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<親密イベント>ユースティア・ノート・フィアス
登場人物一覧
ここは
その名も
主人公はある日突然、勇者へと覚醒。この世界へ召喚された多くの仲間を引連れ、悪を駆逐するべく日々走り回る。その仲間達には様々な性別・容姿・年齢・種族が連なっていた。
今回はその一人とのイベントである。
★4光『夢為天鳴』
ユースティア・ノート・フィアス(p3p007794)
──親密度上限達成
親密イベントが発生しました。
●空白の心
一行は岩壁にある神殿へ辿り着く。興味本位で神殿の窓柵からその景色を見てみれば、下は草木で生い茂った森であるものの高さが高さだけにビクリと少し震える者もいるだろう。神殿の周りには少し開けた広場はあるが、すぐそこが崖なだけに誰も近寄る者は──と、一人分だけ人影が見えた。
他の仲間達が神殿内で和気藹々と会話等コミュニティを楽しんでいるのを他所に、彼女ユースティア・ノート・フィアスだけはこの寂しげな広場にぽつりと一人佇んでいた。その様子がとても寂しげに見えて……
──ユースティア。
「え? あ、勇者さん。……どうかされましたか?」
消えてしまわないか不安になるほどの儚さに、勇者は思わず彼女に声をかけた。 ……だけれど遠くから見て感じていた寂しげな雰囲気が一変、振り返った彼女は優しげな微笑みで……勇者は少し寂しくなる。
──ユースティアが……なんだか寂しそうに見えたから……
「え? そ、そうでしょうか……?」
突然の言葉にユースティアは目を見開いて驚いた。彼女にとっては気丈に振舞ったつもりなのだろうから無理もない。
──ユースティアとはそれなりに長く旅してきたつもりだよ?
「ふふ、勇者さんには敵いませんね……」
そう言いながら苦しげに笑顔を作る。彼女は何か悩み事でもあるのだろうか? と勇者がジッと彼女を見つめてみると、ユースティアは観念したかのように小さくため息をついた。
「……私、自信が無いんです」
──自信……?
ユースティアは
そんな彼女の自信がない、と言う言葉に勇者は疑問を浮かべながら首を傾げた。
「私が
ふふと悲しげに微笑みを浮かべながら、ユースティアはほんの少しだけ弱さを口にする。
「前にも言いましたが……私、記憶が無いんです。ここに来た時は空っぽの状態、だったんですよね……」
──そう言えば来た時はそんな感じだったね
ユースティアが召喚された時の事を思い出す。あれは酷い雨の日、雷でも落ちたのではないかと錯覚するほど彼女の召喚の儀の光が強くて驚いた記憶がある。
そうして召喚されたユースティアがその時初めて口にした言葉は『私は誰ですか?』だった事は今でも印象強い。
「そんな空っぽな状態の私が……果たして剣を執り、闘う資格は有るのだろうかと……ふふ、私らしくないでしょうか……?」
──そんな事ないよ。
悲しく微笑む彼女の言葉に勇者は自然と言葉が出ていた。
──ユースティアは空っぽなんかじゃないよ! そりゃ召喚された時はそうだったのかもしれないけれど……でもさ、今は違うでしょう? 少なくとも私はユースティアの事、空っぽだなんて……思ってない。綺麗で強くて頼りになる友人……だって……えと……ダメだったかな?
勇者は一生懸命励まそうとしていたが、ふと初めて友人と口にする事に気づき踏み込みすぎたかな? と妙に不安に思ってしまって。
「ふふっ! そこで不安になっちゃうんですか? 勇者さんったら……そこは……自信を持ってもらわないと……困りますよ?」
変なところで自信なさげな勇者に対し、ユースティアは思わず笑ってしまった。
そして優しい微笑みを見せる。
「……勇者さん、ありがとうございます。あなたの気持ちは伝わってますよ」
──ユースティア……。
ずっと俯いて崖の下にある森ばかりを見つめていたユースティアは、ふと空を見上げた。
「失ったものは多く、酷く曖昧な、確かな信念も無い身だけれど……それでも、今はあなたと言う掛け替えのない友人と共に歩み、平和な世界を築けたら……
──……私もユースティアの気持ちを知れて嬉しい!
「ふふ。あなたと他の仲間の皆さんと共に……この世界を平和へと導きましょう!」
先程まで弱気でいたユースティアはそう強く誓いを立てる。共にこの戦乱を駆け抜けていこう。