PandoraPartyProject

SS詳細

君の笑顔と幸せを

登場人物一覧

ヨハン=レーム(p3p001117)
おチビの理解者
太井 数子(p3p007907)
不撓の刃

●デートのお誘い
「ヨハンくん今日暇かしら? 暇なら一緒にお出かけしましょ!」
 ドアを開けた瞬間弾けるような笑みを浮かべてそう言ったミーティア(本名:太井 数子)に、ヨハン=レームは一瞬ぽかんとした表情でミーティアを見てしまった。
「えっと……」
 突然の事に目を瞬かせるヨハンに、ミーティアが慌てて言葉を紡ぐ。
「今日はいい天気だし、お出かけ日和でしょう? それに商店街にヨハンくんと一緒に行きたいお店があるの!」
 確かに、今日は部屋に閉じこもっているのが勿体ないような晴天だ。気温は少し低くて寒いけど、お日様が当たればぽかぽか温かい。
「分かりました。準備するので少し待ってもらえますか?」
「良いの!?」
「はい。すぐに準備してきます」

●食べ歩きデート
「さて……ミーちゃんはどこに案内してくれるのかな」
 まだローレットに来て間もないミーティアは良く行く場所しか詳しくない。そんなミーティアが一体どこに案内してくれるのか。
 心配と好奇心が混じりあったまま外に出れば、ドアの前で待っていたミーティアがぱっと顔を輝かせる。
「ヨハンくん!」
「お待たせしました」
「ちょっとしか待ってないから平気! それより今日は食べ歩きよ! まずは軽めにパフェの店よ!」
 うきうきした様子を隠すこともなくヨハンの手を取ったミーティアが向かった先は、季節の果物をたっぷり使ったパフェが名物の喫茶店。
「私は一番人気のいちごに決めたわ! ほら、いちごがたくさん乗って、シャーベットも入ってるの!
 ヨハンくんは何にするか決まった? 折角だし違うの頼んで分けっこしましょうよ」
 メニューとたっぷりにらめっこした後、ヨハン選んだのはチョコレートパフェ。
 いちごパフェはカットされた苺に果肉たっぷりのシャーベット、ハートのストリベリーチョコが乗って目にも楽しい。
 チョコレートパフェはチョコレートアイスにバニラアイス、ブラウニーとウエハースと茶色と白のコントラストが鮮やかだ。
「美味しー……!」
 甘酸っぱい苺とほんのりとした甘さの生クリームが口の中で混じりあい、溶けていく。その味を堪能したミーティアは、苺とジェラートをスプーンに乗せてヨハンに差出た。
「ほら! あーんして?」
 咄嗟に断ろうとするヨハンだが、それより先にミーティアが笑顔で口を開けるように促す。
「恥ずかしいんですけど……」
 小さく呟きながらも、言われるままに口を開けるヨハン。
(間接キスになるってわかって……ないですね。これは)
 ミーティアはまだ色恋よりも食い気の方が強そうだ。
 嬉しそうに笑うミーティアを見てヨハンは心の中でため息を吐く。だけどそんな彼女に振り回されるのも悪くない。
「うん、美味しいです」
 笑顔を浮かべればミーティアも嬉しそうに笑う。
「でしょう!? ヨハンくんの口に合ったみたいで私も一安心よ」

 パフェの次はパンケーキ。
 順番待ちをしながら、ミーティアは頬を膨らませていた。
「もう! ヨハンくんったらいつの間に払ったのよ!」
「秘密です」
 会計しようと思ったらいつの間にか支払い済みだと言われて驚いてしまったし、その後「今日は色々案内してくれるのでしょう? そのお礼です」なんて言われたら大人しく好意を受け取るしかない。
「それより、ここのパンケーキのお勧めは何です?」
 メニューを見ながらお勧めを聞けば、ミーティアは一瞬言葉に詰まる。
「ミーちゃん?」
 不思議に思って首を傾げれば、ミーティアはにっこり笑顔を浮かべる。
「ここはフワフワプルプルなの。一度は食べに来たかったのよね!」
 だけどその言葉にヨハンは理解した。
 誰かから聞いただけで、来るのは初めてなんだと。
「フワフワプルプルですか。それは楽しみですね」
 行きたいと思った場所に誘ってくれたのが嬉しくて、ヨハンもにっこりと笑顔を浮かべる。
(でも良かった。今日はずっと楽しそうだ)
 楽しそうにメニューを見るミーティアを見て、ヨハンの肩の力が抜ける。
 ミーティアは元居た世界で事故に遭い、家族に分かれを言う暇もなくこの世界にやって来た。それを知って、ヨハンはミーティアにこの世界で楽しい思い出を沢山作って欲しいと思うのに時間はかからなかった。
 今日のミーティアはずっと笑顔。今日のことも楽しい思い出の一つとなりそうだ。
 そんなことを思っていたらカフェの中に案内される。
「結構並びましたね」
「そうね。でもヨハンくんとなら長時間並んでも苦じゃないし、一緒に来れてよかったわ」
「僕もミーちゃんと一緒に来れて嬉しいですよ」
 その言葉に嬉しそうに笑うと、ミーティアはさっそくパンケーキを注文するために店員を呼んだ。

 フワフワプルプルのパンケーキは美味しかった。パフェを食べてからあまり時間が経っていないのに、ぺろりと食べ終えたのはその口当たりの軽さのお陰だろうか。
「美味しかったわね!」
「また今度行きましょうか」
 なんて他愛ない話ながら腹ごなしに歩いていた二人だが、不意にミーティアがヨハンの手を掴んだ。
「ミーちゃん?」
 怪訝そうに眉根を寄せるヨハンに、ミーティアはにっと笑う。
「最後まで付き合ってくれたし、お礼にイイトコロに連れて行ってあげる」
 人通りの少ない暗い路地を進み、更に奥へと入っていく。
 すれ違う人もほとんどいない道を進み、たどり着いた先は一軒の店。うっすら明かりのつく扉を開けると、ふわりとご飯の匂いが広がった。
「ここは私の大好物、もずく酢の食べられるごはん屋さんよ!」
 バーン! と効果音が聞こえそうな勢いで言うミーティアに、ヨハンは思わずぽかんと口を開ける。
「まさかこの世界でもずく酢が食べられるなんて思わなかったの! すごく美味しいから、ヨハンくんにも食べてもらいたいな?」
 上目遣いで見上げて来るミーティアに、ヨハンは苦笑しながら頷くのだった。

「どうかしら……? 一番オススメなの。お口に合うかしら?」
 見た目は地味で色合いもパッとしないけど、ツルツル啜ると磯の香りがふわっと広がり、三杯酢の酸味と甘さがベストマッチ。
「はあ……。幸せ……。生きてるって感じる……」
 恍惚の表情を浮かべるミーティアに、ヨハンも思い切ってもずく酢を口にする。
 一瞬酸味が口いっぱいに広がるが、その後甘味を感じる。
「美味しい……!」
 予想外の美味しさに目を見開くと、ミーティアは嬉しそうに笑うのだった。

●さよならは言わない
「私、今日すごく楽しかったわ! ありがとう! ヨハンくんにも楽しんでもらえたなら、嬉しいのだけれど……」
(はしゃぎ過ぎたわよね……。怒ってないかしら?)
 自分の行きたい所に付き合って貰ってばかりだったと反省するミーティア。そんなミーティアに、ヨハンは優しく笑って有難うと言った。
「今日はミーちゃんのお陰で楽しかったですよ」
「ほ、本当に……?」
「えぇ。また今度一緒に行きましょう」
 その言葉に、ミーティアは躊躇うことなく頷いた。

 子供たちが家に帰って行く中、ヨハンは遊び疲れて眠るミーティアをおんぶしていた。
(ミーちゃん……。ミーティア。こんな世界に飛ばされてキミは寂しくは、心細くはないだろうか)
 背中に感じるぬくもりに、胸もあたたかな物で満ちる。
「僕だったら、いつでもキミに付き合ってあげるよ」
 それは家族に対する愛情か、それとも……。
 まだ淡い思いは、二人を照らす夕焼けのように優しい温もりだった。

  • 君の笑顔と幸せを完了
  • NM名ゆーき
  • 種別SS
  • 納品日2020年02月24日
  • ・ヨハン=レーム(p3p001117
    ・太井 数子(p3p007907

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