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華蓮の新年の過ごし方

登場人物一覧

華蓮・ナーサリー・瑞稀(p3p004864)
蒼剣の秘書


 ここはとある場所にある神社。年が変わるころになると1年の感謝や抱負を神様に報告すべく、周辺の神様を信仰する人達が集まってくる時期となる。その時期になると華蓮・ナーサリー・瑞稀は実家でもある神社の巫女としてしばらくの間、ご奉仕しているのである。華蓮にとってはこの時期にしか会えないような顔なじみの人にも会える貴重な時間である。
 今はまだ朝でそれほども人もいない落ち着いた時間。外の掃除も終えて社務所で参拝客を待ち構える華蓮。しばらくするとだんだんと参拝客が増えてくる。
「華蓮ちゃんやお久しぶりねぇ。元気してた?」
「あ、おばあちゃんお久しぶりなのだわ。確かおばあちゃん、今年厄年だわよ」
 例年通りお守りを包んであげながら、ほかの縁起物を社務所の奥から普段から身に着けられそうな数珠などを引っ張り出してくる。
「華蓮ちゃんはやっぱり気が利くねぇ。うちの子と一緒になってくれると……」
「わ、私にはまだまだ早いのだわ」
 巫女としての仕事はしっかりと、たまに現れる縁談のなどのお話は丁重にお断りしながら午前中だけでもかなりの人とお話ししお守りや破魔矢を渡していっている。この心地よい喧噪と人の笑顔を見て華蓮はようやく一年が始まったなと実感がわいてくるのであった。


 少し時間は経って、昼が近くなる。この時間になると比較的に人が少なくなる。華蓮にも考え事ができる時間が出来てくる。今日の献立は何にしようとか、そういえばまだあの人にご挨拶ができていないなとか考えを巡らせながら、少なくなっていたお守りなどを今のうちに前に並べておく。
「こんにちは、お守りありますか?」
「はい、あるのだわ」
 参拝客がやってきたので一度、整理する手を止めて、元いた場所へと戻っていく華蓮。そこにいたのは名前は知らないが毎年、ここにお参りに来てくれる顔なじみの人であった。年に一度は会っているのだが会うたびになんだかやつれて言っている気がする。華蓮はそれがとても気がかりだった。
「こ、今年こそはいい作品を完成させたくて……おみくじもいいですか?」
「いいのだわ。だけど、大丈夫? ちゃんと寝てるの?」
「す、少しだけ」
 この様子だと寝食を惜しんで何か作品作りをしているようだ。頑張っている人は応援したくなるが、ここまでくると心配である。今すぐちゃんと寝てと言いたくなるが今は巫女としてのお仕事がある。せめて家の場所がわかれば何かおいしいものを作って持っていくということもできなくもないのだけれど……
 頭の中で華蓮がしばらく葛藤していると、やつれ気味の子がおみくじを引いたのかそのくじの番号を華蓮に見せていることに気が付いた。番号は三十番。華蓮はすぐに立ち上がって社務所の中にある三十番と書かれた戸棚の中から紙を取り出す。
 しかし、その紙は真っ白であった。何事かと思い、再び三十番の中を確認してみると一枚の手紙を発見する。『三十番を作るのが間に合いませんでした。頑張って』と一言だけ書かれている。よくあることではないのだけれど、あまりの人で紙がなくなるということは何度か経験していた。その時のことを思い出し、急いで筆を執る。あの時は見本となるものがあったけれど、今はない。何を書けばいいのだろうと一瞬だけ迷ったが答えはすでに出ていた。
「お待たせしたのだわ」
「は、はい……きょ、凶!? 養生すべし、夢に得るものありですか?」
 おみくじの結果を見てうなだれてしまう。それを見てほんの少し心が痛んだが華蓮はひとつ咳払いをして、巫女としての務めを果たすために口を開く。
「夢に得るものありなのだわ。凶は神様が気を付けろと戒めているだけなのだわ。とりあえず、夢にえるものありだけでも信じて今は寝てみることなのだわ」
「は、はい」
 それを聞いて心なしかやつれていた顔に安心が戻る。どんなことがあったのかはわからないけれど、どれだけやっても不安で眠れなかったのだろう。眠る理由を作られて今日はぐっすり眠れるだろう。


 それから夕方になり、日が落ちて周りが見えなくなるまで人がやむことはなかった。お守りを買う人、おみくじを買う人。たくさんの人が社務所に訪れた。迷子が出てきてその子のお母さんを少し浮いた状態で探すなんていう事件もあった。そして、今最後の参拝客を見送って華蓮のいつもより少し長い一日はようやく終わりを告げた。
「今日はなんだか疲れたのだわ」
 三十番のおみくじを引く人はやはりそれなりにおり、その度におみくじの内容も変わっていく。なんだか一言言いたい人に限って三十番を引いてくれたのは本当にありがたかった。とにもかくにも、もうこんなことがないように今のうちにおみくじの在庫を調べなければともうひと頑張りする華蓮。
 しかし、おみくじの三十番が翌年から幸運を招く追い風と言われるようになり大評判を呼ぶのであるが、心地よい疲れを感じている華蓮はまだ知らない。

  • 華蓮の新年の過ごし方完了
  • NM名パンツと鼠蹊部
  • 種別SS
  • 納品日2020年01月05日
  • ・華蓮・ナーサリー・瑞稀(p3p004864

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