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んー? なんだい、お姉さんのことが知りたいって?
登場人物一覧
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そうかそうか、お姉さんのことが知りたいかぁ〜。積極的だなぁ君は〜このこの! ……そういうことじゃない? なんだ残念。
結論を真っ先に言うとだね、少年。お姉さんは君と似た様な『見習い』の状態なのさ。最も、
上司でも師匠でも何でもいいのだけど、この場合はなんだか
それで
この旅っていうのもなかなか大変でさ〜。
……ああ、そうだね。私にとって『何かを壊す』っていうのは別に趣味と言える様な行為じゃあない。何かが生まれる瞬間だって好きだし、最近は少年の方が頑張っているけど私の治療魔術の腕だってちょっとしたものだろう?
おっと、そろそろ時間かな。それじゃあ。またね、少年。なーに、心配しなくていいとも。またすぐに逢えるさ。君が忘れていても、何度も何度も名乗ってあげよう。私はファーラ。『ファーラ・オルトラシス・モリガン』。
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………………
…………
……
「……っ!?」
アルム・カンフローレルはガバリと身を起こし、周囲を見回した。ちゅんちゅんと小鳥の囀る声、静かな森の匂い。いつもの黄金の大楠亭の、自分のベッドの上だった。混乱しながらも今しがた見た夢を思い出そうとして……そして、それが霧の中にスーッと消えていおり自分の手がそれを既に手繰り寄せられなくなっていることを悟る。彼にとってはよくあることで、それなのに今朝はそのことに妙に焦りを感じてアルムは我がことながら首を傾げてしまった。
「……暑かったせいかなぁ」
寝苦しいせいで悪夢を見たのかもしれないと、アルムは分析する。実際なんだか体がべとべとしているし、顔に触れてみたら汗が流れたのか頬にもさり……と細かい砂の様な感触が残っていた。
「朝ご飯の前に水浴びしようっと」
のそのそとベッドから動き出して大きく伸びをしたおかげか、アルムの心中から夢を思い出せないことによる妙な焦りの感情はすっかりと抜け落ちていた。
残っているのはただ、炎が燃える様な鮮烈な赤い残滓のみ──