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進むべき途へ
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登場人物一覧
「繰切殿……」
燈堂の地下、無限廻廊の座でアーマデルの声が響く。
本来なら封印の扉の向こう側に居るはずの繰切の姿があったからだ。
「おう、アーマデルか」
「どうしたんだ、何か欲しいものでもあったのだろうか。白銀殿のおやつが欲しいのか?」
「我を悪戯好きの猫のように言うな。……力が戻りつつあるのだ」
繰切はアーマデルを抱き込んで、そのまま封印の扉の前に座る。
「その姿は分体か? 出せるようになったのか?」
「ああ、そうだな。されど、心配はするな暁月の調子が悪くなった訳では無い」
無限廻廊の座に張られている呪符も綺麗なままだ。
「北の大地で父神の力が強まった。封印されていたはずなのだが……その余波で我の闇の力も増えた」
「闇の力……悪くなったのか?」
アーマデルの問いにカラカラと笑う繰切。
「元々我は『悪神』ぞ」
「……」
己を『悪』だと誹る繰切にアーマデルは視線を落す。それは人々が繰切に押しつけた願いだ。
「まあ……変化の時よな。深道も我も、お前達に『希望』を抱いた」
繰切はアーマデルの頭に手を置き告げる。
「心せよ仮初めの巫女。変化は『痛み』を伴うぞ。それはお前が一番よく知っているだろう。何を得て何を失うのか。それを見誤らないように気を付けよ」
失うものの大きさを知らねばならぬ。得るものの温かさを掴むために。
進まねばならぬ。
変化の先に、滅びが待っているのだとしても――