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グルグルアイランドにご招待!
登場人物一覧
ぎっくり腰は癖になる、という言葉がある。
1度「そう」なってしまうと次からは些細なことで同じ結果に導かれてしまうといったような意味にも使われたりする。
1度詐欺にあった人は別の詐欺師に狙われるとか、まあそういうのも同じ感じだ。
そして……ちょっと理解できない不思議な現象でも、似たようなことが起こったりするかもしれない。
たとえばグルグルして不思議な場所に辿り着いたなら……なんか偶然似たようなことが起こったりしても不思議じゃない。
いやまあ、不思議なんだけれど。
こんなこと、何度も起こるはずはないんだけれど。
再現性は一切ないけれど、1度くらいはそんな奇跡じみたことだって起こるかもしれない。
これは、そういう話であり、その主役は……1人の少女である。
「ど、何処だろう此処……」
少女は、なんだかおかしな場所に来てしまったな……と、そんなことを考えていた。
確か此処に来る直前まで、盗賊に追われていたはずだ。
新しい皇帝陛下によって治安が急激に低下して、力だけがもてはやされるような世の中になってしまった。
そんな最中、少女のいた村も盗賊団に襲われ、火をつけられてしまった。
村の中、森の中……ぐるぐると逃げ惑う中、いつの間にか少女はこの場所に居た。
不思議な場所だ。
何処かも分からない……しかし鉄帝の何処かだろうと思わしき山に囲まれた場所。
周囲にあるのは無数の回転系遊具。
メリーゴーランド、コーヒーカップ、吊り下げた座席が大回転するスピンゴーランド、その他諸々……あと公園の回転系遊具。
食べ物系の露店もあるが、トルネードポテトに渦巻ソーセージしか売っていない。どうあっても回転系で攻めたいようだ。
あと飲み放題の酒の自販機もある。回るからだろうか。誰のセンスなのか。
あ、いや。なんか売り切れになっている。よかった、子供は飲めないから安心だね。
そして空を見上げれば、グルグルと謎のエネルギーが回転している。
はたして此処は何処なのか?
しかし店員はゴーレムか何かのようだし、他に人間がいないようにも見える。
ひとまず……逃げ切れた、ということだろうか?
「よかったあ……」
少女はそのまま地面に座り込んでしまうが、遊園地など行ったこともない。
話には聞いたことがあるが、その程度だ。
「なんか楽しそう。不思議な気分……」
少女は回っているメリーゴーランドを、座ったまま眺める。
屋根の付いた円盤の上を楽しげに動いていく馬や馬車。
軽快な音楽も流れる光景は、とても綺麗だ。
他には高そうなカップを巨大化させたものがたくさんある遊具や、よく分からない鉄の球状のオブジェのようなものもある。
これはなんだろう、全部回る系のようだけど、なんなのだろう?
分からないけれど、歩いているうちに少女は疲れて椅子に座る。
「あ、これも回るんだ……」
不思議なものだ。此処には回るものしかない。
一体何処の誰がこんなものを作ったのかは分からないけど、きっと回るのが好きで一日中回っていたい人なんだろうなあ、と少女は思う。
けれど、疲れた。とても疲れてしまった。
少女がそのまま寝てしまうと……空からオラボナ=ヒールド=テゴス (p3p000569)が落ちてきてバウンドする。
そのまましばらく動かなかったが……やがて起き上がり笑い出す。
「Nyahahahaha!!! まさか同じ場所に辿り着いてしまうとは! 斯様な偶然、三度は興ざめだが二度までならば許容範囲か! さて、本日は如何なる……」
言いかけて、オラボナはその少女を見つける。
「嗚呼、成程。今回の私の役目はそれか」
少女を抱え上げ、オラボナは歩き始める。
まあ、そのうち何処かに辿り着くだろう。そんな、賽子任せなことを思いながら。