PandoraPartyProject

SS詳細

這い寄る混沌、マジ許すまじ!

登場人物一覧

ロジャーズ=L=ナイア(p3p000569)
同一奇譚
ロジャーズ=L=ナイアの関係者
→ イラスト

●毎晩、女のコが街の平和を守りに行くとか行かないとか

「いっけな〜い、寝坊寝坊〜!」

 日曜日の深夜に再現性東京を駆け抜けるアタシは火々神・くとか、パッと見は何処にでもいる16歳の女子高生!
なんで『寝坊』かっていうと、鬼のように山積みの宿題をやっつけて、ちょっとだけお昼寝するつもりが気づけばこんな時間だったから!
因みに朝9時から取り掛かってた宿題が終わったのは6時過ぎ! アラームをかけたのは7時! 実際に目が覚めたのは……なんと真夜中11時!
も〜、あれもこれも全部学年主任の国松クソマツのせいなんだから! 今度会ったら天パ燃やす!!

そんな訳で冷えたご飯をチンしてガッと詰め込んだアタシは、絶賛日課のパトロール中だったんだけど、途中でサツに補導されそうになったワケ。

「ちょっと、アタシがどこの誰かわかって言ってるの!?」
「火々神さん家のお嬢さんでしょ? 今日も?」
「分かってるなら止めないでよ〜!」
「でも、僕らも通報受けちゃったからさ、このまま帰っちゃうと立場的にね。とりあえず僕と家に着くまで歩いてくれればいいから。その後は自由にしていいから」

良かった、タイプの人だった。それにしても、こんなに毎日健気に頑張ってる美少女を不良少女と宣うのは一体どこの誰かしら?
ああそうだ憎きの崇拝者に違いないわ!! マジ許すまじ、灰に還さなきゃ!!!

「んー……?」

急にお巡りさんの足が止まって、遠くの方にライトを向けた。そこには全身真っ黒なヒトの影。あれは怪しい。

「ね、アタシよりあれのがよっぽど通報されるべきだと思うんですけど。ガチ不審者なんですけど」
「あー、そだね。一応声掛けとこっか。あのー」

ちょっとお時間よろしいですかー、と言いながらセリザワとかいう警官がアタシから離れてすぐのことだった。

「い、あ、あ」

ソレを診たセリザワの声が震える。喉が震える。血の気が引く。そして。

「ば、ば、だ……」

その手からカラン、とライトが転げ落ちた。

「う、うわあああああ!!!」
「え、ちょっ、お巡りさん!?」

ちょっと、このか弱い※大嘘美少女を置いてどこに行くつもり!?
そう叫んで見るけれど、その背中はみるみるうちに遠ざかっていく。

──Nyahahahaha!!

その笑い声に、アタシはすかさず足元のライトを拾う。照らし出されたその姿は、ああ、見間違う筈もない。

「アンタ、這い寄る混沌の化身ね!?」
「ム、時計の針は零時を廻ると言うに馬車も従者も無しに夜道を往くか娘。悪い事は言わない、疾くこの場を去り給えよ」

ソレは、手を伸ばして、アタシの肩に触れようとする。アタシは咄嗟にそれを──

「厶」
「見つけたわよ。這い寄る混沌」

その目の奥に、静かに炎が灯る。髪が燃えるように風に揺らぐ。両者の間合いは、戦いを知る者同士のそれへと切り替わっていく。

「火々神一族の名に賭けて、アンタの存在塵一つも残さないんだから!」

そう、この美少女アタシ、火々神・くとかの正体は夜妖退治の専門家。
特に這い寄る混沌と因縁深い、火の神を祀る一族だったのです!



●勇み挑んだのはいいものの全く歯が立たなかったアタシはベショベショに泣くとか泣かないとか

「なんで……なんでよぉ〜!!」

 アタシは肩で息をして、額から汗を落とす。目の前には尚も変わらず聳える巨大な壁。Nyahahaと笑ってアタシを見下ろす混沌そのもの。

「なんで……こんなに焼いてるのに崩れないの!? 燃やせないのよぉ〜!!」
「解を呉れてやろう娘」

悔しいけれど、その言葉に耳を貸さずにはいられない。ソレは静かな声で、こう告げた。

「貴様がHP40%以下で本領発揮かつ攻撃技が基本背水で復讐型な所為なのでは?」

何こいつ、急に第四の壁を越えてメタいことを言って来たんだけど。
でもなんか覚えがある気がする。アタシは昔っからピンチの時こそ強いと言われてきた。夜妖に裂かれて、撃たれて、呑まれかけたその時こそ、この炎は負けじと相手を包み込むのだ。
さて、これとの戦いはどうだろう。こちらの炎は、あいつに全く効いている気がしない。かと言ってあちらは無抵抗、というかこっちに全く手を出してこない。アタシはアレを燃やせないし、あっちもこっちを攻めて来ないので倒されるわけでもなければ、炎の勢いがこれ以上付くこともない。

……えっ? もうアタシの手の内が割れているってコト?
いやまさかそんな筈ある訳。っていうか。

「う、うるさいうるさい! 黙ってなさい!!! つーか攻撃しなさいよ!」
「面倒な女だ」
「アンタも女じゃない!!!」
「確かにその通りではあるが、私が仮に異なる性を持とうとも吼えるのだろうな」
「そーよアンタが這い寄る混沌である限り絶対見逃さないんだから!」
「ウーンこの話通じない感」

気づけば戦いは、水掛け論の言争いに変わっていた。これが何時までも続くのかと思われたその時。

「こら、お前達何をやってるんだー!」
「ヤッバ」

きっと逃げ出したセリザワから事情を聞いたのだろう、同僚っぽい警官がバタバタと駆けて来た。ソレは、アタシに目(?)を合わせて言った。

「娘。お前にとっても見つかるのは善くない事であろう? 今宵は引き分けと言う事で互いの顔を立てようではないか」
「あっちょっ、まっ!」

言うが早いがソレは溶けるように闇へと消えてしまった。追いかけたいけど、うかうかしてたら今度こそアタシは不良少女と言われてしまう。そうなればおじいちゃんがお小遣いくれなくなっちゃう!

「お、お、覚えてなさ〜い!」

一体どちらが悪役なのやら、典型的な捨て台詞を吐いてアタシはこの場から逃げ去った。
最後に嘲笑うようなあの女の声が、耳の奥にこびりついた。

●あまりにも予想外の再会に意識が遠のくとかのかないとか

 そんな事があったのが、去年の暮れ頃の話。アタシの非日常な日常は、大きな変化を迎えていた。そう、今日からひと味もふた味も違うアタシになるのだ!

「……というわけで、今日から希望ヶ浜学園の仲間が増えました。自己紹介お願いしますね」
「火々神・くとかです。よろしくお願いします!」

そう言って、教室を見渡す。真面目そうな子、太い子細い子、如何にもギャルな子、無口そうな子、普通の子。色々居るけれど、皆と仲良くできるかなあ?
そしてそんなアタシを見守っていたのか、廊下からの視線を感じる。
そこに立っていたのは、いた、のは、

「ああーあのときの!!!」
「えっ火々神さん!?」
 
廊下に飛び出すアタシを今は止めないでくれ!

「な、な、ななななな……なんでアンタが、ここにいんのよ!?」
「ふむ、この文の筆者を口に出す迄に狼狽えるか」
「何訳分かんない事言ってるのよ! なんでここに居るかってきーいーてーるーのー!!」
「何故って君」

一拍の間をおいて、コイツはこう告げた。

「私は美術部顧問なのだよ。お前も今日から、私の教え子ということになろうな。宜しく、貴様」

コイツが。先生。美術部顧問。
這い寄る混沌が。我が一族の怨敵が。よりによって、アタシの学校に?
ああ、駄目だ、もう、無理。
重力はアタシの身体を床へと叩きつける。担任の慌てる声が遠くで聞こえた。

「嗚呼、誰ぞ、直ぐに彼女を保健室へ。女子が相応しいと思われる」
「は、はいっ」
「えーっと、火々神さん、しっかりー?」

優しそうな女の子二人が、アタシを支えて連れて行く。
……アタシ、これからどうなっちゃうの〜!?

おまけSS『実現の可否がまったく保証されない次回予告のような何か』

●少女、ペットに向けてぼやくとかぼやかないとか

 もー、転校初日からアレがいるとかマジありえないんだけど!
そもそもどうしても誰もツッコまないの!? アタシが変なの!?

でも待てよ、ピンチはチャンス、這い寄る混沌が近くにいるって事は、逆にアイツの弱点を掴むチャンスなんじゃない?

よーし燃えてきた! 今日からアイツの行動を徹頭徹尾、一挙一投足までウォッチングしちゃうんだから〜!!

次回、【気になるアイツは美術部顧問?】※タイトルは仮のものです、お楽しみに!

明日はきっといい日になるよ。ね、シャンタッ君?

『いあいあー!』


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