PandoraPartyProject

SS詳細

二つの花

登場人物一覧

セララ(p3p000273)
魔法騎士
ハイデマリー・フォン・ヴァイセンブルク(p3p000497)
キミと、手を繋ぐ

 世界が平和になったらどうするか、なんてのは決まっている。
 愛し合うものは平和を謳歌するし、その日常を大切に生きるものだ。
 セララとハイデマリーも、そんな『幸せな二人』で――混沌世界で生活する二人には、穏やかで平穏な日々が待っているわけである。
「うーん、新生活が始まるって感じがするね!」
 セララがソファに深く腰掛けて、はふ、と息を吐いた。ローテーブルの上には、作りたてのドーナツがあって、セララはそれを一つ、手に取ってかじってみせるのだ。
 ハイデマリーの手作りのドーナツは、恋人というひいき目があっても、おいしくて素敵なものだった。一口かじれば幸せの甘さが膨らんで、二口も食べれば胸もいっぱい。でも、そのくらいじゃ満腹にはならないので、たくさんたくさん食べてしまう。
「ふふ。ワタシのドーナツの腕もあがったようでありますね」
 そう、ハイデマリーはくすぐったそうに笑うのだ。ハイデマリーは、机の上に座って、何やら書き物をしていた。いつか、セララの世界へいって、セララの両親に会いたいと思っていて、そのために、まず手紙をしたためているわけだ。セララは、年末年始とかには、帰省する予定なのだそうで。
「マリーが選んでくれたソファも、すっごく座り心地が良いよ! ふう、ふかふかだ~」
「そうでありましょう? 鉄帝でも、あまり質実剛健していないお店を選びましたから。
 練達のものでも良かったのでありますが、運送になかなか時間がかかるとなると、こっちで買った方がよいでありますからね」
 鉄帝に新居を構えた二人は、先日、必要な家具などを買いそろえたばかりだ。スチーム式の家電とか、そういうもの。二人が選んで購入した家具は、そのまま、二人を温かく迎えてくれるようだった。
「ふふ、これから二人の生活が始まるとおもうと、なんだかドキドキしちゃうね!」
 セララの言葉に、ハイデマリーもドキドキしてしまうものだった。二人の生活というと、やっぱり結婚とかも視野に入れるべきなのだろうか。未だ恋人という形であるが、想像すれば胸が高鳴るというもの。結婚式では、セララに花嫁衣装を着てもらおう。うん、絶対に、と心に誓うハイデマリーであるが、こほん、と咳払い。
「今日の夕飯は、ワタシがつくるでありますからね」
「ほんとに!? いいの? でも、一緒に作りたい気持ちもあるなぁ」
 セララが、むー、と唸るのへ、ハイデマリーはうんうんと唸って見せた。
「たしかに、セララと一緒に……というのも悪くないのでありますが。
 まずは、ワタシの料理を堪能してもらいたいのであります。
 ほら、家庭の味……といいましょうか。
 これから鉄帝で暮らすわけですから、鉄帝の料理を好きになってもらいたいのでありますよ」
 ふふ、と穏やかに笑うハイデマリーに、セララもにっこにこの笑顔という奴だった。
「ふふ、楽しみにしている!
 そっかぁ、これからも鉄帝で暮らすんだものね。
 ラドバウの闘士としての活動も、もっと力を入れたいし……S級闘士にならないとね~!」
「ふふ、応援するでありますよ。
 ……しかし、なんだか懐かしいでありますな。
 といっても、あの戦いから未だ数ヶ月程度しかたっていないのでありますが――」
 ハイデマリーは思い出す。あの騒々しくも楽しかった日々のこと。戦いの日々と、楽しかった日常。思い返してみれば、あの毎日も悪くはない。
「……あ。
 でも、アイドルは! その。大分恥ずかしかったでありますね!」
 あはは、とハイデマリーが笑った。
「そう? マリー、すっごく可愛かったけれど?」
「セララにそう言ってもらえるのは嬉しいのでありますが、やはりワタシにはああいったものは似合わないでありますよ。
 ……そう考えると、もう、アイドルはやらなくていいわけでありますよね。なんというか、胸をなで下ろす気分であります」
 あはは、とハイデマリーが笑うのへ、セララは首をかしげた。
「え? またやるよ?」
「え?」
「アイドル。ほら、世界一周魔法少女アイドルツアー! やろう!」
「え? え?」
「ポスターとかももうお願いしてあるんだよね! というか、魔法少女アイドルとしての活動もやめないし、これからも忙しくなると思うよ~!」
「ええ~~~!? きいてないでありますよ!?」
 ハイデマリーが目をまん丸にするのへ、セララは、ふふー、と笑って見せた。
「そうだね~、言ってなかったからね。秘密にしてたんだよ。びっくりすると思って!」
「それはびっくりしたでありますが!
 え、というか、アイドル!? またでありますか!?」
 ハイデマリーが顔を真っ赤にして言うのへ、セララは、上目遣いで、小首をかしげた。
「……いや?」
「えっと」
「ボクとアイドルするの、いや?」
「それは」
「ボクは、マリーと一緒に、アイドルやりたいよ。
 ねぇ、良いでしょ……?」
 と、うるうると瞳を潤ませるので、ハイデマリーは、ぐぬぬ、と呻いてしまった。
「う、うう……いいでありますよ……」
 と、思わず言ってしまうので、ハイデマリーはセララには弱いのである。それはそうかもしれない。こんなに可愛い恋人の言うことを、無碍にはできないものだろう。まぁ、それはそれとして、ハイデマリーは大分チョロいのであるが。
「やったー! ねぇ、マリー! 世界一周ツアー用の衣装、もう用意してあるんだよね!」
「もう!?」
「うん! ほらほら、これ!」
 と、どん、と大きなプレゼントボックスをセララがテーブルの上に置いて、がさがさと中身を広げ始めた。ハイデマリーはめまいがするような気持ちだった。ひらひらふわふわきらきらの、魔法少女アイドル衣装が、そこにあったからだ。
「すっごく! マリーに合うと思う!」
 えへへ、とセララが笑うのへ、えへへ、とハイデマリーは些か引きつった笑みを浮かべた。着る。着るのか、これを……そして、世界一周……世界に、この姿をさらすと……?
「楽しみだね、マリー! ふふー、いろんなところにいこうね!」
 とはいえ。心から楽しみそうに言うセララの表情を見れば、少しばかりの……いや、とんでもなく大きいのだが……羞恥心など、飛んで行ってしまうと言うものだ。
「う、うう……分かりましたであります……どこまでも、行きましょう……!」
 と、そう、頷くことしかできない。だって、大好きな彼女の夢で、大好きな彼女の願いなのだから。それに、彼女が行くところに、その隣に、自分がいないなんて……そっちの方が、絶対に嫌だ!
「分かりましたであります!
 ワタシ、ハイデマリー!
 粉骨砕身の覚悟で、全国ツアー! 成功させてみせるであります!」
 そうなれば、もう自棄っぱちのようなものか。いやいや、これこそ愛のなせるもの、って事ではないだろうか?
「ふふ、うれしいよ、マリー!
 あ、これ、新曲の歌詞!」
「新曲!?」
「それから、新しいダンスの振り付けと~」
「振り付け!?」
「これからいっぱい、練習しようね!
 まずは、ラドバウからツアースタートだ!」
 おー、と片手をあげるセララに、ハイデマリーは、「お、おー」と力なく手を上げるのである。
 ラドバウのステージで、二人の華々しい全国ツアーの幕が上がるのはもう少し先の話だが、そのツアーがどうなったかは、別のお話。
 ただ、どんなトラブルがあったにしても、二人の顔にはいつも笑顔があったことを、記しておこう――。


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