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雨粒降る中、猫と家で

登場人物一覧

祝音・猫乃見・来探(p3p009413)
優しい白子猫
祝音・猫乃見・来探の関係者
→ イラスト

●雨粒ぽたぽた、猫じゃれて
 窓の外には、6月の雨が雨音立てて降っている。
 窓の内側で、雨粒を不思議そうに眺めたりじゃれたりするのは子猫達。

 家の中には可愛い猫が数匹。
 小さな愛らしい子猫、三毛、雉白、黒白、茶虎に茶白。窓にじゃれつく5匹の普通の子猫。
 その親猫と思しき猫は、普通の猫とは少し違う見た目だった。三毛猫……にしてはとても丸い。
 ふわふわの球に耳や尻尾が生えたような、三毛柄の不思議な球型の猫。

「みけさんも、子猫さん達も……可愛いね」
 そして、不思議な三毛球猫と子猫達を眺めながら、部屋の中でぼんやりとしている少年。
 祝音・猫乃見・来探。混沌で戦う特異運命座標である彼も、今日は部屋でのんびりしていた。

 再現性東京の一角にある町……示路猫町(しろねこちょう)。
 またの名を、祝音が取得した領地の第一地区、ねこのまち。
 その中にある三階建ての一軒家……祝音の家『猫乃見の家』の中で、彼等は暮らしている。

 猫タワーや猫用ケージ、爪とぎなども用意してあるリビングで
 祝音はみけ達と一緒に過ごしている。
 寝室等で過ごしても良かったけれど……暖かい猫さんと一緒だと、とっても沢山寝てしまいそうだったから。
 できれば晴れててほしかったけど、外はあいにくの雨だった。

●雨粒ざあざあ、想起して
「雨……降ってるね」
 みけさん達は雨、好き? と祝音が猫達に聞いてみれば
 みけと呼ばれた球体三毛猫はみゃーと鳴き、つられるように子猫達もみゃあみゃあ鳴く。
 窓の外は雨。家の中の猫達は濡れずに済むが、外の猫達はどうだろう。
 雨宿りできてるといいな……と思いながら、祝音はみけ達をそっと撫でる。
 家の中は冷房や除湿をかけているから、猫達の毛並みも湿気に負けずにふわふわだ。

 ふわふわの毛並みを撫で、近くのソファーに寝転がり……胸の近くに丸いみけが寝そべって。
 雨粒に飽きた子猫達によじ登られながら、祝音は考える。

 色んな事があった。良い事も、そうでない事も。
 混沌世界に召喚されて、ぼんやり彷徨っていた自分に
 初めて出会った同じ世界のお兄さんが名前を付けてくれた事。
 その後、付けてもらった名前で……祝音・猫乃見・来探として、色んな依頼を頑張った事。

 召喚当時は頭がぼんやりしていて思い出せなかった、家族や過去の事も……
 色んな経験を経て、他の存在の力も借りて、少しずつだが思い出しつつある。
 両親と、年の離れた双子の姉2人がいた事と……家族は恐らく元世界で死んでしまったのだとも。

 5月の休みシトリンクォーツに、死んだはずの姉の片方と再会した。
 その姉も、もう1人の姉も、混沌世界に召喚されて生きていると。
 祝音にとって、きょうだいと言えるのは……2人の姉と、混沌世界での名付け親である兄のような存在。
 祝音の上でじゃれつく子猫達は、そのぬくもりは、祝音にきょうだいの存在を想起させた。

●雨粒しとしと、せつなくて
「……お姉ちゃん」
 きょうだいの事を想起すれば、祝音はとてもせつなくなる。
 姉の片方には再会できた。
 離れようかと悩んだらしい兄(的存在)とは一緒に居たいと伝えられた。
 しかし、もう1人の姉とは未だに会えていないのだ。

 会えていないほうの姉は、どうしているんだろう、と祝音は考える。
 この雨の降る所のどこかにいるのかな。
 お外の猫さん達みたいに、お姉ちゃんも雨宿りできているのかな……。

「どこでもいいから……会いたいよ、お姉ちゃん」
 会えるなら、どこでもいいから。会えてないほうのお姉ちゃんに会いたい。
 猫達を撫で、窓の外の雨を眺めながら、祝音は少し泣きそうになる。
(雨が止んだら、お姉ちゃんを探しに行こうかな……)
 そう思って体を動かそうと思えば、胸元と体の上から可愛い寝息。
 愛らしく眠るみけや子猫達を撫でながら、お姉ちゃんにもこの子達を見せたいな……と祝音は思うのだった。

●雨粒ぽろぽろ、猫ぺろり
 お姉ちゃん。そう呟いた祝音は、リビングのソファーで微睡んでいる。
 横になっている祝音の目から……雨粒のような涙がぽろりと流れる。
 彼の胸元で寝ていた球体三毛猫……みけは、心配そうに見つめて、涙を拭くように頬を舐める。

 猫の舌はざりざりしている。そっと舐めてもざりっとしている。
 頬にざりっとした感覚を感じて目を開ければ、可愛い丸いみけさんがいる。
 丸いみけさんをそっと抱っこして、毛並みに顔をうずめて、すぅっと吸えばお日様の匂い。

 小さな小さな子猫達も、おかあさんみたいにだっこしてーとみゃあみゃあ鳴いて動き出す。
 皆一緒に抱っこしたら、花束ならぬ猫束みたいになるのかな。
 ふわふわ可愛い猫の束。そう思いながら可愛い猫達を抱っこして、祝音はそっと微笑んだ。

 僕は今、幸せだから……会えた時には色々話したいんだ、お姉ちゃん。
 もう1人のお姉ちゃんみたいに、絶対見つけて……猫さんみたいに飛びつくからね!


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