PandoraPartyProject

SS詳細

禁断の書

登場人物一覧

キドー・ルンペルシュティルツの関係者
→ イラスト
キドー・ルンペルシュティルツ(p3p000244)
社長!

●『燃える石』
 店内に足を踏み入れた瞬間に、キドー (p3p000244)は眉を跳ね上げた。
「ああん……」
 いつものカウンター席に、前の客の忘れ物か、薄い本が1冊置かれていた。
 マスターは店の奥に引っ込んでいるらしく、姿が見えない。
「なんだ、これ?」
 スツールに腰を下ろして、本を手に取った。
 白い表紙には青インクで、背中合わせになって剣とナイフを構える人物がラフに描かれている。
 一人はエルフ、いや混沌世界でいえばハーモニアか? 長く伸ばした髪にとんがり耳。ナイフを手にするもう一人の耳も尖っているが――。
「ゴブリンかな?」
 表紙の下角には『お汁』というペンネームがあった。
 変な名前だな、と思いつつ本を開く。
 てっきり漫画だと思っていたが、どうやら小説、それも戦記ものらしい。
 物語は戦の末に敵国の奴隷となり、身も心もぼろぼろになって故国に戻ってきたゴブリンが、エルフの大貴族の屋敷に忍び込むところから始まっていた。
 金目になるものを探し回っているうちに、ゴブリンは国が破れる原因となった『虹に輝く竜の心臓』を見つけてしまい、「なぜ、こんなものがここに」と狼狽える。と、そこへ――。
 キドーはカウンターの奥に目を向けた。
 マスターはまだ姿を現さない。
「ま、いいか。今夜は急ぎの仕事も何もねぇし」
 夜は始まったばかりだ。
 キドーはマスターが出てくるまで、薄い本を読んで暇を潰すことにした。

●『虹に輝く竜の心臓』―中盤

 ルゴラはきょとんとしているトギーの頬を両手で包み込むように挟んだ。
 目はドキーの不安を焼き尽くすように見開かれている。
「トギー、愛している」
 ルゴラは驚きに目を瞬かせるドキーにそっとキスをした。
 かすめるように触れただけですぐ唇を離したが、顔は吐息がうぶ毛をくすぐるほど近くにとどまっている。
「目を閉じて」
「あ……い、いや、ちょっと待って!」
 ルゴラは暴れだしたトギーをねじ伏せて、再び口づけた。
 今度は触れるだけでなく、唇の隙間から舌を忍び込ませてトギーの舌を捕まえた。
「ん……うぅ……」
 キスはトギーの想像の範疇を越えていた。
 男の、それもエルフの舌が口の中で動き回っている。
 どうしていいか分からず、トギーは身動きひとつできないまま、ただルゴラにされるままになっていた。
 頼りのナイフは――ルゴラを傷つけるつもりはないが――洞窟に逃げ込んだときに、雨に濡れた上着と一緒に焚き木の傍に置いていた。
「むふっ……」
 ツンと尖らせた舌先で口蓋を舐められたとたん、背骨をぞわりとしたものが駆け抜け、甘い痺れが尾てい骨に溜った。

 ◇◆◇ ◇◆◇ ◇◆◇

(「な、なんじゃ、こりゃあ!!」)
 ぎゅっと音をたてて薄い本に皺がよる。
「なんでオレがクソエルフと――」
 キドーの頭の中で、いつのまにか登場人物の名前が自分たちの名に置き換えられていた。
 トギーはキドーに。ルゴラはクソエルフの名に。
 当然、頭の中に浮かんだ人物像は、自分とクソエルフだ。
 途中まではそれでよかった。
 細かいところに目をつむればなかなかできた話で、ぐいぐいその世界に引き込まれていたから。
 反目し合いながらも二人で協力して、敵国の竜騎兵隊を全滅させたあと、こともあろうに自国の軍に裏切られて――魔界の洞窟に逃げ込むまでは。
 キドーの太ももがさっと粟立つ。が、目は嫌々、文字を追い続ける。手はページを繰り続ける。
 止めるには、あまりにも物語にのめり込んでいたのだ。
 
 ◇◆◇ ◇◆◇ ◇◆◇

 ルゴラはトギーの胸に触れてきた。
 ぷくりと膨れて起立する胸の尖りを、指でそっと押しつぶされる。
「……っ」
 トギーの全身を快楽の波が洗った。
 ルゴラは飽きることなくトギーの口を吸いながら、胸の尖りを指で弄び続ける。
 とろけるような快感がトギーの喉を細かく震わせ、酷く甘い濡れた声を唇の隙間から溢れ出させた。
「もっと気持ちよくしてやる」
 羞恥の涙をにじませながら、トギーは嫌々と首を振る。
 ルゴラはそれに構わず、さっきまで指で苛めていた尖りを口に含む。舌で優しく舐め転がしてやると、体の下でトギーの腰がひくっと泳いだ。
 とたんルゴラの体に擦れてしまったトギーのものが、下履きの中で形を変えて、その存在を主張し始めた。
「あぅ……」
 ルゴラはニヤリと笑うと、トギーの下に手を伸ばし、下履きの上から固くなったものを握った。
 昂ったものを捕えたまま、ゆっくりと指を動かす。
 痛いほどの快感に、トギーの意識がふっと遠のきかけた。たまらず腰が浮く。
 一気に下履きを引きおろされた。
 ルゴラは躊躇うことなく、トギーの震えるそれに直に触れた。
「イ、イヤだ。はな……せ……」
「嘘だ。だって、ほら、こんなに――」
 ルゴラは先端から溢れ出した蜜を指に絡ませると、トギーに見せつけた。
「もっと出して」
 トギーの尖った耳にそう甘くささやくと、ルゴラは体を下へずらした。震えながら蜜をしたたらせる起立の先端に唇を寄せる。
「やっ……あ、あぁ……」
 気がつけば起立の中程まで、ルゴラの口に捕らわれていた。
 いやらしく濡れた手で根元の袋を撫でまわされ、きつく吸い上げられる。
 どこまでも駆け上っていく快感に耐えきれず、キドーは欲望の熱をルゴラの口の中に解き放った。
 切れ切れに甘い声を漏らすトギーの下腹部では、まだルゴラの手が動いていた。
 ねっとりとした指が禁断の蕾に這わされる。
「そこは――」
「力を抜いて」
 指がゆっくりとヒダを割って中に入ってきた。続けてもう一本。
 ルゴラはトギーの口をキスで塞ぐと、指をうごめかせた。
 下腹部に圧迫感を感じてあげた甘い悲鳴が、洞窟の中で木霊する。
 ふいに指が引き抜かれ、唇が離れた。
 解放されたトギーは、息を吐いた。
 が、後ろの蕾は物足りなさからひくついたままだ。まだ、もっと、とおねだりしている。
 トギーはルゴラの白い胸にすがった。
「頼む……から……」
 ルゴラが下履きを降ろす。
 荒々しく猛る大きな物を目にして、トギーは悲鳴をあげた。
「む、無理。そんなの入らない」
「心配ない」
 ルゴラはトギーの肩に手をやって地面に押しつけると、ひくつく蕾に先端をあてがい、一気に――
 
●『燃える石』
「ふ……ぁ、ああっ!!」
 キドーは薄い本をもったまま、スツールごと後ろにひっくり返った。
 床で強く頭をうちつけて気を失い、体中をヒクヒクと震えさせた。
 そこへ。
「マスター! ボク、本を忘れ――ひぃぃー!」
 シルヴィ・フォン・ヴァレンシュタインはドアの前に立ち尽くした。
 先生が手に持っているのは、こともあろうに妄想を暴走させて書きあげた、ラゴ×キドのBL小説ではないか。しかも、しっかりと中を読まれている。
 まずい。非常にまずい。
 マスターがカウンターに姿を見せるや、シルヴィは気を取り直し、すぐに隠ぺい工作に取りかかった。
 まず、キドーの指を無理やりまげて薄い本を回収。
 次にマスターに新作料理をおねだりして作ってもらい、キドーがひっくり返る前のカウンターに置いた。
 ナイフとホークを動かし、一切れ取って、泡を吹くキドーの口の中にぐいぐいと突っ込む。
「これでよし! あ、マスター。ボクは今日、ここに来なかったことにして。お願い!」
 自信作のもったいない使われ方にむっとしているマスターに手を合わせると、シルヴィは逃げるように店から去っていった。

PAGETOPPAGEBOTTOM