SS詳細
夕紅の待ち人
登場人物一覧
名前:ゆう
種族:鬼人種
性別:女性
年齢:18歳
一人称:私
二人称:あなた、~さん
口調:です、ます
特徴:淡い珊瑚色の二本角、甚三紅色の瞳、飴色の髪、物憂げ
設定:
高天京でチックと雨泽を追ってきた女性。姉や親しいひとからは『おゆうちゃん』と呼ばれていた。
彼女の幼少時を知っている者はきっと、口を揃えてこういうだろう。快活な女の子
幼い頃は両親と姉とともに村に暮らしており、どこに行くにも「姉さん、どこいくの?」「せい姉さん、おゆうもつれていって」と後を追いかけていたそうだ。
それは両親が早くに亡くなってからも変わらなかった。……否、寂しかったのだろう。ひな鳥のような行為は増した。姉はまだ11歳だと言うのに不満をこぼさず、ゆうの手を引いて「姉さんが居るから大丈夫」が口癖だった。
「おゆうちゃん、風の音が怖いの? 姉さんが居るから大丈夫よ」
「
……忘れないで。おゆうちゃんには姉さんが、姉さんにはおゆうちゃんが居るの。忘れないでね」
姉との別れは、ゆうが10歳になった頃に訪れた。
姉が奉公に出ると言い出したのだ。
理由は解っている。全部ゆうの将来のためだ。
その時だけは姉は「姉さんが居なくても大丈夫よね?」と言った。
全然大丈夫じゃなかった。大丈夫じゃない。哀しい。大好きな姉さんまでどこかへ行ってしまう。
けれどもゆうは涙をぐっと堪えて「おてがみちょうだいね」と歯の抜けた顔で笑ったのだ。だってこの別れは最期の別れではなくて、姉は何度も帰ってきてくれるし、手紙もくれると約束したのだから。
姉はゆうとの約束を守り、手紙をくれた。ゆうは手紙が読めるように、返事が書けるようにと文字を覚えた。
姉が正月と盆に帰ってくる度、姉からの手紙がある度、ゆうは幸せだった。
しかしゆうの明るさは、大好きな姉が奉公に出た2年後に失われてしまった。
連絡がパタリと途絶えたのだ――。
――以下、刑部調書より。
両親は
甲には6歳離れた姉がいた。姉の名は『せい』。せい姉さんと呼んで慕っていたとのこと。
珊瑚めいた角は姉のもので、甲の角よりもほんの僅かに濃い。
明らかになった『九皐会』が関連している施設から、姉の生存報告は上がってきてはいない。
おまけSS『珊瑚めいた角』
ゆうの角よりも色合いがはっきりとした艷やかで美しい角。
長さは女性の中指ほどで、形は確りとした枝のよう。
ゆうの話では、姉は自分と同様に二本、こめかみ辺りからやや斜め後ろに向かって生えていた。
――つまり、一本は既に売られたか、紛失している。
残った一本を――手元に戻ってきた『姉』を、ゆうは大切に抱えて故郷へと戻った。
いつまでも姉が帰ってきてくれることを、そして姉からの手紙を待ち続けている。
雨泽も刑部も、見解は同じ。角の主はきっと"もう居ない"。
しかしチックは彼女の姉を"見つけられなかった"ことを悔やんでおり、探し続けることだろう。
既にこの世に居ないのなら、居ないという確たる証拠が掴めるまで。