PandoraPartyProject

SS詳細

旅人と商人と

登場人物一覧

ニーズ=ニッド(p3n000308)
ラダ・ジグリ(p3p000271)
灼けつく太陽

「すっかり強くなったな」
「そうかな……これでも経験をそれなりに積んできたから」
 構えていたライフルを下げ、そうラダ・ジグリが言えばニーズ=ニッドが緩やかに笑った。
 最初に出会った頃とそれほどに変わらない顔立ちの青年は精霊種であるからこその事だろう。
 トレードマークのフード付きのローブを風に靡かせる青年の隣に立ったラダの髪もはたはたと風に靡いていることだろう。
 文字通り混沌の危機であったあの戦いから既に数年の月日が経っている。出港前にポールスターでニーズを乗せてあげた馬車鉄道に彼が目を輝かせていたのも数日前の事だ。
 ラサの南部にある港町ポールスターを出たラダ達の商船は大陸に添って弧を描くような航路を進み、海洋王国を経た交易の後に天義へ向けた海路を進んでいた。
「ラダの商会は大きくなったね」
「そうだな……けれど、まだまだ大きくしたいと思っている」
「ふふ、ラダらしいや」
 真っすぐに船の進む先を見ていたラダにそうニーズが笑って言った。
「ひと先ずは寄港予定の港までは真っすぐ進む形になる。そろそろ昼食にしようか」
 随分と大人びてきたようにも感じる青年が気さくにそう言うのにラダは少しばかり時計を見てからそう言おう。そうすれば彼は少しだけ目を瞠ってこくこくとあの頃と変わらぬ子供っぽさを見せた。

「ニーズは天義には良く行っているのか? というか、今は何をしているんだったか」
 海洋産の海産物などを使った料理に舌鼓を打ちながらラダはそうニーズへと声を掛けようか。
 普段はポールスターの立地もあって覇竜や豊穣、それに豊穣へと進む途上の海洋の島々がメインの商売相手である都合上、ラダが天義へと向かうのはしばらくぶりの事だった。
「まぁ、それなりに行っている方な気がする……かな」
 ムニエルを咀嚼し終えて軽く飲み物を飲んだニーズは少し考えた様子を見せてから言う。
「今は何をするでもなく旅をしてるんだ。色々なところを見てみたいって、前から思ってたし。
 それにいろんな場所で古い物語とかを買ったりしてる。天義だとそう言うお伽噺とかが多いくて、お世話になってるんだ」
「へぇ、物語か……例えば?」
「例えば――」
 そう言って彼が語って聞かせてくれたのは天義の聖人に列された者の物語だった。
 ラダの知らないそれは町の人々の為に怪物を退治した英雄の話だった。その後も町に滞在してその人物は死ぬまで町の守護に務め、今も守護聖人に列されているのだという。
「へぇ、聞いたことのない話だが……」
「もしかしたら、イレギュラーズの活躍が脚色されてるのかも……」
「あるかもしれないな」


「着いたな。ニーズ、行こう」
 ラダは先に甲板から飛び降りて港に着地すると振り返り仰ぐようにしてニーズへと声を掛けた。
 すっかりと慣れた仕草で降りる姿は海洋でも見たが、時の流れを感じた。
(いや、そう言えば最初に会った頃から身軽ではあったか)
 もうすっかりと昔の事のように思っていると不思議そうにニーズが首を傾いだ。
「行こう。この辺の市場は私も早々見に来れなくてな、正直、かなりわくわくしてるんだ」
「……うん」
 コクリと頷く彼を連れて市場へと歩いていく。
 此の地で見られないような工芸品の類からこの辺りで採れる鉱物やら食材などが並ぶ。
 逆に運ばれてきた輸入物を取り扱う店などもあるが――ニーズの視線はとっくに一種類の物に集中してしまっていた。
「ラダ。これ見て、美味しいんだよ。保存も効くはずだから交易にありかも」
 手招きをする彼に続いてそこに行けばお菓子が並んでいる。
「確かに美味しそうだな、それも買おうか。店主、頼む」
 顔を上げてそう言ったラダに店主の女性は「ありがとうございます」と丁寧にお辞儀する。2人でそれに応じてから店を後にしよう。
 その後も美味しそうなご飯やお菓子に目移りする姿を見ているとあの頃と変わらない青年だなと、懐かしくさえ思うのだ。


「ダヴィット、久しぶりだな。元気してたか?」
「ヒッヒッ、商会長……えぇ、もちろんです。会長もお元気なようで何よりです。
 珍しいですね、会長自らがこの支部に来られるなんて」
 そう応じた青年は以前に会った時よりも皺が増えたように思えた。
「あぁ、もうそろそろ鉄帝や天義東部の航路で目玉商品でも欲しいと思ってな」
「なるほどなるほど、そういう事でしたら……おや、ニーズ様も?」
「あぁ、ラサを出る時に旅人をやってるっていうニーズに護衛を依頼したんだ」
「なるほど……会長に護衛は必要ないでしょうに」
「一人じゃもしもの時があるさ。
 それに久し振りに友人と会って時間があると言ったら話しながら来たいものだろう」
「ヒッヒ、それは全くその通りで」
 そう笑う彼と話している間、ニーズは黙々とお菓子を食べているか。
「食べ過ぎるなよ」
 そう念のために宥めればコクリと頷いた彼はそのままもう一口もぐりと食べる。


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