PandoraPartyProject

SS詳細

ブラック・リスト

登場人物一覧

アーリア・スピリッツ(p3p004400)
キールで乾杯
アーリア・スピリッツの関係者
→ イラスト

●御礼
「な、なんですかな貴方は! 一体何が目的で……!!」
 ある家。仕事を終え、自宅に帰還した男を待っていたのは――襲撃だった。
 灯りを点ける前に背後から取り押さえられたのだ。闇夜の中でもがくが、駄目だ。よくわからないが凄まじい力で振りほどけない。この膂力、背に感じる平たい感触。さては男だな盗賊か!!
「か、金なら奥の方にありますぞ! だから命だけは……」
「――お金? そんなモノに興味は無いんですよ」
 その時前方からもう一人現れた。暗闇でよく分からないが、仲間がいたとは……!
 と、思ったのだがしかし。
「幻想第六裁判所の裁判長閣下……ですよね? その節は大変『お世話』になりまして」
 聞こえてきた言葉に驚愕する。
 私の事を知っている!? い、いや待てよ、この声はどこかで聞いた事があるぞ。
 そう、たしか先日……
「ま、まさか貴女は――ッ!!」
 思い出した。先日の、ドヤロウ伯の殺人事件の容疑者として勾留されていた!

「ナイチチの新聞記者――キッチュ・コリンズ!!」

 よーし、ちょっとカメラ止めろ。

●nice boat
 幻想第六裁判所裁判長、自宅で怪我。
 本人は怪我の後遺症か? 『ちっぱい万歳!』と裁判所で叫ぶなど錯乱している模様――
「なんですかねこの『錯乱』とかいう失礼な単語は!! ねぇキッチュさん!」
「本当ですよリリファさん! どこの新聞社……隣のだ!
 くぅ、今度あたし乗り込んでやりますからね!! 見てろよ執筆者――!!」
 そんな見出しがとある新聞の片隅に乗っていて。見ながらリリファ・ローレンツとキッチュ・コリンズの二人は酒場で慰労会を行っていた。何の慰労会かって? 別に互いの一部分んの事を慰め合う会ではない。これは、そう。先の『御礼参り』の慰労会で。
「ふっふ――ともあれこれで、またブラックリストの一つを潰せましたね」
 キッチュがどこからか手帳を取り出して、×印を付けている。
 内に記されているのは名前だ。×印が付いているのが数人、その下にはまだ幾人もの名前が並んでいて……そう、もう大体お分かりだろう。このリストは『触れてはならない事に触れてしまった』人物達の名前である。おっと触れる事が出来ないモノなのに触れてしまったとはこれは一体。あっはっはっは!!
「なんかさっきから見えないけど不穏な言動を繰り返している輩の気配を感じますね」
「リリファさんもそう感じます? あたしもなんですよね……気のせいかな……」
 ヒッ!! と、突如虚空を見据える二人。やめろこっちを見るな何もいません。
 ともあれ閑話休題。先の襲撃、もとい御礼参りを済ませた二人は成功を祝って酒場で慰労会をしていたのだ。キッチュはお酒を。リリファはまだ未成年なのでオレンジジュースをちゅーちゅー啜りながら、仲良く談笑している。
 二人の関わりは少し前――キッチュは冤罪なのだが、殺人事件の容疑者として逮捕された事があった。その際にローレットからの護衛人……というか弁護人の一人として現れたのがリリファだ。
 その際にちょっとした共通点からか二人の馬は不思議と合う様で、数段飛ばしの勢いで仲良くなり――
「お、美味しい!! なんですかキッチュさんここのお肉の味わい、尋常じゃ……おかわり――!」
「ふっふっふーん。そうでしょうそうでしょう、中々いいお店なんですよここ! 店員さんもっと持ってきてください! 店員さ……今なんて言いました? ちょっと待ってね『お嬢ちゃん』達? んっ?」
 時折こうして二人で食事に行くぐらいには親交を深めていたのだ。
 骨付き肉を両手で持ってハムスターの様に齧り付くリリファ。お酒を喉に流し込みながら更なる注文をするキッチュ。至福の一時だ。仲の良い者と共に笑い合いながら食べる食事にまずいものなどありはしない。傍目からするとまるで仲の良い『子供』達に見えるが――それもまた言ってはいけない事として。
「――さて、と。良い感じにお腹も満たされてきた所で」
 口端に付いた肉汁を親指で拭うキッチュ。
 次いで開くのは先程の手帳だ。何をしているのか? これは慰労会であるのは確かだが――同時にそれだけで終わる場ではない、と言う事だ。手帳の名前はまだまだある。つまり、そう。
 次なる『目標』を定めねばならない。
「あと誰の名前が載ってるんですかね?」
「えっとですね、ゴッドさんはネタだらけなのでもうしょうがないとして……チャレイヨォンは明後日自宅を襲撃するとして……明日の目標として最優先なのは――」
 ×なき者の名を辿る。人差し指を進ませて、止まった名は。

「――ギルオスさんですね」

 ギルオス・ホリス。ローレットの情報屋の一人。
 そして我々の『一部分』をバカにする者……!
「成程、あのあんちくしょうめを叩き潰す時がやってきたと言う事ですか……!」
「一部分が一体どこの事なのか問いたださないといけないですからねぇ……うふふ。噂のとってもすごいクローゼットの中を調べてみれば、あれやそれや人に明かしたくない秘密を握る事が出来るでしょう……!」
「昼間は確実にローレットにいるでしょうしね……! その時にこの鍵を使って突入すれば――」
 うふふ――あはは――あははははは――
 うーん、二人してとても愉しそうな笑顔をしている。仲が宜しくてとても結構な事である。禍々しいオーラが発せられている気がするが、触れたらヤバイ系だきっとあれ。うん、放置しておくのが一番良い被害避けになるだろう――

 だが、その少し後ろの席にて。

「……えっ? なんで? おかしいでしょなんで僕が標的になってるの?」
 偶然居合わせていたギルオスが全ての会話を捉えていた。
 酒の入ったグラスが震える。身に覚えが、身に覚えがなさすぎる。ここは声こそ聞こえるが視線的には死角になるので彼女達は気付いていないだろう。でもやめてよ。本人居ないつもりで死刑宣告しないで! 僕のクローゼットには貰い物しかないぞ!
 一体何が彼女たちの尾を踏んだのか……さっぱり分からないぜあのちっぱい共……!
「多分、なんだけどぉ」
 そんなギルオスへ、肩に手を置くアーリア・スピリッツ(p3p004400)。
 隣に座っていた彼女はご愁傷様と言わんばかりに、馴染みのアルコールを傾けながら。
「そういう思考な所なんじゃないかしらねぇ~?」
 女の勘は鋭いものだと。それを理解して無いとは、あぁ――

「あ、でもやっぱり本人を直に襲撃した方が良いんじゃないかとも思いますね! あたしとしてはローレットを出た辺りで後ろからゴツーンと! ほらこのバットで!!」
「でもそれだと暴漢と間違われる可能性もあるので……私はやっぱりキッチュさんに、あんちくしょうのクローゼットの中を幻想タイムズですっぱ抜いてもらう方が……!!」

 あぁ――全く本当に。傍から見ている分には面白そうだ……!

PAGETOPPAGEBOTTOM