PandoraPartyProject

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塩と砂糖を混ぜるなんて

登場人物一覧

冬宮・寒櫻院・睦月(p3p007900)
秋縛

 血、ひっくり返れば手を繋げない。当たり前の現実に貌を向けた時、僕はどうしてもカミサマに抗えないのか。朝起きて昼過ぎて夜眠れば世界は健全に視える筈なのに、哀れにも小虫が渦を描いている。魔性の女か奴隷の男に振り回されても、様子を見ている己が憎たらしくて仕方がない。照明を弄って自分を証明し、赤舐ったと見做した結果は如何だ。世界の本質は如何藻掻いても塩気に近く、その真実を手繰るのはどん底に沈んだ無意味な皺々に違いない。何度も反芻した蛋白源は貴重でも稀でも頻繁でも乱雑でもなく、淡々とアンテナがくるくると笑っている。おそらく。価値観の相異が一本に現れて、表現された夢現は普段通りの落下地点に様変わりだ。戦勝祈願に湯漬けでも啜れば好いのに。彼等の存在は今でもべっとり、頭蓋の隅々に粘着して在る――五月蠅い。言葉通り蠅が鼻と耳から侵入したのだ。身体の中を走り抜く、異常な癖に快感的な『この』迷宮入りは、誰に伝えても正気ではないと叫ばれる程度の……残念でした。僕はあなたに何も願っていない。残念だったね。あなたは僕の事を視ていない。残念ながら。僕は一歩も動いてはいない。ごくり……爪を嘗めた。塩辛い……潮臭い……甘く感じぬ深みのようだ。頭が下で肢が上、そんないきものなぁんだ。
 反響しない。木霊しない。精々僕の締まった螺子に付属した、不安定な肉体と精神に影響を及ぼした『広義』だ。茫々と知れない暗澹に積もり重なった真っ白い、ひどく塞がる加減。それが塩だと示すならば、僕は混沌に感謝する他にない。何処の家系が齎したのか。何処の印が捺されたのか。瞳が無ければ覗き込む事も出来やしない。いっそ双眸を刳り貫いて飾って眺めれば愉しいだろうか。幼稚な小部屋に横たわった感覚は我に難く、ノイズの発生が一瞬遅れたようで……すくう。掬う。肌に触れたざらつきが染みる、沁みる痛みを憑けたならば、冷気や霊気は消するべきか。無くしたくない。失くしたくない。亡くしたら終いだと直感した――僕は何に執着しているのか。透明な不安が頭蓋の内を締め付け、眼前の出口を圧し出していく。行かないで。逝かないで。如何か、置いて往かないで。潜った先にも純白だ。壺の中も棚の中も檻の中も庭に等しく、大人達の狩り立てる言の葉が砂糖を混ぜている。ヤメテ止めて辞めて何故?
 窓の外に怪物なんて居やしない。扉の向こう側に化け物なんて居やしない。癒しを求めてさまよった、餓えた犬でも探せば良いのか。違う。現実逃避する場合は悲鳴を上げる『心』に問い掛けた後だ。痕を阻む事は出来ず、形容し難い貌が迫っている――不思議な事に恐怖は薄れていた――それは誰だった。認識出来ないのか視認したくないのか。塩に訊いたところで返事はない。何せ砂糖と解かれて謳ったのだ。カミサマも落胆して楽園か奈落に去った。病的なまでに指先が伸びて、延びて液晶画面の反対側だ。じ……じじじ……かちり。不意に飛び込んだ明滅に目眩くと起立するのは――予想通り。故の悪寒――※※ちゃん。なんでここに。会いたくなった。逢いたくなった。夢でも現でもわからない、良質な感情だけが膨張している。やあやあ――式云々は絶好調だとも。それは僕に対する言葉か。※※ちゃん自身への台詞か。兎に角。考える事は後回しだ。めいっぱい甘えても大丈夫。めいっぱい遊んでも大丈夫。あの女は絶望の底なのだから――可笑しい。だけど悪寒は治まらない。
 相手が心を閉じていたら見えない――穿るように覗き込んでも※※ちゃんの水槽が暴けない。嘘を吐いたのか。本当を隠したいのか。両方だろうと背を向け合った。視界に這入り込むのは塩だ。塩。塩。たまに砂糖。砂糖だけが瓶詰ならば良かったのに。※※ちゃんも望んでいるに違いない。新しい世界でも創ったら如何だい……知、ひっくり返り『書物』捲れる。ぱらぱらぱら――歪められた正体。
 ※※※※――塩とは生命の本質と誰かが綴っていた。本質を採るには如何すれば良い。簡単だ。元と為る生命体を――厭だ。嫌だ。思い出したくない。そんな思い出は夢に決まっている。和菓子だ。羊羹に塩ふって食んだ所為だ。妙な夢だな早く覚めてくれよお願いだから脳味噌冷めてしまう。頬を抓る腕を強く噛む頭を何処かに打ち付ける続ける――茫々は遂に狭まって、僕は僕の空間に閉じ籠ったのだ。そう思惟しないと今度は撃ってしまう。ぐらりと傾いた塩の山からころころ転げ落ちて、僕は迷子。手を差し伸べてよ。
 がばり――おはようの挨拶も無しに今日も僕は※※ちゃんと額を合わせる。もう欠けた部分は直せないけれど、悲しみも怒りも恐れも無くなった。有難く頂戴した本質だって、次は上手く調合出来る筈だ。蟲の囁きも獣の咆哮も心地良い上下左右不明浮遊で、命短し繋げよ僕。ようやく手を繋げた。元の位置に座れた……ころり眼球、僕は僕の塩も理解した。ごめんなさいごめんなさい……。

  • 塩と砂糖を混ぜるなんて完了
  • NM名にゃあら
  • 種別SS
  • 納品日2020年05月09日
  • ・冬宮・寒櫻院・睦月(p3p007900

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