PandoraPartyProject

SS詳細

ごーだせんせいのたのしいとれーにんぐ☆

登場人物一覧

ビューティフル・ビューティー(p3n000015)
クソザコ美少女
郷田 貴道(p3p000401)
喰鋭の拳
ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)
祈りの先

●おなかをつまむと何が起こる? そう、絶望
『オーマイガッ! 見てくれよキャシー、ハンバーガーの食べ過ぎで僕のおなかがダブルバーガーさ!』
『安心してボブ! コレを使えばダブルバーガーともおさらばよ!』
 露天で繰り広げられる実演販売。
 ノースリーブの女とアメリカ人(?)がHAHAHAしながら腹筋を割に割っている風景…………から、カメラさんしょっと右に寄ってもらっていい? そうそこ、店と店の間にあるあの溝みてーなとこ。
「ヴェ~…………ック」
 カラッポになったウォッカの瓶を抱きかかえ、足を壁にそって上にして、溝にぴったしはまり込むカンジで眠るヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤの姿がそこにはあった。
 わかるかなあ。明け方って妙に冷えるからこういう風の通らないところにハマりたがるんだよ酔っ払いって。あと血の巡りがおかしくなってるからか足を高くあげたがるのね。
「う゛ぁ……ヴァレーリヤ様……一体全体なぜこんなところでテ〇リスブロックごっこを?」
 それもう説明したよね。
 肉まんがいっぱい入った紙袋を抱え、ビューティフル・ビューティーが溝んとこをのぞき込んでいた。
「むにゃあ……もう朝ですの?」
「午後の四時ですけれど」
「う゛ぇ~い……」
 ヴァレーリヤはのそのそと溝のとこから這い出すと、空瓶を杖代わりにしてよっこいしょと起き上がった。
「朝日がまぶしいですわ。水くださらない」
「は、はい……」
 ちょこちょこと近くの売店から水の入ったボトルを買ってきたビューティー。
 ボトルを受け取ると、ヴァレーリヤはそれを手元でぐるぐるーって回転させて水を渦巻き状にするといっきに口の上で傾けた。
 ざっぱーと勢いよく流れ落ちる水。文字通り浴びるようにがぶ飲みするヴァレーリヤ。
 ふいーと目の下に三本線のクマめいたものを作って、路上を見ると……。
『この通り、セクシーボディが手に入るのさ!』
『ワーーーーオ!!!』
 実演販売のアメリカ人(?)が割れた腹筋と豊かなおむねと非常識な身長をみせびらかしていた。
 ビューティーからシャッて奪ったにくまんを咥えたままその様子をじーっと見つめるヴァレーリヤー。
「う゛ぁ、ヴァレーリヤ様……?」
「セクシーボディ……」
 ヴァレーリヤの頭上に空想の雲がもくもくした。

 もくもくもく(空想が広がる音)
『オーッホッホッホ! 私こそがこれからの革命派筆頭、セクシーダイナマイト聖女ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤですわ!』
 身長が2メートルになったヴァレーリヤが割れに割れた腹筋とHカップのおむねを晒して高笑いし、人々がハハーって言いながらひざまずき黄金の輝きのなかでシャンパンタワーが注がれていくさまが広がった。

 昨今続いた疲れと重責、あとあれかなあ一晩のんだくれたせいの二日酔い? そんな頭の中で、『やるしかありませんわ!』と脳内ヴァレーリヤが可決スタンプをダァンした。
「やるしかありませんわ!」
「なにをですの!?」
「アレをですわ!」
 ビッと指さしたのはさっきの実演販売コンビ。
『この郷田式トレーニングメニューをこなすだけで君もセクシーボディだ!』
『ワーーーーオッ!!』
 ビューティーはその時点で眉間に皺を寄せていたが、ヴァレーリヤはすかさず彼女の肩をがしりと掴んだ。
「一緒に行きますわよ」
「なぜわたくしがっ!?」
「一人で行くとなんだか怖いからですわ」
「正直!?」
「肉まんあげますわ、ほら!」
 ヴァレーリヤはビューティーの口に肉まんをガッてやると、わーい行きますわーって秒で釣られたビューティーを引き連れていざ郷田ジムへと歩き出したのであった。

●今すぐ痩せたい? 三日海を漂流するのとナイフで肉を切り落とすのどっちがいい?
 郷田ジム。
 知る人ぞ知る拳の殿堂郷田貴道が運営するジムである。
 なんかンなかにひっそりとたっている屋敷だと聞いていたが……。
「ゼヒーッ! ゼヒーッ! ハッハッハッハッ……おかしいですわ。もうこれ森っていうか山ですわ。山のそうとう高い所のアレですわアレなんていいましたっけ」
「峰」
「それですわ!」
 顔を真っ青にしてゼーハーいったヴァレーリヤが、白目を剥いたビューティーを背中に担いで門の前に立っていた。
 拳の『型』みてーなのがついた両開きの鉄門。
 瓦屋根で塀を仕切った屋敷は、控えめに言って文明から引き離されていた。
 実際さっきから虫のジージーいう声や、名前もわかんない鳥のギョッギョッギョていう鳴き声がしている。
 地図がなかったら普通に遭難していたことだろう。
 というか、地図があっても軽く遭難しかけた。
 扉をがーんがーんと叩く。
「ごめんください! ごめんくださいまし!」
「YOU、どこを見ている上だ」
 やけによい発音で、ヴァレーリヤの頭上より声がした。
 ハッとして見上げると、膝んとこでびりびりになったジーパンと強制的にタンクトップ化した白シャツというワイルドすぎる格好のボクサー……いや、野生のボクサーがそこにはいた。
「郷田さん!」
「その通り」
 巨木の枝に立っていた郷田は直接飛び降りると、大地を殴りつけることで着地した。
「な、なぜあんな高い所に……」
「ジョギングだ。シャドウをしながら走ると、飛ぶだろう?」
「はい?」
 ヴァレーリヤの脳内で拳をシュッシュしながら走る郷田の上下に気流と揚力が発生する図式が浮かんだ。なにそれ。
 まあよい。彼がどうかしてるのは今にはじまったことではない。
「え、えっとわたすく」
「HAHAHA! みなまでいうな!」
 実演販売コンビを上回るアメリカンな笑いと圧でヴァレーリヤを黙らせると、顔の前で拳をギュッてやった。
 あっごめん効果音間違えた。
 ギュボゴワッ! である。
 握力と筋力がヤバすぎるひとがパーの状態から急速に拳を握ると握り混まれた空気がそのまま圧迫されて拳のスキマから吹き出るんだけどそれが軽くジェットっぽくなるんだよ。スライムとか握りつぶすと感覚わかるよ。
「ミーの地獄を味わいに来たんだな?」
「えっ」
「まずは走ろう。トレーニングは走り込みに始まり走り込みに終わるのさ。おっとすまないその前に……」
 ニッと歯を見せて笑う郷田。
 ビビるヴァレーリヤと今になってやっと目を覚ましたビューティー。
 郷田は『オープンセサミ』と囁きながら門を殴りつけると、巨大な鉄の扉がグゴゴゴゴって音をたてて開いた。
「着替えだな!」

●人間をやめて競技会からはみだした人が世界からもはみ出したらこうなる
 赤ジャージを着せられたヴァレーリヤとビューティー。
 二人はニノキン像みてーな石の薪を背負った状態で、舗装もされていない土むきだしの獣道に立たされていた。
 ニノキンってのは薪をかつぎながら歩いて足腰と脳を同時に鍛えた的なアレですけど石でできた薪を背負って歩いていたわけじゃあないぞ。――とか言ってる場合じゃねえ。
 二人の後ろに立った郷田が、拳を握って笑った。
「今から二人にはこの山を一周してもらう。なあにゆっくり走るだけだ。だがもし俺に追いつかれたら……」
 郷田は笑顔のまま、そしてこちらを見たまま、パァンて拳だけを動かした。
 一説にはムチを放つパァンというは音速を超えた際に生じるソニックブームであるという。いま郷田が出したパァンもそれだよ。
 そしてそれこそムチのごとく一瞬見えなくなった腕が再び見えた……かと思いきや、すぐそばにあった木の幹がボッと音をたててえぐれ、ゆっくりと倒壊していく。
 一本だけではない。
 三本くらいの木が一斉に脇をえぐられ近い順に倒れていったのだ。
「こうなる」
「ヒイイイッ!!」

 郷田ディヴィジョンでは『ゆっくり』が時速20キロ程度をさすらしい。ちなみにこれママチャリめっちゃ漕いでるときの速度ね。
「HAHAHA! 遅い遅い! スロゥリィだ! 亀のほうがいくらか俊敏だぞ!」
 シュッシュッてしながら後方よりその速度で迫る生物を想像してほしい。
 あっごめん効果音が違った。
 ゴボズガンってしながら追いかけてくる戦車だよ。
 拳で放った空気砲が斜め上の枝や幹を破壊しては山の景観をちょっとずつ破壊していくのだ。
 当然、ヴァレーリヤとビューティーは死にたくないっていう一心で走り続けた。
「安心しろ! ミーの手を離れるのはヴァレーリアとビューティーが魅惑の『ボンキュッボン!』を手に入れた時、もしくはトレーニングの過酷さで死んじまった時だけだ!」
「死っ……死にたくないですわ! こんなところで死んでたま――あっ」


 枝に躓いてうつ伏せに転倒するビューティー。
「止まるな。止まることは死を意味する」
「イーーーーーーヤーーーーーーー!!」
 背後で『ボギャアボリボリボリ』っていうもう想像もしたくねえ音が聞こえ、ヴァレーリヤは走った。振り返らずに走った。
 ああ、こんなに走ったの、いつ以来でしょうか。
 生まれて初めてかもしれませんわね……。
 フフ、涙が出ちゃう。だって命の危機だもん☆

●特訓という名の地獄
 郷田ジムのトレーニングは地獄を極めた。
 いまだ冷たい夜の山をジャージ姿で行軍する訓練や、熊との死闘や、毒蛇を噛みちぎるさまなど言うに及ばず、滝に流れてくる丸太を避けたり針みてーに尖った岩山の上で片足立ちしたりひたすらジムのワックスをかけたり磨いたりしたり、おこたにはいってミカンをあーんしたり、枕を向き合わせてお布団にはいって好きな人を言わせ合ったり、浜辺を裸足で追いかけ合ったりした。
 後半どうみてもヴァレーリヤとビューティーのサービスショットだったりその合間合間に挟まる屈強な郷田が絵面を破壊(※)していたが、おおむね地獄の特訓であった。
(※『ユー、好きな人いる?』って言いながらお布団に両手で顎肘ついてる浴衣の郷田を想像してピンの誘惑に耐えよう)

「さあ、今日こそラストトレーニングだ」
「「ら、らすと……?」」
 やつれにやつれたビューティーとヴァレーリヤが、ラストという単語にぱあぁっと顔を明るくした。
「やりましたわ! ここまで幾多の苦難を乗り越えたわたくしなら、たとえクロコダイルとの死闘だろうが雪山行軍だろうがなんだってやってみせますわ!」
「そうですわ! 生き延びましたわ! わたくしたち、生き延びたんですわ!」
「そうか。よく言った!」
 郷田は羽織っていたジャケットを脱ぎ捨て屈強な上半身をむき出しにすると、両手の拳を『ボッ』て握って見せた。
「ミーと死闘(スパーリング)だ!」
「「死にましたわーーーーーーーーーーーーー!!」」

 両目をこころなしか赤く光らせ、歯を見せて笑いながら顔面めがけて拳を繰り出してくる郷田を是非ご想像いただきたい。
 本当にそのまま頭を動かさずにいたら次の瞬間身長が30センチほど縮むので、ヴァレーリヤは『ぬぎゃー!』て言いながらブリッジした。
 顔のすぐ上んとこを抜けていった空圧がそのまま砲弾となり、ずっと後ろの樹木を粉砕していく。
「どうしたヴァレーリヤ。かかってこないのか。守っているだけなら、死ぬぞ」
 『死』という単語を出すだけあって、郷田は殺気を100%込めてさらなるパンチを打ち込んでくる。狙いは腹。
 のけぞった直後で回避は困難、ヴァレーリヤや両腕を下向きに交差して拳をうけるが、明らかに聞こえてはいけない音が自らの腕と内臓からした。これを擬音語にするのは、もはや困難を極める。
「――!?」
 痛みと苦しみと吐き気をこらえているうちに樹幹をぶち破り切り株に激突。回転しながら宙を舞い、土の上に落ちた。
 自分が吐いたのが血だと気づいた時には、ファイティングポーズの郷田が眼前まで迫っていた。
 引けば死ぬ。
 ヴァレーリヤは決死の覚悟で拳を繰り出した。
 ゴウンという重苦しいおとが脳内に響き、そして世界が赤く振動する。
 振動に絶えきれず目からの出血と脳しんとうが起きたのだと知ったのは、それから48時間ほど眠った後であった。

「よくミーのトレーニングに耐えきった!」
 郷田はサムズアップし、歯を見せて笑う。
 ヴァレーリヤとビューティーは手を取り合い、歓喜に目を見開いた……が。
「ではこのトレーニングをあと10セットだ!」
 ぴしりと固まる時間。
 スローで振り返るヴァレーリヤとビューティー。
 笑いながら走り出した二人は、羽根が生えたように軽かった。
「「もージムは、こりごりですわーーーー!!」」

  • ごーだせんせいのたのしいとれーにんぐ☆完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別SS
  • 納品日2020年03月10日
  • ・郷田 貴道(p3p000401
    ・ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837
    ・ビューティフル・ビューティー(p3n000015

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