SS詳細
『L』olita complex
登場人物一覧
名前:ロジャーズ=L=ナイア
性別:乙女
設定:
「真顔でポッキーゲームを頼むような真似をするね」
そういえば「今日」は11月11日だったな。そこは肯定しよう。しかして私の脳髄にその事実が刻まれていたかは謎だ。それ以前の問題――。せっかく来てやったというのになんだ其の塩対応は? そういう貴様もこんなところでヤニを吸っているところを見られたらどうなる? くたびれた狭い室内に紫煙が漂っている。なつかしいような古い香り。
「べつにタバコが好きってわけじゃないけど、父さんが吸ってたし、せっかくだから、あの頃できなかったことを色々やってみようと思ってるだけだよ」
意味深なセリフで惑わせるのが常套手段だな、貴様! 先に誘ったのはそっちの方だろう。ちぐはぐが起きたのは理解したか? キャンディでごまかせるような、乙女、乙姫、竜宮の思い出はいまだ記憶に新しい。兎角、貴様によって生じたちぐはぐの責任を取れ。離反するとまで思い詰めた此の……千もの無貌を持つのだ。一枚くらい乙女が混じっていても問題はあるまい。
「怒ってるんだろ。わかってるよ」
怒っているとも。そうだ、其の通り。肯定してこの野郎。此処まで殺意を抱くのは明確にあの女と貴様にくらいだ。
「はい、お詫び」
咥えさせられた、甘ったるいチョコレート細長い某、棒。口を封じるな。我等「物語」ぞ? 語る口を保たねば存在が崩壊する。
「『L』、君はさ」
「長生き、してよね」
「君は随分と愉快で瑞々しくて不気味で尊くて醜悪なまでに、美しい」
「君が滅ぶときは『世界すべての終わり』。逆説的に君は滅びない。そうあれかしと、願っているよ」
不意に顔が近づく、近づいて来る。ポリポリとか言う雑多な音が響鳴。今日、命日? 唇を喰まれた時間は存外に長かった。瞼が震えて銀の瞳が現れる。
「なんで避けなかったんだよ」
こっちの台詞だ。この野郎、馬鹿野郎。悲しげな顔で笑うな。別れの予感をぶち撒けるな。自分勝手な自己中め。人を弄ぶな。全く反吐が出る。
「せっかくだし、もうちょっといい?」
聞いてやろう。私は寛大だ。
「抱きしめてもいい?」
何か? 私の体温を感じたいというのか? 実に傲慢極まりない稚拙な願いだ貴様。良いだろう、許す。
「あー、やっぱやめとく。際限無くなりそう、あれもこれもって欲張りそう、一線超えそう。そろそろお帰り。僕の所へ出入りしてるなんて、Jの人や礼な人から笑われるかもよ」
おまけSS『●コーダ村にて』
「恋に落ちるのに、理由ってないんだね」
夕焼け、赤鉄の空。墓地。ヘクターと刻まれた墓碑を前に、アーノルドは夕日を見ていた。
「すきなこができた」
悲しい時は夕日を見ると本で読んだことがある。どこかの王子様は、44回夕日を見た。
「いいのかな……いいわけないよな。僕は、遂行者なのに。みんなを理想郷へ連れて行く、そのために生きてきたのに」
夕日張り付いたとこしえの約束の地は、今もがらんどう。