PandoraPartyProject

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ゲーミング人間椅子

登場人物一覧

アーマデル・アル・アマル(p3p008599)
灰想繰切
アーマデル・アル・アマルの関係者
→ イラスト

 アーマデル・アル・アマルが混沌世界に召喚されてからようやくその日々に馴れてきた頃、彼のもとにある一通の文書が送られてきた。
「いや……本当にそうなのか……」
 文書には地図と共にこのようなことが書かれていた。

「アーマデル、身代金5000Gを持ってこの地図の場所に来い。さもなくばお前の知り合いのイシュミルとやらがどうなっても知らないぞ」

 イシュミルとはアーマデルと同じくこの無辜なる混沌に召喚された者であり、二人はこの世界に来る前からも親交があった。
 それで、手紙を見てアーマデルがまず思ったのはイシュミル……ではなくイシュミルを拉致した人間の心配であった。アーマデルとイシュミルは医者と患者といった関係だが、そういった関係だからかイシュミルが下手をすればかなり危険なことも理解していたし、そもそもイシュミルが簡単に捕まるとは思っていない。
 しかし、万が一本当に捕まっていたとなるとイシュミルは今この瞬間も苦しめられているかもしれない。そう考えて、アーマデルは比較的冷静になって地図に書かれた場所へ急いで向かった。

 しかし、アーマデルは考えていなかった。まさか、イシュミルは本当に捕まっていたが実際は無事であることに、そして捕まえたものを返り討ちに合わせていることに……

「イシュミル! 大丈夫……か?」
 アーマデルが地図に指定された場所に行くと、そこにはパンツ一丁の男性がブリッジ姿勢で1680万色に光っている状態になっていて、イシュミルはその男を椅子のようにして乗っていた。それをみてアーマデルは呆然となり、いわゆるスペースキャット顔になった。
 そんな顔のアーマデルを見てイシュミルは微笑みながら言った。
「やあ、ちょっと来るのが遅すぎないかな?」
「……なにやってんだあんた」
 アーマデルはこの状況にややあきれながら聞いた。
「何って、ゲーミング人間椅子だよ?」
「ゲーミング人間椅子ってなんだよ」
「何って……家具だよね?」
 なんだろうか。二人との間で話がかみ合っていない感じだ。

 突然の急な展開で頭が全く追いついていないなか、アーマデルがあることに気づいた。
「ちょっと待て。ゲーミング椅子はゲームをするための椅子であって光らないんじゃないのか?」
 アーマデルがある種の正論をぶつけると、イシュミルは可愛く小首を傾げて分かりやすく誤魔化した。どうやら、イシュミルは、というかこの無辜なる混沌全体での『ゲーミング』の認識は1680万色に光ることであり、仮に黒単色のゲーミングマウスが無辜なる混沌にあったとしても、それを人々はゲーミングマウスとは認識せず普通のマウスと認識するかもしれないということだ。なお、もし本当に黒単色のゲーミングマウスがこの世界に持ち込まれたとしても、不在証明によってゲーミング足りる機能はほとんど使えないだろうが……
「それなら、なんでこれをゲーミングっていうんだ?」
「じゃあ、ジョイスティックがついているから?」
 まだゲーミングの定義について悩んでいるアーマデルに対し、イシュミルはどこからかジョイスティックを取り出した。それを見てアーマデルは一種の危険を感じた。念のためイシュミルに聞いている。
「まさかとは思うが、そのジョイスティックを使うと……」
「えい!」
 少し可愛げをだしてイシュミルはジョイスティックを前に倒した。すると、ゲーミング人間椅子になっている男が前に進んでいくではないか。スティックを後ろに倒すと後退し、左右に倒せばカニのように横方向に動く。また、クリック操作で色が全体的に大きく変わったり、おいしいものを食べた後のような恍惚な表情をしたのちに馬のように走りだしたり……
 この状態の男を見てアーマデルは再度呆然としてスペースキャット顔となり、イシュミルは少し楽しそうにゲーミング人間椅子を動かして遊んでいたのであった。

「って、そこまでやったらアウトだろ!? そもそも人体を1680万色に光らせている時点でどうだと思うが!?」
「そこは気にしたら負けというやつだよ。むしろ君が突っ込まなければ誰も気にしないで話が終わったんだが……」
 結局、アーマデルは日が暮れるまでこのゲーミング人間椅子とイシュミルによる遊びを見せられ、下手な依頼をこなした後よりも疲れた表情で拠点としている場所へ帰っていった。ちなみにゲーミング人間椅子にされた男だが、彼に起こったことは体が1680万色に光ったりジョイスティックで動くようになるのもイシュミルが製薬・投与した薬によるものであり、薬自体は不在証明の影響を受けずに機能した。その薬の効果は一日で切れたため男はひとしきりイシュミルに遊ばれた後は元の生活に戻っていったが、薬の後遺症でたまに体が光るようになったり突然馬のようになったりして、それが原因で後に起こした犯行は失敗。牢屋の中で体を1680万色に光らせながら生活していたとかなんとか……

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