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幽闇に征く
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さて――此れよりどうするか。
ルーキスは考え倦ねた。現在地は高天京の郊外に位置する。隠密行動を必須とする任務の最中である。
この依頼は霞帝の勅命だ。彼曰くは、その現場には違法な取引をしている獄人が居るが、相手が八百万である為に八百万は上手く雲隠れし獄人にだけ責を負わすつもりなのだという。
所詮は獄人はただのやりとりの仲介人に過ぎず、真に違法取引を行なうのは八百万である事まで調べが付いている。
しかし、八百万を罪に処すためにはその現場を押さえなくてはもみ消される可能性があるというのだ。
(しがらみ、か――)
ルーキスは独り言ちた。雪降る暗夜は男の姿を真白に隠す。故に、今宵の隠密行動にそれ程までのスリルを感じる訳ではない。
だが、雪は足跡をも残す。それが証拠となって八百万を捕縛できるだろうが己の居場所が露見する可能性もあるのだ。再三の注意を行ないながら此処までやってきたがどうにも心象は良いとは言い切れぬ。
霞帝の言をもみ消す輩がいることだ。彼はこの国の天子である。つまり、主上とは天の声、神そのものであると認識されているのだ。
だと、言うのに、八百万達には未だに『霞帝が獄人差別を止めるべしと強行したせいで獄人達は暴徒と化した』という風説が存在して居る。
ルーキスから見れば獄人を差別し、時には命までも悪戯に奪い続けてきた八百万達は自らの身に降りかかる災難を本物の吹こうとして取り扱うが為に『人を呪わば穴二つ』が通じぬ者が多いという事である。師などは「それが常識だったのだから仕方が無い」と言うだろうか。
ああ、本当に――その差別を無くすが為に尽力した霞帝を蔑ろにした挙げ句、悪人に仕立て上げる者達には腹が立つ。
忠義を胸に、此度の任務だけは必ずしや熟して見せようとルーキスは心に決めた。
雪の中を進む獄人を待ち受けていたのは外套に身を包み用心深く顔を隠した男だった。獄人ではない、八百万だ。その姿を確認し、ルーキスは雪に紛れて男の元へと降り立った。
捕り物の始まりの合図を行なえば、控えていた刑部省の者達も姿を現すだろう。
己の顔は割れているだろう。だからこそ、それを効率的に使わねばならない。これは天子の下す天罰である事を知らしめるために。
ルーキスは雪を踏み締めてゆっくりと男達へと近付いた。
「寒々しい中、ご苦労なことですが少し話をさせて頂いても?」
その眸には強い決意が宿されていた。
- 幽闇に征く完了
- GM名夏あかね
- 種別SS
- 納品日2023年12月13日
- テーマ『蒼雪の舞う空へ』
・ルーキス・ファウン(p3p008870)