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陸ではふわふわで、海ではきらきらのもの

登場人物一覧

レイン・レイン(p3p010586)
玉響


 レインはゆっくりと海辺を歩いている。
 陸で見る雪はふわふわしていて、白くて、手の上に乗ったかと思うと、あっという間にとろけてしまう。
 陸での何もかもがレインには珍しくて、初めて見るもの。人のこころ、生き物のこころ、陸での暮らし、食べ物に飲み物、そう、例えばこういう雪の日にどんな風にして人は暖を取るのかとか。
 何もかもレインには珍しいもので、例えばこの前飲んだサイダーはしゅわしゅわしていたけれど、最近は売っているのを見ないだとか、代わりにお酒というものを売り出すようになっただとか、買おうとしたら『大人になったらね』と言われただとか、そんな事がレインの頭をよぎる。
 お酒ってなんだろう。
 大人ってどんなものだろう。
 水を沢山含んだら、僕も大人になれるのかしら?
 レインは雪の降る中、砂浜へと爪先を向けた。
 帰れるようになった海に、少し帰ろうと思った。



 海。
 深くて、穏やかで、広いもの。
 いつだって海はレインを包んでくれた。其れはまるでゆりかごのようで、だからレインは長い事眠っている事が出来た。
 そういえば、海の中から見る雪はどんなものだっただろう。水面を見上げてみると、空からちらちらと落ちてきたのだろう雪が冷たい水面に浮かんでいるのが見える。けれど、陸ほど美しくはない。言うなれば小さな小さな氷が水面に浮いているような、そんな光景だった。
 陸で降っていた白い雪の方が、見た目は綺麗かも知れない。
 ぼんやりとレインは考える。陸と海ではこうも見え方が違うのかと、緩やかにグラデーションする髪を揺らしながら水面を見上げていた。

 じゃあ、春が来たらどうなるのかしら。
 海から見上げる花弁は、陸で見る花弁とどちらが綺麗なのだろう?
 レインは深い深い海の中で、これからくる季節の事を考える。春、夏、秋。きっと海と陸で何もかも違うのだろうなと……たまたま落ちてきた小さな氷片を掌に載せて游がせながら、思った。


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