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黄金の昔話
登場人物一覧
名前:黄金の王
一人称:ボク
二人称:キミ
口調:だね、だよ、なのかな
設定:
心臓、または人間の形をした古代遺物。
はるか古代、『黄金の王』と呼ばれた存在が己の全てを『捨てる』際に残ってしまった魂の欠片である。
そのため自身を『黄金の王』と認識し、そうであるように振る舞った。
欠片でさえ、笑顔を向けるだけで相手を破壊出来てしまうと言うことを考えると、本物の『黄金の王』はどれだけの存在であったのかが分かる。
●忘れられた昔話
現在の『ヴィクトール』はかつて『黄金の王』によって生み出された器であった。
その姿が亜竜種の男性ヴィクトールに似ていたのは、彼との間に芽生えてしまった友情のためである。
全てを愛し、それ故に全てを破壊してしまう性質をもった黄金の王は当時のヴィクトールを壊したくないがために拒絶し続けたが、己の愛の深さゆえに受け入れ、そしてついには破壊してしまう。
その悲しみは己を許せなくなるに充分であった。
『ボクは戦いすぎた。ボクは奪いすぎた。ボクは失いすぎた。ボクは裏切りすぎた。
顔を変え名前を変え幾百の人生を歩み直そうともボクは全てを壊してしまう。
ボクがボクである以上、触れるものを壊してしまうなら。
ボクはもうボクでなくていい。
いまここに、ボクの全てを捨てていく。
永遠に、おやすみなさい。
そしてごめんね、ヴィクトール』
こうして黄金の王は己への愛によって己を破壊し尽くしたが、当時のヴィクトールを壊してしまった自分だけは愛することができなかった。
そのため『愛せなかった自分』を欠片として封印することにした。
それが現在の『ヴィクトール』に埋まった黄金の心臓である。
●ハッピーエンドの昔話
作られた器は、黄金の心臓の影響を受けないはずだとされていた。
しかし覚醒から徐々に時間がたつにつれ、その精神は愛と破壊に満ちていく。
同じ存在となり、同じ過ちを犯してしまう前に、その心臓が抜き取られたことはかつての『黄金の王』にとって幸運なことであっただろう。
それを、自らの生み出した器が破壊してくれたことも、また。
●心残りと『壊さなかった愛情』
『黄金の王』に散々・未散が接触を図った際、言葉をかけるだけで彼女を壊すことが出来たはずだった。
そうしなかったのは、彼が自分を許せないと知っていたからだ。
なぜなら彼は許せなかった自分そのものなのだから。