PandoraPartyProject

SS詳細

んー? なんだい、お姉さんのことが知りたいって?

登場人物一覧

アルム・カンフローレル(p3p007874)
昴星



 そうかそうか、お姉さんのことが知りたいかぁ〜。積極的だなぁ君は〜このこの! ……そういうことじゃない? なんだ残念。

 結論を真っ先に言うとだね、少年。お姉さんは君と似た様な『見習い』の状態なのさ。最も、親元カテゴリーが少し異なるけどね。よくわかっていない顔をしているね。うんうん、大丈夫だよ少年。いつか理解わかるからとりあえず聞き流しておくといい。

 上司でも師匠でも何でもいいのだけど、この場合はなんだかそれ神話っぽい言い回しで好きだから『親』ってことにしておこう。お姉さんの『親』はモノ世界を壊すのが職業かつ趣味みたいなヒトでね。建築解体業者か何かかって? ああ、うん。大雑把にはそんな感じ。所謂、破壊神だし邪神に分類される神なんだ。

 それで『親』じゃしんさまは私に同じ仕事をさせたくてね。私をこうして『見習い』として旅に出しているんだよ。旅を通してさ、仕事を継ぐにあたって必要な色んなこと世界の終焉や人間の怒りや憎しみを勉強してきなさいって訳だ。

 この旅っていうのもなかなか大変でさ〜。少年も知っているけどなにせ私って何かと巻き込まれ体質だろう?邪神の見習いという宿命上、訪れた世界は高確率で危機が訪れるんだ。 まあ、お姉さんは強いし、今は君もいることだし悲観することなんて全然無いんだけどね! 頼りにしてるぜ、少年?

 ……ああ、そうだね。私にとって『何かを壊す』っていうのは別に趣味と言える様な行為じゃあない。何かが生まれる瞬間だって好きだし、最近は少年の方が頑張っているけど私の治療魔術の腕だってちょっとしたものだろう? 仕事宿命にしたってちょっと遠慮したいところではあるさ。それでもこの旅を止めないのは……大変ではあるけれど、旅自体は楽しいからね。こうして君に出会うこともできたし。一番の原因は君と同様に漂流自体は強制的だから止められないってのがあるけど、悪いことばかりじゃない。それに書物の中だけじゃ無い、生きた人間の在り方に触れられるのは貴重な機会なんだよ、少年。私の『親』は学ぶにあたって『過程』を指定しなかったからね。束の間の様な夢の時間、善なる側として動くのも楽しいものさ。

 おっと、そろそろ時間かな。それじゃあ。またね、少年。なーに、心配しなくていいとも。またすぐに逢えるさ。君が忘れていても、何度も何度も名乗ってあげよう。私はファーラ。『ファーラ・オルトラシス・モリガン』。お姉さんって呼んでくれてもいいんだよ?旅の最果てに君の宿敵になるであろう女さ。



………………
…………
……

「……っ!?」

 アルム・カンフローレルはガバリと身を起こし、周囲を見回した。ちゅんちゅんと小鳥の囀る声、静かな森の匂い。いつもの黄金の大楠亭の、自分のベッドの上だった。混乱しながらも今しがた見た夢を思い出そうとして……そして、それが霧の中にスーッと消えていおり自分の手がそれを既に手繰り寄せられなくなっていることを悟る。彼にとってはよくあることで、それなのに今朝はそのことに妙に焦りを感じてアルムは我がことながら首を傾げてしまった。

「……暑かったせいかなぁ」

 寝苦しいせいで悪夢を見たのかもしれないと、アルムは分析する。実際なんだか体がべとべとしているし、顔に触れてみたら汗が流れたのか頬にもさり……と細かい砂の様な感触が残っていた。

「朝ご飯の前に水浴びしようっと」

 のそのそとベッドから動き出して大きく伸びをしたおかげか、アルムの心中から夢を思い出せないことによる妙な焦りの感情はすっかりと抜け落ちていた。

 残っているのはただ、炎が燃える様な鮮烈な赤い残滓のみ──

  • んー? なんだい、お姉さんのことが知りたいって?完了
  • NM名和了
  • 種別SS
  • 納品日2023年08月18日
  • ・アルム・カンフローレル(p3p007874

PAGETOPPAGEBOTTOM