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モブから見たドラマ・ゲツク
登場人物一覧
●はじめに
こんにちは。世界を救う『イレギュラーズ』に密着するこの企画。
今回は『蒼剣』の弟子と名高いハーモニアの美少女、ドラマ・ゲツクさんについて密着取材です。
──と言っても、ご本人の取材だけでは得られない情報やモノがあるのも事実。
そこで、今回はドラマさんに詳しいという二人の方にお話を伺いました。
それでは、ご覧下さい。
●ハンバーガーショップ店員・マコーワの話
マコーワ氏はバイトチーフだ。
ハンバーガーというウォーカーたちが持ち込んだジャンクな食べ物は、多くの者を魅了して止まない。
美味くて安くて手軽、というのも魅力的だ。無論、我々記者も好物である。
「はい、いらっしゃいませ! お持ち帰りですか?」
メニューを渡そうとして来るマコーワ氏を手で制し、インタビューの旨を伝えた。
「ああ、忘れてた。そういやあ、取材受けてたんだった」
──すみません、なんだか忙しい時間に来てしまったようで。
「忙しい時間は過ぎたんでいっすよ。んじゃ、ちょっと奥まで」
バックヤードと呼ばれる、スタッフの休憩室まで通される。
──早速ですが、ドラマ・ゲツクさんについて知っていることを教えてください。
「最初ね、ウチの店にお客として来てくれたんすよ」
──初めて来店された時の印象は?
「ああ、可愛い子だなって思って。印象深いすね。あー……っと。誰かと来てたんだっけ、なんかガタイのいいおっさんだったかな。最初は何かヤバい密会かと思って。だって、おっさんと小さい女の子二人組ってさあ……娘とか妹とか、そういうのにも見えないし」
──ほう、男性と二人でバーガーショップに……。
「姪っ子とか、とにかくそういうのにも見えなかったんだよなあ。何というか、雰囲気とか距離感的に? だからヘンな真似したらこのバーガー・プレスでおっさんのほうをやっつけてやろうと思ったんだけど……」
──バーガー・プレス……。
「あ、俺の必殺技なんすけど。こう、バンズとバンズでグシャッと」
──成程。お話、続けていただいても?
「あ、で、まあちょっと様子伺ってたんすよ。ちょうど俺の作った自信作のバーガーにパクつくとこだったんすけど、まー、目ェキラキラさせちゃって。メッチャ可愛かったですね!
一緒に来てたおっさんに興奮気味に話しかけてたんで、多分ハンバーガー自体を食べたことなかったんじゃないかな。まー、あんなん見たら作った甲斐あったし、鼻高いすよね」
──成程、ハンバーガーを食べた事がないくらいには、世俗に疎かったようですね。
「そんな感じすね。気に入ってくれたのか、ちょくちょく来るようになったんすよ。つか、あんなちっこい子なのに、ヤベー奴らと戦うイレギュラーズなんすよね。まー、ソッコーファンになりましたよ。俺らがこうやってバーガー作れるのはあの子のお蔭だし、感謝しなくちゃすね。ドラマちゃん、俺ら張り切ってバーガー作りますんで、また食べに来てくださいよ。サービスしちゃうよ!」
──はい、宣伝までありがとうございました。
●ブティック店員・エリカの話
エリカ氏は流れる黒髪が人間種の女性だ。
29歳。恋人募集中だとか。年齢を伺った時、物凄い剣幕で睨まれたのは記憶に新しい。
──こんにちは。インタビューの件でお伺いしました。
「こんにちは、お待ちしておりました」
丁寧に腰を折るエリカ氏。
──早速ですが、ドラマさんについてお伺いしてもよろしいでしょうか。
「はい。ドラマちゃんはまさに恋する乙女、っていう感じなんですよ。好きな人に振り向いてもらうためにすごく努力してるんです」
──恋ですか。先ほど、確かに男性と一緒に飲食店を利用したという話も聞きました……でも、よろしいんですか? 今回のインタビュー内容は雑誌の記事にしてしまうのですが。
「こういうゴシップも必要じゃないですか? あの子、アプローチ結構頑張ってるみたいですけど……逃げ道ふさいで外堀埋めちゃった方が早いかなって」
──はあ、成程。
「あれ、くれぐれも私の名前伏せてくださいよ。怒られちゃうので」
──その点はご安心ください。それで、ドラマさんがしている努力というのは。
「日課として、朝早くに起きて走り込みとかしてるんですよ。凄くないですか? 私なんか一週間も続かなかったのに。それでその後はローレットのお仕事して、夜になったら本を読んで……とか、とにかく予定がぎゅうぎゅう。ちゃんと寝てるか心配になるくらいですね」
──それは凄い……。
「で、たまのお休みの日にウチに来てくれるんですよ。多分デート用の洋服を買いに」
──ドラマさんの私服! ぜひ見てみたいものです。
「可愛いですよ! 初めて来店されたころに比べると、ちゃんと自分に似合う服を着るようになったと思います。はじめのほうに春服コーデの提案もさせてもらったんですけど、あの子は知識欲が凄くて。ちょっとファッションの事を教えたら、みるみるセンスいい洋服を選ぶようになって。何だか嬉しいですよね」
──貴重なエピソードをありがとうございます。
「私、お相手の男性を知らないんですけど、こ~んな可愛くて良い子に好かれてる男の子は幸せ者だなって思いますね。ドラマちゃん泣かしたら、私、これでそいつをブン殴ってしまうかも」
なぜか石が詰まったワニファラオ革のカバンを見せびらかしてくるエリカ氏。怖すぎる。
……先のマコーワ氏のエピソードから言うと、ある程度歳を重ねた男性らしいが……。
嫌な予感がしたので、それは言わない事にした。
「はあ~、私も恋したい、記者さん、私の宣伝もしてくれません? 恋人募集中! って」
──ええ……これ匿名インタビューなんですけど……。
「いいから書いてくださいよ」
石の詰まった油圧ワニ革のカバンを店内で振り回すエリカ氏。
重そうなエグい風切り音を聞いて、うろたえるインタビュアー。
──わかりました、わかりましたからソレやめてください!
「やったあ! どんなヒトがアプローチしてくれるかな~。年収1億Goldで背高くて若くて料理上手なイケメン来てくれないかな~~」
──はあ、では私たちはこれで……ありがとうございました。
「はい、ありがとうございました! 雑誌買いますからね! うふ」
編集者、頼むから恋人募集欄を大きく掲載してくれ……そう願いながら、インタビュアーたちはブティック店を後にした。
●おわりに
いかがでしたか?
ドラマ・ゲツクさんについての詳しい情報は知ることができたでしょうか?
今後も彼女の活躍に目が離せませんね。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
※某ショップ店員のEさん(仮名・29歳)、恋人募集中とのことです。(欄外にものすごく小さく書かれている)