PandoraPartyProject

SS詳細

書を編む

登場人物一覧

ツリー・ロド(p3p000319)
ロストプライド

 積み上がる書籍の山と、濃密なインクの香り。
 かりかりと羊皮紙にペンが走る音は、一人分。
 そんな部屋の中でランプの明かりに照らされているのはサイズ(p3p000319)。この空間の、あるいはこの『思考』の中心である。

 積み上げているのはこれまでのローレットにあった報告書を部分的に写したものだ。サイズに関わる様々な活躍、願い、あるいはそれ以外のことが書かれ、それらは時折手に取っては壁のボードに貼り付けている。
 線で結ばれたいくつものワードには、妖精女王ファレノプシス、サイズ、時折メープルに関する事柄もある。
「よし……そろそろ、纏まってきたな」
 サイズの抱いていた主な疑問は、これまでサイズが見聞きした情報と過去の報告書を照らし合わせればわかることばかりだった。
 まずは、それを順番に思い出していこう。

 二人の妖精女王は禁術を継承しているか否か。
 これは、どの文献にも載っていない。イエスともノーとも言われていないので、使用すること自体は不可能ではないと考えておくべきだろうか。
 新妖精女王のストレリチアとフロックスは妖精女王としてファレノプシスと同様の力を使用することが可能だとみるべき、ということだ。
 だがサイズの活躍によって『短命であること』『二度と外の世界を見ることは叶わないこと』という宿業は取り払われている。
 『今後未来永劫妖精女王の生命を犠牲にする事は無く妖精郷の門を繋ぎ続ける』ことを、サイズのPPPが可能としたのであった。
 続いて妖精郷の現状についてだが、これは単純。平和そのものだ。
 トラブルらしいトラブルがおきていないといえば嘘になるだろうが、そういうときは依頼が普通に舞い込んでくるだろう。それで解決出来る程度の平和さだと言える。
 次に気になったのは『王権』というワードだ。これは夜の王とファレノプシスが戦った際に一度だけ発した言葉だが、これは夜の王の無敵効果をキャンセルできる格があるという意味で使われているようだ。
 それとは別に王権というものをあえて定義するのであれば、ファレノプシスが行なったような危機的状況を回避するための必殺技がそれにあたるだろう。
 以前氷の精霊女王に王権はあるのかと尋ねた際にノーと返されたのは、そもそも種族からして異なるため同じカテゴリーで語れないものであるという前提があったようだ。
 そして重要な点。ファレノプシスは死亡したとみて、間違いないということ。妖精達の口から明確に『桃源郷に行く』とは死という言葉を忌避する妖精達の比喩であり、こうしてしっかりと調べてみれば死亡していることはサイズにとっても明白であった。
「調べ物は順調?」
 そう言って部屋に入ってきたのはローレットで情報を纏めているカルネだ。
 彼にメープルやROOにおけるサイズのことを尋ねようと資料を取り寄せさせたのだが、どうも彼にもわからないことが多いようだ。
「やっぱり、メープルのことはメープルに聞くのが一番じゃないかな。ROOのサイズに関しても、詳しい人は別にいると思うよ。それはそれとして……」
 と、カルネが出してきたのはROOと滅びのアークに関する研究書類だった。
 これによると、ROOはあくまでデータ上の存在であって、滅びのアークや魔種とは無関係であるということであった。仮にROO内部で同様の言葉を用いたとしても、それは現実世界への影響は一切ないとみていいだろう。
「どうかな」
「ああ、ありがと。だいぶ纏まってきたよ。死ぬに死ねない理由も再認識できた」
「そっか、それならよかった」
 カルネがカーテンを開き窓を開けた。窓から差し込む光がふわふわとただよう埃をうつし、ゆっくりとそれらは上下する。
「それじゃ、僕は別の仕事があるからもう行くね」
 カルネの出て行った部屋のなか、サイズはぐったりと椅子にもたれかかった。
 窓から差し込む涼やかな風が、吹き抜けていく。

  • 書を編む完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別SS
  • 納品日2023年05月31日
  • ・ツリー・ロド(p3p000319
    ※ おまけSS『メタ視点からのまとめ』付き

おまけSS『メタ視点からのまとめ』

内容にメタ的な返答が必要な要素も多く、より整理が必要であったため、オマケとして疑問点へ順番に回答していきます。

1:新妖精女王のストレリチアとフロックスは妖精女王としてファレノプシスと同様の力を使用することが可能です。
 ですが、『短命であること』『二度と外の世界を見ることは叶わないこと』という宿業はサイズさんのPPPによって取り払われています。
 つまり、サイズさんのPPPは『今後未来永劫妖精女王の生命を犠牲にする事は無く妖精郷の門を繋ぎ続ける』事を可能としています。これをPCも把握していて構いません。
(妖精女王とは生命エネルギーを『冬の王の封印維持』と『妖精郷の門の維持』に捧ぐ為にその地に縛られる存在です。それが存在し得ない今、彼女達が二人で女王として存在してもデメリットはございません。)
2:現在の妖精郷は特に問題はありません。平和です。
3:王権として敢て定義するならば、ファレノプシスが行なったような危機的状況を回避するための必殺技です。
 夜の王とファレノプシスが戦った際に発言した王権については、夜の王の無敵効果をキャンセルできる格があるという意味で使われています。
 また、氷の精霊女王は『精霊(種族)』であり、人種ではございませんが、妖精達は『精霊種(グリムアザース・人種の一種)』となり別物です。
 ファレノプシスは死亡扱いであるために復活は不可能です。
 妖精達の口から明確に『桃源郷に行く』とは死という言葉を忌避する妖精達の比喩であり、死亡していることが告げられていると認識してください。
 PCも同様の認識を行って居て構いません。
 ROOにおけるサイズさん及びNPC『メープル』においては個別の担当GMにおける専権事項であるために特筆してお答え出来ることはございません。
 ROOにおけるサイズさんの存在そのものは『滅びのアーク』等における現実世界への影響は存在し得ません。ご安心ください。

PAGETOPPAGEBOTTOM