PandoraPartyProject

SS詳細

面白過ぎた女

登場人物一覧

ヴェルス・ヴェルク・ヴェンゲルズ(p3n000076)
麗帝
エッダ・フロールリジ(p3p006270)
フロイライン・ファウスト

●混沌の『終わり』
「何だかな――」
 ゼシュテル鉄帝国――混沌随一の武の国の武骨な玉座で皇帝・ヴェルス・ヴェルク・ヴェンゲルズ (p3n000076)は溜息にも似た言葉を吐いた。
「平和はいい。終焉がバイバイしたのは幸いだ。だが、これは」
「余りに――退屈だ、ですか?」
 玉座の隣に侍るように立っていた一人のメイド――エッダ・フロールリジ (p3p006270)が言葉を継いだ。
 本来であれば皇帝とメイドのやり取りとしては万人が有り得ないと眉を吊り上げるような不遜なやり取りではあったが、当のヴェルスは気にしない。周りには他の供もおらず、広い皇帝の玉座の間にはたった二人だけが並んでいた。
「そう。退屈だ。あんまりにも、退屈だ。
 こんな事なら――幻想ともっとバチバチやり合っておけば良かったかな?」
「はぁ」と露骨な溜息を吐いたエッダに構わず、ヴェルスは余りにも気ままな事を言った。
 混沌中央部に位置する古豪レガド・イルシオンがゼシュテル鉄帝国にとっての宿敵であった事は周知の事実だ。
 しかしヴェルスの言う通り。幸か不幸かこの世代で歴史は変わってしまったのだ。
 ……いや、それは多くの人間にとって。特に無辜の民にとって。理想と現実の間に大いに揺れた、このフロールリジの令嬢にとっても。
 余りにも良い変化であると断言出来よう話である。

 ――世界が滅びるらしい――

『神託』はゼシュテルにおいてはそこまで大きな意味を持たなかったのだが。
 結果としてヴェルスが先に言った通り終焉は訪れ、神代から続いた因縁の糸は解かれたのだ。
 最終的には混沌にある全ての国が力を合わせ――原罪の魔種とそれに連なる勢力を破り、終局的結末Case-Dを回避したのは記憶に新しい。
 ……いや、記憶がくすんでも。時間が経っても、こればかりは忘れる事が出来ないだった。
「……世界を救ったのですから、もっと覇気のある顔をして下さいよ」
「人生ってのは思い通りにいかないモンだろ? 
 可愛げの無い有るジト目をして自身を眺めたメイドにヴェルスは少しだけ愉快そうな顔をした。
「世界を救って平和にしたら――イケてる戦いとは縁遠くなっちまう、なんてなあ。
 まあ、そりゃそうだって言えばそりゃそうかも知れないが――懐かしいな、バルナバスが。あの野郎、勝ち逃げしやがって」
「……………よりによって。ここであの事件を持ち出すでありますか、貴方は」
 あんまりにもあんまりなにエッダの目が重く座る。
(一体全体、あの時! どれだけ! 自分は心配をしたのかと!!!)
 ゼシュテル鉄帝国を揺るがした魔種バルナバスの強襲はこの国で最も重要で、最も不合理な『皇位継承戦』から始まったものだ。
 ヴェルスの敗北と、その後起きた国中の大混乱と、最後の最後で絵になる形で再参戦したヴェルスにはエッダでなくても……なる全ての特別事情を考慮しなくても、一発ぶん殴っても許されそうな理由に足ろう。
(そ、れ、を! 言うに事欠いて!!!)

 ――この間、エッダの表情は鉄面皮の如く微動だにしていない。

 精巧な人形のような鉄のメイドは内心で青筋を立てながらも未だ何か退屈そうに喋っている自らの主人を見つめていた。
「そんなに退屈なら――新たに何か面白い事でも探せば良いではありませんか」
「……ん?」
「放浪の類以外ならば認めなくもありませんが」
 コホン、と咳払いをしたエッダは内心で苦笑する。
 皇帝相手に自分如きが認めるも何もないものだ、と自嘲した。
 フロールリジは名家だが、自分がここに居るのはヴェルスの酔狂の結果に過ぎない。
 大層モテるが、名実共に酷く女嫌いの気のある彼は通常ならば身近に女性を置くような事はしないのだが――
(――一体何を考えているのだか)
 気まぐれは承知だ。どうせこんなもの『何でも無い』。
 分かっている。分かってはいるのだが――どうにもざわめく感情はエッダを余り冷静にさせてはくれなかった。
 だが、それは抑え込む。抑え込まねばならない。
 彼女は本棚の後ろに大量の少女小説を隠すような乙女だが――ヴェルスというこん畜生は女らしい女を決して好みはしないのだから。
「流石に今ほっつき歩きやしないよ。まぁ、武者修行ってのは現実的な択じゃああるが。
 バイルの爺さんもザーバのおっさんも……兵達も。世界中の復興に大忙しじゃないかい。
 ……爪痕はこの国だけじゃない。幻想も、天義も。力仕事が得意なうちの連中は欲してる。
 臣下をあっちこっちで働かせといて、頭が放浪したんじゃ流石に、な?」
「……分かっているではありませんか」
 エッダは安心し――同時に勝手に憎まれ口を叩いた己の唇を軽く呪った。
 可愛い女ではいられまい。例え相手が望んでいなかったとしても――少し位は素直にモノを述べても許されように。
「だが、お前の話は確かに道理だ」
「え……?」
「楽しい事がなくなった。今ここでどっかを放浪しようってのも無しだろ?
 それなら、今出来る――何か面白い事を探すのが一番じゃないかい?」
「……チェスのお相手でも務めましょうか?」
「お前、強いから辞めとくわ」
 ヴェルスは冗句めかして笑った。
 確かに彼とエッダとの対戦成績はかなり分が悪い。
「……では。私が帝位に挑戦しましょうか」
「――――」
 エッダの台詞にヴェルスが少し驚いた顔をした。
「お前ってそういうタイプだっけ?」
「いえ、まったく。私は自分を弁える主義です」
 メイドと呼ばれると不機嫌な顔をする、何とも不具合で難解なメイドは真正面からヴェルスを見た。
 視線と視線が絡み合えば、言いたい台詞も上手いようには出てこない。出てきや、しない。
 ただ――もう。こんな機会でも無いと言えないから、この部屋には二人しか居ないから。
 腹に覚悟を溜めて、小さな体に気合を入れて――エッダはここをに定める――
「私は――」
「――そうだな。お前、俺と結婚するか?」
「――――」
「――――――――」
「――――――――――――」
 ……今、何と言いやがったか?
「……は、はああああ!?」
 エッダの鉄面皮が初めて崩れた。何とも言えないとんでもない顔を見せている。
「お前が言ったんだろう。した事なくて、新しくて、面白いヤツ。
 言い出しっぺなら責任位は取るんだろう?」
 立ち上がったヴェルスが指でエッダの顎を持ち上げた。
 エッダは派手な『ざざざざ!』と効果音を立てながら――赤い絨毯を焼き切る勢いで後退している。
「な、な、な、な……」
「何を、じゃねえよ。お前本当に面白い女だな。
 俺だって人間だぜ。何が悲しくて気も無い女を近くに置くのさ」
 あわあわ、と口が面白い形になっている。
 くっくっと人の悪い笑みを見せた麗帝は思わず構えを取ったエッダを楽しそうに眺めている。
 確かに、確かに。帝位挑戦は――その、こう、何だ。特別な意味を帯びていないとは言えなかったけれど……
 どうして、よりによってこんなタイミングで不意を打つのか!?
「――あ、そうだ」
 ヴェルスはエッダの様子を窺い思い出したように言った。
「お前、ロマンチックなのが好きなんだっけ。王子様が姫に跪くみたいなヤツ」
「――決闘です! 決闘を要求しますッ!」
 面白い――面白過ぎた女の悲鳴が宮殿を揺らす。
 世界は、世は全て事も無し。混沌は今日も――ずっと。きっと、たっぷりと『幸福』なままだった。

  • 面白過ぎた女完了
  • GM名YAMIDEITEI
  • 種別SS
  • 納品日2026年01月08日
  • ・エッダ・フロールリジ(p3p006270
    ・ヴェルス・ヴェルク・ヴェンゲルズ(p3n000076
    ※ おまけSS『抗議するであります』付き

おまけSS『抗議するであります』

「抗議するであります!」
「聞こうじゃないか」
「どうして私の趣味秘密を知っているでありますか!?」
「知っていると言うかねえ」
「言うか……?」
「勘?」
「……は?」
「お前の緊張感やら雰囲気やらね。見ていたらそんな気がしてさ。
 折角だからカマをかけてみただけって言うかね。
 そしたらお前、顔真っ赤にするもんだから。いや、正直面白かったよ。最高に」
「……」
「どうした? エッダ」
「……女らしい女は御嫌いだったのでは?」
「お前ってさ」
「はい?」
「タイプだけで人を見る?」
「……………」
「好きになったら――そいつが一番になったりしない?」
「……………………」
「なあ、エッダ。答えろよ」

(壁ドン)

「……っ、っ、っ……!」
「例えばこんな感じとか?」
「――やっぱり、決闘を! 要求! するであります!!!!!」

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