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ぬばたまの眸
登場人物一覧
名前:レディ・ノワール
種族:人間種(?)
性別:女性
外見年齢:20代半ば
一人称:わたくし
二人称:あなた様
口調:です、ます、でしょう(機嫌が悪いときはやや言葉が乱れる)
特徴:幻想貴族、本名は不詳、ぬばたまの眸が印象的な美女
設定:
黒く濡れた眸を有する美女。黒いドレスを身に纏い、社交界に一度現れては笑みを振り撒く女。
レディ・ノワール――それが淑女の呼び名だった。
身に纏うドレスは美しいマーメイドライン。波間を思わせる布の一枚一枚が蠱惑的に揺れる。
波打つような美しい紺碧の髪は夜空を思わせる。その神秘的な美貌でパトロンの居る娼婦や芸術家のひとりであるとも噂されてきた。
本人は「わたくしは名乗るほどでもございませんもの」とはぐらかし笑うという。
実年齢も正確な爵位さえ定かではない彼女の事を時折サーシャと呼ぶ者が居るという。
決まって、そう呼んだ者の傍でレディ・ノワールは微笑み続けるだけだった。彼女は、本来の自身を直隠し、道化のように仮面を被る。
ある者曰く、レディ・ノワールのその呼び名となった眸は作り物なのだそうだ。本来の眸は美しく柔らかな金色であり、あのような夜色ではなかったと。
わざと、眸の色を隠した娘は全てを語る事はしない。レディの秘密は胸に秘めておく者だから。
――彼女がいつから社交界に現れたかは定かではなかった。
産まれは『北部戦線』の程近くだと言い、決して恵まれた暮らしをしてきたわけではないと彼女は告げる。
餓えに苦しむ日々から抜け出すための努力は相応に行なったとも告げる。露命を繋ぐ為に夜露を舐め、のし上がったのだ。
一見すれば穏やかで理知的な彼女にも裏の顔が存在している。努力の裏には、並ではない犠牲と悔恨があったから。
美に取り憑かれたように女は過ごした。歌い、踊り、享楽の徒であるかのように。
ええ、だって。
わたくしだってそうやって、そうやって、何かを犠牲にして生きてきたのですもの。
恵まれる事って、大層難しいことではないでしょうか。……人の努力をいとも容易く踏み躙る気持っていかがなものなのでしょうね。