PandoraPartyProject

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美味しいコロッケを作ろう!~アークライト夫妻の場合~

登場人物一覧

ポテト=アークライト(p3p000294)
優心の恩寵
リゲル=アークライト(p3p000442)
白獅子剛剣

●本日快晴、畑日和
「空は快晴! 絶好の畑日和だな!」
「張り切りすぎて熱中症にならないようにな?」
 青いジャージを着て農作業用の鋏を持ったリゲル=アークライトに、日よけの帽子を被せながらポテト=アークライトが笑う。
 今日のリゲルは騎士の仕事はお休み。普段なら天義で貴族としての仕事をするけど、偶にはイレギュラーズとしも、貴族としての仕事も休んでのんびりと家族で過ごす日だ。
「それにしてもポテト農園は今日も沢山収穫出来そうだな」
 リゲルがイレギュラーズ、貴族として過ごしながら騎士として働いているように、ポテトも同じように農家として働いている。最も、最近は天義で貴族として過ごすことが増えたので農家として過ごす時間は減っているが。
「ここ最近畑で過ごす時間減っていたから、手伝って貰えて凄く助かる」
 ようやく和らいだ寒さとポテトのギフトもあって、畑一面青々と茂り、野菜や果物が数えきれないほど実っている。
「確かにこれを一人で収穫するのは大変だな」
 一畝分収穫するだけでも手間と時間がかかりそうだ。
 だけど今日は一人じゃないから大丈夫。
「良し、頑張って収穫しよう!
 大丈夫! 二人でならあっという間に終わるさ!」
 空のように晴れやかな笑顔を浮かべると、リゲルは早速野菜を収穫し始めた。

 パチン、パチンと鋏を動かす音と、ごろごろと収穫した野菜がかごの中で転がる音がする。
「本当に凄い量だな」
 一時間どころか、30分も経たずに収穫した野菜で収穫かごはいっぱい。一つ一つがずっしり重くて身が詰まっているのがわかる。
「見てくれポテト! こんなに採れたぞ!」
 かごいっぱいの野菜を見せれば、ポテトもその量に目を丸くする。
「もうこんなに収穫したのか。凄いいっぱいだな」
「ポテトのかごもいっぱいじゃないか! 流石ポテトだな!」
 驚くポテトが可愛くて、もっと驚かせたくなってちゅっと音を立てて唇にキスをすれば、ポテトは突然のキスに赤くなって固まる。
「な、にゃにをするんだ急に!」
「驚くポテトが可愛かったからつい」
 にこにこと笑うリゲルに、ポテトは赤くなったまま頬を膨らませる。
「もう! 遊んでいたらこの野菜たちを料理する時間が無くなってしまうだろう!」
「あははは。それは困るな。ポテトの作る料理楽しみなんだから」
 赤くなったままのポテトにもう一度軽くキスをして、リゲルは残りの野菜を収穫するために畑に戻っていった。
「不意打ちはずるい……」
 残されたポテトも、赤くなったままいっぱいになったかごの中身を移し、収穫のために畑に戻るのだった。


 何度か休憩を挟んで収穫を終えた二人の前には、まさに山のような野菜たち。
「お疲れ様!」
「リゲルもお疲れ様。凄く助かった、有難う」
 にっこり笑って冷たいお茶を差し出せば、リゲルは嬉しそうに笑って飲み干す。
「それにしても大量だな」
 新玉ねぎに新じゃが、インゲン、絹さや、春キャベツにニンジン、菜の花、苺。
 どれも一抱えもあるかごいっぱい詰まっている。
「おかげで色んな料理が作れそうだな」
 自分と同じ名前を持つジャガイモを持ち上げながら何を作ろうかと悩むポテト。
「リゲルは何か食べたいものあるか?」
 同じように野菜を突いていたリゲルを見れば、リゲルは青い目を楽しそうに輝かせた。
「コロッケが良いな!」
「コロッケ」
「あぁ! ポテトの作った揚げたてコロッケが食べたい!」
 揚げたてのコロッケ。
 熱々のそれに齧り付けば、さくりとした音と触感の後、ほくほくジャガイモの自然な甘さが口いっぱいに広がる。
 さらりと溶けるジャガイモの中から顔を出すのは旨味がぎゅっとつまった牛ひき肉。
 口直しにキャベツを食べれば口の中がさっぱりしてもう一つ食べたくなる。
「なら今日の夕飯はコロッケにしようか」
 目を輝かせるリゲルの期待を裏切るなんて出来るはずがない。
 今日の夕飯は揚げたてのコロッケに決定だ。
「良し、そうと決まれば準備しよう!」

●美味しいコロッケを作ろう!
 大量の野菜を抱えて家に戻ってきた二人は、早速コロッケ作りを始めた。
「まずはジャガイモの準備だな」
 二人並んで新じゃがを奇麗に洗ったら、スッと串が通るまで茹でていく。
 蓋をして、火が通るのを待つ間に今度は新玉ねぎのみじん切りだ。
 シャキシャキして甘味がたっぷりの新玉ねぎは、そのままサラダにしても美味しいけど、今日はコロッケの味を引き立てる名脇役になってもらおう。
「みじん切りなら任せてくれ!」
 ポテトは主婦として料理は慣れているが、切ることに関してはリゲルのほうが得意だし奇麗に切る。
「じゃぁ任せた」
「任された」
 笑いあいながらリゲルが玉ねぎをみじん切りにする間、ポテトはパンを削ってパン粉を用意する。今日はコロッケだから、細かくして軽く炒めて水分を飛ばしておこう。
 炒められたパン粉が奏でるさらさらとした音と、隣から聞こえるリズミカルな音が耳に心地よい。
「出来たよ」
 あっという間にみじん切りを終えたリゲルは、うっすらと赤くなった目元を誤魔化しながらボールに入れた玉ねぎを差し出す。
「有難う」
 代わりに濡らしたタオルを差し出せば、リゲルは軽く目元を抑えた。
 そうしている間に新じゃがに火が通ったので、二人であちあちと言いながら皮を剥いていく。
 ほっくりとした新じゃがはふわりと甘い香りがして、それだけで食欲をそそる。
「新じゃがの味見はできるのかな?」
 悪戯っぽく笑って冷蔵庫からバターを取り出せば、ポテトは苦笑しながら食べやすいサイズに切ってくれる。
 熱々の新じゃがに、黄金のバターが溶けて艶やかに彩る。
「新じゃがうまいな!」
「ほくほく感がたまらないな」
 二人して笑いながら味見を終えると調理再開。
「ジャガイモを潰せば良いのかい?」
「あぁ、結構力がいるし、リゲルにお願いしてもいいか?」
「もちろんさ! ポテトは指示や味付けを頼むよ。
 コロッケパーティーの行く末はポテト司令官の手腕に掛かっているぞ!」
 なんて敬礼しながら楽しそうにいうから、ポテトも笑いながら答えた。
「ほくほくコロッケのために尽力を尽くそう」

 楽しそうにジャガイモを潰すリゲルの横で、ポテトはフライパンに油を広げ、玉ねぎのみじん切りを炒めていく。
 白い玉ねぎが徐々に透明になっていくのは見ていて楽しい。
 玉ねぎが透明になったらそこに牛ひき肉を加えて、色が変わるまで炒める。
 ひき肉の色が変わったら塩胡椒で味を付ける。
「出来たか?」
 火を止めジャガイモを見ると、少し粒が残ったマッシュポテト状態になっている。
「全部潰したほうが良いかな?」
「いや、せっかくだしほくほく感を生かそう」
 炒めたひき肉をジャガイモに混ぜればコロッケの中身は完成だ。

 ボールいっぱいできた中身を見て、ふとリゲルが菜の花を取り出した。
「コロッケに入れたらどうかな?」
 わくわくとした眼差しに、ポテトはすぐにお湯を沸かす。
 菜の花入りのコロッケなんて、春らしくて考えただけでうきうきする。
 塩を少し入れて茹でた菜の花は鮮やかな緑。それを冷水でさっと冷やせば奇麗な色が保たれる。
「リゲル、粗みじんぐらいに切ってくれるか?」
 このまま和え物にしても良さそうだけど、今日はコロッケパーティ。コロッケの中に入れて菜の花コロッケにするのだ。
「よし、任せてくれ!」
 菜の花をリゲルに任せたポテトは他にもコロッケに使えそうな物はないかと冷蔵庫の中を覗き込む。
 お昼の残りの肉じゃがと、小振りのカボチャ、缶詰のコーンとカレー粉。
「あとは肉じゃがコロッケにカボチャコロッケ、コーンクリームコロッケとカレー風味のコロッケでどうだ?」
 肉じゃがコロッケは少ししかできないけど。と加えるポテトに、リゲルは「種類豊富なコロッケパーティになりそうだ」と笑顔を見せた。

 肉じゃがは残っている具材を刻んで、茹でたジャガイモを足す。
 味付けは肉じゃがにしっかりついているし、煮汁をジャガイモが吸ってどこか懐かしい、優しい味になる。

 カボチャは茹でて潰して、塩胡椒で炒めた玉ねぎと鶏ひき肉と混ぜる。そこに少しバターを加えると、風味が増して美味しくなる。
「ノーラが喜びそうだな」
 カボチャの甘味を生かしたコロッケは、子供が喜ぶ逸品だ。
「なら、もっと喜ぶようにしてみるか?」
 にやりと笑ってチーズを取り出せば、リゲルも楽しそうに笑った。
「チーズ入りは確かに大喜びしそうだな!」
 子供は中にチーズが入っていると喜ぶことが多いのだ。

「コロッケは玉ねぎを沢山使うんだな」
 なんてリゲルが呟く。今日だけでいくつ玉ねぎを消費しただろう。
 みじん切りにした玉ねぎとコーンをバターで炒め、玉ねぎが透明になったところで小麦粉を入れる。
 だまにならないように粉っぽさがなくなるまで炒めたら、少しずつ牛乳を足して全体を馴染ませていく。
「随分もったりしてるな」
「冷やしたらもっとしっかりするぞ」
 作り方はホワイトソースと同じだけど、今回はコロッケなのでかなり牛乳は控えめ。
 塩胡椒とコンソメで味を調えたら一度バッドに移して冷ます。

 カレー風味は簡単だ。すでに作ってある中身にカレー粉を混ぜるだけ。
「時間があればひよこ豆を戻して入れたけど、今日は省略しよう」
 その代わり、小さく切ったチーズを混ぜて。


「こうも種類が沢山あると、揚げた後何コロッケか分からなくなりそうだな」
「何が当たるかを楽しむのも良くないか?」
 二人笑いながら、沢山作った中身を成形していく。
 はじめはオーソドックスな小判型だったけど、気が付けば円形や俵、星型、チーズ入りのまんまるも出来ていく。
「チーズ入りはまんまるだからわかりやすいな」
「コーンクリームも俵型だから、ノーラがこの二種類ばっかり取らないようにしないとな」
 ぱっと見で分かりやすい子供向けばかりでなく、他も愛情たっぷりなので食べてほしいと思う親心だ。

 小麦粉、卵、パン粉を付けたら準備は完了。
 そうしていたら遊びに行っていた娘が帰ってきたので、仕上げに取り掛かる。
「リゲル、済まないがもう一仕事頼む」
「千切りで良いのかい?」
 春キャベツを手渡せば、それだけでリゲルはポテトが何を求めているのか理解する。
「あぁ、揚げたてコロッケには千切りキャベツが必須だからな」
 熱くなった油にパン粉を落とせば、じゅっと軽やかな音がはぜる。
 さぁ、コロッケパーティまであと一歩!

●美味しいは幸せ
 自家製ソースをかけた揚げたて熱々のコロッケを齧れば、サクッとした衣とほくほくのジャガイモの旨味が口の中いっぱいに広がる。
 はふはふと熱さを逃がしながら噛んでいくと、牛肉の旨味が顔を出し口の中で交じり合う。
 衣の香ばしさとジャガイモと牛肉の旨味を堪能した後、添えてあるキャベツの千切りで口の中をさっぱりさせれば次は何を食べようかと悩んでしまう。
 娘は甘いカボチャコロッケとコーンクリームコロッケに目を輝かせている。
「美味しいかい?」
 幸せそうに嚙り付く娘に聞けば、娘は満面の笑顔で頷く。
「朝から頑張った甲斐があったな」
「あぁ! 美味しいコロッケに二人の笑顔で最高の夕飯だな!」
 野菜の収穫からコロッケ作りと大忙しの一日だったけど、美味しい愛情たっぷりのご飯と家族の笑顔に頑張った甲斐があったと心が満たされる。
「お、これはカレーコロッケか」
 円形のコロッケはカレー風味で、少しぴりっとしたカレー味の中にとろりとしたチーズが絡まって大人も楽しめる。
 甘くて美味しい春野菜のスープで舌を休めたら、次はどれを取ろうかとワクワクする。
 リゲルがどれにするかと見ていたら、娘が星型のコロッケをリゲルの取り皿に乗せた。
 お星様といえばパパだから! と笑顔を見せる娘に、リゲルは嬉しくなってお返しにまんまるコロッケを乗せる。
「ノーラ用に猫型を作れば良かったな」
「今度挑戦してみよう」
 他愛ないことで笑いあいながら齧ったコロッケは、優しい味の肉じゃがコロッケだった。

「デザートに苺があるからな?」
 そんな言葉を聞いたら、お腹にその分の余裕を残しておかなければと思ってしまう。
 でもコロッケもまだ食べたいと悩む娘を見ると、嬉しくて幸せな気持ちになる。
「幸せだな」
「あぁ、幸せいっぱいだ」
 賑やかで幸せな時間。
 愛情たっぷり、美味しさと幸せいっぱいなコロッケパーティの終わりはまだ先のようだ。

  • 美味しいコロッケを作ろう!~アークライト夫妻の場合~完了
  • NM名ゆーき
  • 種別SS
  • 納品日2020年04月12日
  • ・ポテト=アークライト(p3p000294
    ・リゲル=アークライト(p3p000442

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