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散華する仏桑華
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- 咲花・百合子の関係者
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●「できるか?」その問に彼女は「できる」と答えた。
葉合・ヒビスは「チャラにつく」、そう言った仏桑華コギャル双掌拳の学園長の言葉に無言で頷いた。
かのチャラはかつて栄華をほこった帝国である。
しかして時の流れは残酷なもの。その栄華は失われ今では斜陽を迎えるのを待つ国だ。
それでも学園長はチャラにつくと断じた。
本来であればヒビスはこの学園長を排除してでもこの愚かな決定を退けなければいけないはずだ。
しかし、彼女らコギャル族はチャラの男を婿に迎えることが多い。彼女の姉妹とて、チャラ男を婿に迎え幸せな家庭を築いているのだ。もし仏桑華コギャル双掌拳がチャラを見捨てると決めたところで、彼女らは愛しい男とその子の故郷を守るため、いかなくても良い死地に向かうことになるのだ。
それをヒビスは見捨てることができない。
古くはコギャル族とは虎ギャルと表する。猛虎の如き勇敢な様をたとえたその一族はまた情愛すらも猛虎の如しなのだ。
虎は千里往って千里還る。
この言葉もまたコギャル族の言葉だ。虎は千里の距離を走るが巣穴で待つ自分の子を思いその日のうちにもう一度千里を走り子の元に戻るという。親の子への愛は計り知れないという気持ちの強さを表した言葉である。
ヒビスにとってその言葉は親から刻まれた誓いにも近い言葉である。
戦いは始まる。
チャラを狙う敵は強大であった。
しかして洞門の仏桑華コギャル双掌拳の仲間やチャラ男兵士と協力をしあい、城門への道の要塞化をはかり、チャラの斜陽までの時間を伸ばすことには成功していた。
その要塞化と見事な連携の前には対戦していた他流派の美少女も、そしてチャラをおとさんとする周辺連合国も攻めあぐねることになっていた。
もとより、この世界の美少女という存在は圧倒的な武力を誇る個人である。
その個人の求むものはあくまでも『戦闘』である。
一心不乱の戦闘。それをもとめ、弱った獲物を蹂躙するがために現れたハイエナだ。
そんなハイエナたちは戦闘が蹂躙ではなくなれば平気で離脱する。
それどころか手を組んでいた国すら裏切る。
連携を高めていくチャラに対する連合軍の連携は皆無、とまではいかなくてもままならないものである。
ヒビスはその軋轢に勝機を見出し、彼女ら美少女と連合軍の連携を崩していく作戦にでる。
その作戦は見事奏功する。
連携力の失われた連合軍がこのまま退けばチャラを襲う戦渦は収束することだろう。
戦いで姉妹の婿が失われた。
しかし戦いが終われば失われたものもまた報われる。
それだけが今のヒビスにとって唯一の希望であった。
しかし、その希望もある日打ち砕かれることになる。
ヒビスは仏桑華コギャル双掌拳の最強の使い手として、王城へ至る門への守りを任されている。
ドクン、と心臓が跳ねる。
いやな予感だ。
ドォンと遠くで爆発音が響き、門の周辺に粉塵が飛んでくる。
「第一正門の守りは? なにがおきたのだ!」
ヒビスは声をあげる。傷だらけの伝令兵がヒビスの元に近づいてくる。
「どうした、そこもとはなにゆえそれほどまでの怪我を?」
伝令兵は息も絶え絶えにヒビスに悪夢を伝え、息絶える。
抱き上げた伝令兵はもう動かない。昨日城門で守る彼女にタピオカミルクティーを差し入れし、この戦いが終わればコギャルと結婚するのだといっていたではないか。
みどもはこのチャラ男伝令兵の恋人になんと説明したらよいのだ。
ヒビスの瞳から涙が溢れる。
ズン、と周囲を圧倒するような気配を感じる。今は泣いている暇などない。ヒビスは彼をちかくのチャラ男に任せ立ち上がる。
美少女として、この戦氣(おーら)に立ち向かわなければならないからだ。
これが最後の戦闘になればいいと思う。
終われば平和な時代がくる。もとより最強といわれたところでヒビスは戦闘より文献をいじるのがスキなのだ。
これが終われば古代文献よりコギャル文字の復興の続きができる。
その日々はきっと――楽しいはずだ。
粉塵の向こうに人影が現れる。
間違いない、この状況を作った美少女だろう。
しかし、一人? たったひとりでここまできたのか?
やがてヒビスはその人影と対面する。
対面してわかった。
「アレ」は終わりだ。
斜陽をもたらすもの。
終わりそのもの。
自分では、いや自分より強いものでもアレには絶対に勝つことができないだろう。
絶望という概念が形になったものが『アレ』だ。
後ろに控えるチャラ男兵士に逃げろと伝える。彼らは否定するがそんな場合ではないと一括する。
「みどもは美少女だ。美少女として散る覚悟は持ち合わせている。ここはみどもが止める。そこもとたちは生きろ。
生きてまたこのチャラを、みどもの姉妹をまもってくれ」
その血を吐くような言葉に兵士たちは唇を噛み締めうなずく。
みどもは今日死ぬのであろう。
絶望は黒く長い絹糸の髪に白い制服がよく似合っていた。
本当に、本当に。
美しい美少女だった。
最強に挑み死するは仏桑華コギャルにとって誉。
「ヒビッチだけEカッコすんのずるたんじゃね?」
「そーそー、げきおこぷんぷんまる!」
そんな彼女の両隣に姉妹がならぶ。ばかものめ、そこもとたちを殺したくないから逃げろといったのに。
姉妹の瞳には覚悟の色があった。
「ここでにげたらコギャルの恥じゃん? それにチャラ男守る美少女ってちょーエモい」
ここで仲間である彼女らに逃げろというのは無粋にも程がある。
「さいきょー倒してウチらテンアゲ!」
彼女らとて生き残る算段などないのだろう。彼女らとて子を守りたい。
虎は千里往って千里還る。
ああ、いい仲間をもったものだ。
ここで稼いだその一秒は仲間の大切な人を救うかもしれない。
「やつがれは仏桑華コギャル双掌拳葉合・ヒビス。貴公の名を聞きたい」
穏やかな気持ちだった。この後戦うというのに。
自身の後ろに赤いハイビスカスの華が美しく咲き乱れる。味方もまた今まで見たこと無い程の美しさでハイビスカスを咲かせている。
「吾は 咲花・百合子 (p3p001385)。白百合清楚殺戮拳伝承者。生徒会長である」
その名乗りとともに百合子の背に大輪の白百合がレースに包まれ花開く。
美しき絶望の名をヒビスはこころに刻んだ。
ダン!
両者のの掌が打ち合わされる。一合、二合、三合と立て続けに掌底が地響きをたてながら打ち合わされる。
ハイビスカスの花びらが散る。
ヒビスは今この瞬間だけに輝く。
美しく気高く。
だから持てる力を全て捧げる。
勝てるわけはないだろう。姉妹も散華するだろう。しかし――。
愛する仲間と共に逝けるのであればそれは美少女冥利に尽きるというものだ。
戦いは続く。一進一退。いや一進もできす二退三退しているのだろう。終わりは近い。
美しき死神は拳を後ろにひく。
絶体絶命の拳は自らに大輪の仏桑華を咲かせるのだろう。
ヒビスは目を閉じる。
ああ、美しき白百合よ。
エンドマークをつける相手が貴公でよかった。
そしてヒビスは散華した――。
――したはずだった。
気づけば彼女は見も知らぬ混沌の大地にひとりいた。わけも分からずに歩く。
そして生き倒れ、もう一度目を開けた場所は――。
――葉合・ヒビスは今も其処にいる。
- 散華する仏桑華完了
- GM名鉄瓶ぬめぬめ
- 種別SS
- 納品日2019年06月09日
- ・咲花・百合子(p3p001385)
・咲花・百合子の関係者