PandoraPartyProject

SS詳細

遠くへ。

登場人物一覧

マール・ディーネー(p3n000281)
竜宮の少女
メーア・ディーネー(p3n000282)
竜宮の乙姫
ロジャーズ=L=ナイア(p3p000569)
同一奇譚

 世界は当たり前のように救われて。
 混沌は変わらぬ毎日を続けている。
 それは海の底に住む彼女たちも変わらずに。
 ここでこうして、変わらぬ毎日を過ごしている――。

「貴様、貴様等、何処かの西瓜の如く、割れない事を祈っておく」
 そう、ロジャーさんが言うわけなので、あたし、ことマール・ディーネーは、妹ことメーア・ディーネーと一緒に、ぐるぐるランドに来たわけなのだ!
「うーん、鉄帝、初めて来た気がするんだけど。
 なんかすごいところだね!」
 と、あたしが言うわけで、メーアはもまさに、目を丸くしていたの。
「ええと……ぐるぐるらんど、ですか……」
 むむむ、とメーアがそういうのは、鉄帝にある、グルグルランド、という遊園地の看板を見たからで、ロジャーさんはそこにあたしたちを案内したかったみたい。そういえば、前にどこかにお出かけしようね、って言っていたはず。
「そうだね~。メーアと、あたしと、ロジャーさんで、デートだ!」
 えへへっ、と思わず楽しくて笑ってしまう。ロジャーさんは相変わらずの表情で、
「デートとは異なる」
 とか言っていたけど、あたしは、あれは喜んでいる顔なのだと、よくわかっているのだ。ふふん。
「で・え・と・の・お・さ・そ・い、ありがとね! ロジャーさん」
「はい、デートのお誘い、ありがとうございます、ロジャーズさん」
 ふふふ、と笑うメーアは素直でよろしい。ロジャーさんがNyahaha、っていつものように笑っていて、アレは照れているんだな、ふふん。
「で、なにからのるの? お勧めは?」
 あたしがそういうと、ロジャーさんはいつもの様子で、うんうん、とうなづいてみせたの。
「良かろう。
 ここにはまず――グルグルがある」
「ふむふむ、それで?」
「それから、グルグルが。
 あちらには、なんとグルグルがある。
 そのむこうには グルグルがあり、北の方角にはグルグルがある。
 そのトンネルを抜けた先にはグルグルがあり、この売店の隣にはグルグルがある。
 それから――」
「もしかして、グルグルばかりの遊園地なんですか?」
 メーアが小首をかしげて言うのへ、ロジャーさんは胸をはって、頷いて見せる。
「無論――心ゆくまで、グルグルしていくが良い――」
 そういうのだから、あたしとメーアは、顔を見合わせて、それから笑ったの。
「えへへ、楽しそうだね!」
「そうですね……! あっちは、カップみたいなのに乗ってぐるぐるする奴がありますよ、お姉ちゃん!」
 そう言ってメーアが指さしたのは、なんだかコーヒーカップがグルグル回る奴だった。なんだか、べつのところでものったことがある! すっごくグルグル回る奴だ!
「お目が高い、と言おうか。
 アレはまさに、このグルグルランドの入門編――存分にぐるぐるするが良い」
「よし、アレに乗ろうか!」
 そう言って、あたしはメーアと、ロジャーさんの手を握った。
「ほらほら~、ぐるぐるするんでしょ? ふふーん、二人とも逃がさないからね~?」
 そういって、あたしはやっぱり楽しくて笑ってしまう。メーアもにこにこしていたし、ロジャーさんも、これは楽しんでいる、はず! 二人を引っ張って、あたしはコーヒーカップの遊具に乗り込んだ。貸し切りみたいなものなのかな? 他のお客さんの姿は見当たらなかったけれど、程なくしてコーヒーカップ、その台座って言うのかな、それが回り始めた。
「あはは、これでも充分グルグルじゃない?」
 あたしがそういうのへ、メーアは手すりにつかまって、笑いながら頷いた。
「そうですね……! すっごく早くグルグルしてますよ!」
「甘い。蕩ける蜂蜜のように甘いぞ、貴様等。
 本番とは、すなわちこれ」
 と、ロジャーさんが、カップ中央のハンドルに手を伸ばして、ぐるぐると回し始めた。すると、カップも連動して、ぐるぐると回り始める!
「あはは、そうそう、これ!」
「きゃっ……! え、えと、すごい回ってますね……!」
 メーアが驚いたよう目を見開いて、でもすぐに、手すりにつかまった。ロジャーさんがいつもみたいに笑いながら、カップをグルグルまわす。世界がグルグル回って、遊園地の風景も、グルグル回るみたいだった。
 時々……ううん、いつも、かも。ロジャーさんは、なんだか、グルグルとか、そういう不思議なことを言うなぁ、と、そのときに思った。もしかしたら、こういう、ぐるぐるした世界が、ロジャーさんが見ている景色なのかな、と、ふと思う。そうだと、ロジャーさんは、あたしのことも、グルグルに見えているのかな、とか。そうなら、ロジャーさんが、いつかまっすぐ見たときのあたしは、ロジャーさんが知っているあたしで居られるのかな、とか。なんだかそんな風に思う。
 たぶんそれは、グルグル回って、頭もこんがらがったみたいに、ぐるぐるしているから、そんな風に思ったのかもしれなかった。この世界は混沌、って言うのだけれど、まさにその名前の通りみたいに、グルグルの世界は混沌としているように見えた。だったら、ロジャーさんの世界は、毎日がグルグルで、楽しいのかもしれない。
「おっと――耐えたか、貴様等」
 そう、ロジャーさんが言ったときには、カップも、その下の台座も、止まっていた。メーアは、少しだけ頭をふらふらさせて、でも、楽しそうにくすくす笑っていた。
「すごいですね! 昔、海底の渦潮に巻き込まれた時みたいです!」
「あの時の方がひどくなかった? 方向感覚なくなったもん」
 えへへ、とあたしが笑うのへ、少しだけ驚いたように、ロジャーさんは言葉を紡いだ。
「――成程。存外に耐性があると見える」
「そうですよ? ふふ、これくらいは、です」
 メーアが胸をはって、そう言った。とはいえ、それはロジャーさんにとっては、プライドを刺激されたような、なんだかそう言うような気持ちだったみたい。
「ならば、良かろう――次なる遊具を案内しよう」
「やっぱり、それってグルグルの奴?」
「無論だ――覚悟するが良い!」
 nyahahahaha、と笑うその笑い声は、グルグルの世界にすごく似合う気がした。きっと、ロジャーさんのそれは、グルグルの世界では当たり前のことで、そんな風に、この世界では生きていけるのだろうなって、なんだか思った。
 あたしは、メーアとロジャーさんの手を取って、カップから降りた。それから、ゆっくりと遊園地を進む。
「んー……グルグル、って考えると、おかしとかジュースとか、飲まない方が良いかな……?」
「あー……さすがに、万が一、を考えると……ですよね」
 メーアが苦称する。「ふむ」と、ロジャーさんは唸った。
「……それは失念していた。無念であり残念だ。
 それもまた、遊園地の醍醐味といえよう。そこは改善点であろうか」
「そうだよ~。
 あとは、休憩エリアとか沢山欲しいよね?」
「そうですね。普通の方だと、目がぐるぐるしてしまいそうですから。
 ベンチとか、給水所とか……」
「待て、待て。
 今は客人だ。経営改善は今日でなくとも良いだろう」
 こほん、とロジャーさんは咳払い。
「だがおぼえておく。成程――とはいえ、グルグルすることがここの本懐であるが故にな?」
「ふふ、確かにそうかも。
 じゃあ、少し休んで、次の乗り物に行こうか! 次は?」
「うーん……あ、お姉ちゃん、あの、丸い乗り物はどうですか?」
「お目が高い。あれは、中央の円盤が回ると同時に、接続された丸い乗り物も回転するのだ。つまり、横と縦のグルグルである」
「なんかわからないケドすごい! のってみよ、メーア! ほら、ロジャーさんも!」
 そういって、あたしは二人の手を取って、次の遊具に向かう。ふふ、楽しいな。

 それから、三人で、いろんな遊具に乗った。どれもこれもグルグルしていたけれど、あたし達は、しっかりと楽しんで見せた。意外と耐性があったのに、ロジャーさんもびっくりしてたのかな? でも、さすがに何度もグルグル回っていくと、限界ってものが見えてきてしまった。最後の遊具から出てきたあたしとメーアは、グルグルってうか、ぐにゃぐにゃ、て感じで、ベンチにへたり込んでしまった。
「あはは、さすがに限界かも~」
「そうですね……さ、さすがに目がグルグルします……」
 メーアも苦笑してそう言うから、あたしとメーアは、肩を寄せ合って、ベンチに座り込んだ。ロジャーさんは、そんなあたしたちを、なんだか温かいものを見るような表情で、見守ってくれた。
「――満足したか、貴様、貴様等」
「うん。ロジャーさんは?」
「無論だ。今生の別れには丁度いい」
「根性?」
「……それでも構わん。つまり、お別れという奴だ」
 そう、ロジャーさんは笑った。
「貴様等! 私は『世界を滅ぼす』事に執心と成った。
 故に、貴様等、素敵な素敵な『呪い』を掛けてやる。
 乙姫に相応しい、愛おしい『呪い』だ。
 貴様等は目を回した儘、アイランドから放り出され、
 【私の存在を完全に忘れる】が良い!
 Nyahahahahahahahaha!!!!!!
 私は貴様等の事を決して、忘れないが!」
 そう、楽しそうに。
 でも、もしかしたら少し悲しそうに。
 ロジャーさんは、笑った。いつもみたいに。

 ――気づいたら、遊園地の外のベンチで、二人で座っていた。
「……あれ。遊び疲れて、寝ちゃってたみたいですね……」
 そう、メーアが目をこするのへ、あたしは頷いた。
「うん、そうだね。
 初めての鉄帝の遊園地だったから、びっくりしたでしょ?」
「そうですね……! シレンツィオのリゾートともまた違いました!
 また、一緒に来たいですね……お姉ちゃんと……あれ?」
 そう、メーアが小首をかしげるのへ、あたしはメーアを抱きしめた。
「うん。二人で、また来ようね」
 そう言って、あたしは目の奥のグルグルを見つめながら、忘れてなんてやるもんか、ふーん、ってあの人に思うのだった。


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