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大地を震わす運命へ
登場人物一覧
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──ようこそ、<混沌>へ。
それは次に目を覚ました時に、すぐ目の前にいた神託の少女から、『遺言代行』赤羽・大地(p3p004151)が突きつけられた言葉だった。
「明日、世界が滅亡しますです。
あ、嘘です。明日じゃないかも知れませんが、近い将来、世界は滅亡するでごぜーます」
冗談かどうかもわからない調子で彼女はこの世界を説明し、大地がこの世界でやらなければならない事を告げた。
「まずは仕事、か……俺に合う仕事なんてあるかな……」
『何弱気になってんダ、やるしかないだロ』
「それもそうだけどさ……」
神託の少女からの説明を聞き終えた大地はまずはローレットで仕事を受けてみては? と言う彼女のアドバイスを元に、大地は
最初は自分の出来そうな事から……胸の内に住む相棒赤羽と共に探してみれば……ほら、丁度特定の本を調べる仕事があった。
「こういうのならいいかな。……魔物討伐とかさ……まだピンと来ないし……」
『だナ! こう言うのかラ、始めよーゼ!』
出来そうなのから始めたら、きっとこの世界に馴染めるだろうか。大地は不安を抱えながら、赤羽は期待感を抱きながら、この世界で生きる為の知識をかき集める事にした。
『はァ、やっと仮住まいを得たナ』
「ああ、大変だったけどこれでとりあえずの拠点が出来た」
大地がしみじみと見上げるのは今日から仮住まいとする屋敷。後に『自由図書館』として使用する事になるこの屋敷も、最初は何も無くガランとした内装が広がっている。
「物は住んでるうちに色々増やしてこう、まずは周辺の地理を把握しておきたい……散歩に出てみるかな」
『いいナ! 決まりダ!』
大地は屋敷の周辺を探索すべく、赤羽の一押しもあり軽く準備をし外へ踏み出した。
屋敷の位置は少し歩けば街へ出る事が出来、また反対方向へ少し歩けば森へ入る事が出来た。
「今は手ぶらだし、奥まで行くのは危険だよな……」
『まァただの散歩のつもりだったしナ、この先はまた今度にしよーゼ!』
「だな、何か出る前に戻ろう……ってここ、どこだ……?」
『おイ!』
コンパスも何も持たずに夢中になって入ってしまった森で、大地は来た道を見失ってしまう。所謂迷子と言う奴だ。
何とか戻らねば……そう大地が少し焦っていた。
──次の瞬間
──グアアアァァァァァッ!!
「え、な、何?!」
『わかんねェ、とにかく逃げるゼ!』
獣の咆哮が聞こえる。大地の探検気分は一気に青冷めた。
すると
「こいつって……っ」
『大地がいつもやってるゲームに出てくル……オークみたいな奴じゃねぇカ……!』
フシューッと鼻息を荒くして大地の前に現れたのは、この国の郊外でもポピュラーなモンスター……オークだ。
「う、うう嘘だろ?! ど、どど、どうすれば……」
『くソ!! こんな時に限って魔物に遭遇しちまうとハ……ッ』
今の大地は武器も防具もない。それどころか、大地にとってこういう魔物はゲームや漫画の世界の話で。
「お、俺……死ぬのか?! いやだ、死にたくない!!」
ここへ召喚されてからも平和的な依頼ばかりを受けていたのもあり、不意打ちを受けたのもあり……大地は酷く酷く取り乱していた。
『おイ! しっかりしろヨ!! ここを打破出来るのは、大地しか居ねんだゾ!!』
「で、でも……」
『でもじゃねェ! やるしかねぇんダ! 魔術を教えてやるカラ、今この場で覚えロ!』
「魔術って……う……っ!」
そう言った赤羽の言葉と共に何かが流れてきた。それは字? いや、言葉? いや、詠唱!
──グルアァッ!!
「ひっ!! 来るッ!!」
『怯むナ!! 今流した詠唱を俺と唱えるんダ!!』
「赤羽と?!」
これは死なない為に、今を生き抜く為に必要な事だ。赤羽に一喝された大地は覚悟を決める。これで決めなければ死……死にたくない死にたくない……!
絶対に、死にたくない!!
「な、な汝、数多なる神々よ……」
『高貴なる精霊よ』
「き、危機たる……我が身を守れ……」
『震わす命運を解く剣を与えよ』
「雷鳴の如く──応えよ!!』
──グアァァァッ!!
すると曇りなき天から雷が降りオークを直撃した。オークは直後倒れ込み、また震えながら起き上がろうとしていたが最後には白目を向いて力尽きた。
「やっ、た……のか?」
『やったダロ?』
「や、やったんだな……やったんだな!?」
危機が去り漸く安堵した大地は、その場に崩れ落ちるように座る。
「心臓に悪すぎる……」
『俺のおかげで助かったものノ……今度からは武器くらいもとーゼ』
「賛成」
さっさとこの森を出よう。一戦を終えた大地はその後すぐに出入口への看板を見つけ、屋敷へ帰る事が出来た。
──ようこそ、