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僕等は奇跡を知っている
登場人物一覧
●アイテム情報
アイテム名:僕等は奇跡を知っている
フレーバー:あの日交わした約束と、あの日見せてくれた笑顔と、沢山の思い出を知っている。それが奇跡を起こすことを、僕等はちゃんと知っている。
●エピソード
プレゼントを交換し合った日から暫く後、二人はキャンプへと出かけた。
揃いのマグカップを手にして。
満天の星空の下、キャンプファイアを囲む二人はいつものようにコーヒーを淹れ、暖かな茜色に照らされながら語り合っていた。
「最後の戦いが、もうすぐやってくるのね」
アルムから話を聞いていたステラは、コーヒーカップを受け取りながらそんな風に呟く。
あなたは行くの? なんて聞く必要はなかった。
その場所にはあの子が、混沌のステラがいるのだから。彼女を救いに行くために、約束を果たしに行くために、きっと彼は行くのだろうから。
「『大いなるもの』は強大よ。それは破滅や滅びの代名詞。地上に落ちたなら、もう誰も止めることなんてできない。そのはずだけれど……」
ステラは祈るように、あるいはどこか縋るようにアルムを見つめた。
「あなたなら……いいえ、『みんな』ならきっとできる。そんな風に思えるの。不思議ね、こんな気持ちになるなんて」
「ううん、不思議じゃないよ。だって……」
アルムは目を閉じてコーヒーを口にした。
独特の苦みと甘みが口の中に広がって、そして暖かな感覚が身体の中に流れ込んでくる。
ほっとした気持ちと、安らかな気持ち。それらがない交ぜになって、ステラがつたない手付きで初めて淹れてくれたコーヒーの味を思い出させる。
「僕等は知っているんだ。これまでいろんな危機を、窮地を、乗り越えてきた。それは奇跡と言えるほどの勝率で、僕等はそれでも戦って……そして勝ってきた。
僕等は知っているんだ。奇跡の意味と、それを引き寄せる力を」
優しく語るアルムの言葉に、ステラもまた目を瞑った。
「そう、ね……あなたはずっと戦ってきた。そして、立ち向かってきた。
滅びを見守るはずのわたしが、奇跡を信じてしまうほどに。
だからきっと次も、奇跡をもって帰ってきてね。
そして、あなたの世界を私にきっと見せて」
「僕の……世界を?」
はたと顔をあげると、ステラの微笑みが迎えた。
「ええ、あなたの世界を。きっと、わたしも行くから」
それは願いであり、奇跡を望む声だった。
たき火の音が、静かにはぜた。