがない。幼き日に剣を合わせ、戯れのように圧倒されたあの日を思い出しては悔しさばかりが胸を絞める。何時だって飄々に、幾つになってもお転婆な清鷹の想い人は勝負を挑めば何時だって剣を抜いた。
　――『あの日』まで。柔らかな桜の色の髪を結わえたかすみは「今日は遊びに来てはならないわ」と清鷹へと静かに言った。
　その日、花榮家ではその家督を継ぐ者を決めなくてはならない。長子たるかすみが継ぐ者と思われたが女が跡目になる事を反発する者によって家内では紛争が起った。次第に広まる戦火よりかすみは義妹を逃し、剣を引き抜いた。
　清鷹が最後に見たのは義妹を逃して剣を引き抜いた彼女の後ろ姿だけだ。
「来てはいけないわ」
　唇が戦慄いた。畏れるような響きが音をして漏れ出して――そして、彼女は花霞の下、姿を消した。