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黒曜の寵妃
登場人物一覧
名前:フェリシテ・フォートリエ(フェリシテ・エマリー)
種族:人間種
性別:女性
年齢:20歳
一人称:わたくし
二人称:あなた、~様
口調:ね、よ、よね?
特徴:世間知らず、フォートリエ男爵家侍女
設定:
白百合の如き嫋やかな娘。白磁の肌に、黒曜を思わせる眸、艶やかなぬばたまの髪を持った『黒曜の姫』
領地さえ有さない貧乏男爵家に生まれ、ある辺境伯家の婚約披露パーティーで26も年の離れた男に求婚された。
最初こそ戸惑いを隠せなかったフェリシテであったが、望めば何だって用意される環境を良しとして彼の求婚を受け入れた。
年が離れすぎていたこともあり正式な婚儀はまた後ほどとフォートリエ男爵家はエマリー辺境伯家と契約を結んだという。
――フェリシテが20歳になった暁に、エマリー辺境伯家は彼女を娶る為に多額の金銭をフォートリエ家に支払うこと。
娘を売ったと非難されようと、フォートリエ家が残るためには仕方が無い事であった。
「どうか許して」と告げた母の言葉にフェリシテは首を捻った。愛される事が当たり前であった幼い少女は、ただ、愛されに行くだけだったのだから。
当時12歳であったフェリシテは溺愛され、何だって求めた者を与えられ続けた。
幼すぎた彼女は外を知らぬままにぬくぬくと成長する。無垢な娘は自身の我儘を叶える為にエマリー領の領民達が増税に増税を重ねられていることは知らない。
18歳になった頃、知らぬ男達が『お前のせいだ』と理不尽に糾弾して来たのだという。救われた女はエマリー辺境伯に「おそろしかった」と告げた。
何も知らないままぬくぬくと真綿にくるまれていた彼女は、またも真実から目を逸らす。
その方が都合が良いから。だからこそ、そうやって目を逸らして純真な女のままでいた。
……今、彼女がエマリー辺境伯と婚儀を結んでいないのは辺境伯家にフェリシテを『買う』だけの金がないからだ。
美しい彼女を求める声は山ほど有るが全ての我儘を叶えてくれる者はそうそう居まい。
20歳に成長した彼女はロズスタン・フォン・エマリーと共に没落するつもりはない。
いつか、あの人が人に非ず、ただの塵と成り果てるならば――女は強かに、全てを捨てるだろう。