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空に咲くアルアーブ・ナーリヤ

登場人物一覧

アラーイス・アル・ニール(p3n000321)
恋華
メイメイ・ルー(p3p004460)
祈りの守護者

●お誘い
「メイメイ様、アルアーブ・ナーリヤをご存知ですか?」
 本日の外出のあらましは、数日前のアラーイス・アル・ニール(p3n000321)のそんな言葉から始まった。
「アルアーブ・ナーリヤ、ですか? いいえ」
「この辺りの夏のお祭りなのですわ。日にちがもし合うようでしたら、一緒に出掛けてみませんか?」
「わ。は、はい!」
 頬を喜色に染めたメイメイ・ルー(p3p004460)はわたわたと予定を確認し、空いていますと明るい笑みを上げた時、爆弾は落とされた。
「では、当日を楽しみにしていますね。お揃いの姿で参りましょうね」
 両手の指先を合わせてにっこりと微笑むアラーイス。
 けれど『お揃いの姿』というのは、先日のアレのことだろう。
 普段アラーイスが着ているようなラサ風衣装で……つまり、水着でもないのにお腹が無防備な……。
(めぇぇえぇぇ)
 当日までに、メイメイには心の準備が必要となるのだった。
 ……準備したところでどうしようもない羞恥心ものもあるのだが。

●アルアーブ・ナーリヤ
 そうして迎えたアルアーブ・ナーリヤの日。
 アルアーブ・ナーリヤは夕から夜に掛けてのお祭りなのだが、昼から屋台が賑わっている。甘味や遊びをめいっぱい楽しむのならば昼から。けれど早くから楽しみすぎると疲れてしまうからと、ふたりは八つ時にアラーイスの店で待ち合わせをした。勿論、メイメイを着飾るためだ。
「まあまあ、メイメイ様」
 にこにこ、にこ。明確なご機嫌オーラを漂わせ、アラーイスが微笑んでいる。
「めぇ……」
「よくお似合いですよ。ほら、見てくださいまし。わたくしたち、お揃いですわ」
 メイメイの腕を取ったアラーイスが姿見の前へ彼女を連れて行く。
 姿見の前には桃色の少女と、白から濃紺へ染まる少女。飾りもお揃いの物を用意したのだとアラーイスは気合を入れてメイメイをめかし込んだ。薄く目元に化粧を施し、額には花鈿。色違いの双子コーデ。
「……メイメイ様、嬉しいのはわたくしだけでしたのでしょうか?」
 ご迷惑でしたかとアラーイスの三角耳が伏せた。悲しげに斜め下に落とされた視線はうるっと潤んで、今にも蕩けてしまいそうだ。
「い、いいえ、アラーイスさまっ。わたし、も……うれしい、です」
「メイメイ様……っ」
 感極まったような声と同時に、パッと耳が立った。……メイメイが勘付いているかは定かではないが、勿論演技である。
「さあメイメイ様」
 アラーイスがメイメイの手を取って、早く遊びに行こうと誘った。
「あ、あのっ、アラーイスさま……! せめて、せめて何か羽織るものを……っ」
 メイメイの最後の訴えは、「メイメイ様にめいっぱい楽しんで頂きたいので」と聞き入れられた。
 ふわりとメイメイを包み込むように掛けられるのは、衣装と同じ色の肌触りの良いシルクベール。雨宿りの時からメイメイがへそを出すことに躊躇いを感じていることに気付いていたのだろう。準備が良い。
「わたくしはこちらは頭に掛けることが多いのですが、片肩から斜めに掛けても良いですし、お腹に巻いても良いですし、メイメイ様のお好みで大丈夫ですわ」
「……めぇ。アラーイスさま、ありがとうございます」
「わたくしは商人ですもの」
 顧客が欲しい物を先読みしてこそだと、アラーイスは微笑んだ。

「ホーホとティーンショーキでしたらどちらがお好きでしょう?」
「あの、どちらも食べたことがなくて」
 ホーホもティーンショーキも聞いたことが無い果物名で、好きかどうか以前の問題だった。
「ホーホは他国ですと……桃、でしょうか。ティーンショーキはサボテンの実ですよ」
 どちらも甘くて美味しいのだと、果物売りの屋台でアレとアレだと指し示す。
 ホーホは見た目通り桃。果肉は黄色で、豊穣等で食べられるものより皮に毛が無く、皮ごと食べる。
 ティーンショーキは皮に棘があるから皮を剥いて食べる。緑のものは若く、オレンジや紫のものが食べ頃だ。
 それ以外ならザクロやイチジク、それからラサ果物の王様マンゴー。
「両方頂いてみても大丈夫でしょうか?」
「ではわたくしと分けましょう」
 慣れた様子で支払いまで済ませてしまう。メイメイがわたわたと財布を出そうとすると「ここはラサですもの」と止められた。他国を案内して頂く機会がありましたらお願いします、と。
「さあどうぞ」
「では、ティーンショーキから頂きますね」
 食べやすいように串に刺して貰った果実を受け取って、恐る恐る食んでみる。
「これは……!」
 瑞々しく素朴な甘さ。一等近いと感じられる果実を上げるなら、柿だろうか。
「おいしいです、アラーイスさま」
「お口にあってよかったです。では、次はこちらを」
 未知を口にするメイメイが気に入ったのか、気付けばアラーイスの手に果実が増えている。
「め、めぇぇ……」
 目まぐるしい。けれど、次々と差し出される果実はどれも甘くて美味しく、楽しいひとときであった。


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