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『――――――××××(廃棄されたメモ書き)』
登場人物一覧
情報:『患者の名誉、また今後のため、一切に於いて秘匿。
このメモに於いても個人的な記録の予備として扱い、正式なカルテに記入したのち、此方は焼却等処分によって確実に消去させておくこと』
設定:
――――――某日、幻想内の診療所にて、とある患者のカルテに張り付けられたメモ書き。
『相手の口調等は省き、質疑応答に対する必要な情報のみを記述。(走り書き)
Q.焼失した腕が復元している?
A.はい。未だ数cm程度ですが。ただし問題が。
Q.問題とは?
A.触覚、痛覚が有りません。思った通りに動かすことが出来ますが、復元された部位からは如何なる感覚も送られてきません
Q.後で検査します。他には?
A.「動きます」。
Q.もう少し詳細に。
A.復元された部分を基点に、時折此方の意思を無視して勝手に痙攣したかのように動きます。親しい人の近くにいるときは、特に。
Q.具体的に、それが起こり始めた時期は?
A.自身の裡に眠る瓊草――私が焼失させた片腕に寄生したモンスターの存在を自覚し、その効果を香水として『利用』し始めた時から。』
――――――メモ書き2枚目。
『この報告から、彼女の体内には明確に、以前討伐したモンスターの一部が眠っていることが証明された。
肉体の復元が行われていると言う話だけを聞けば、それはメリットのようにも思えるが……私にはそうは思えない。
件のモンスターを討伐するにあたって、その個体が取っていた行動はひたすらに「自身を殖やす」というだけに尽きる。それが無辜の村人であろうと、自身に敵対する存在であろうと変わりなく。
で、あるならば――今現在彼女に憑りついている個体が行っている行動も、その範疇に含まれるのではないか。
例えば、前述した「損傷を復元する」。これはより正確に言えば、「新たな肉体を形成している」と言い換えればその脅威の度合いが分かる。
また、「誰かの近くで復元部位が動く」と言うのは、「新たな肉体を得たモンスターが、己の分体を『外』に植え付けようとしている」ようにも考えられる。
無論、全ては推論に過ぎないが、もしこれを事実だとすると、後者の『症状』に気がかりが残るのだ。
――「親しい人の近くでは特に動く」。
もしこれが「寄生先の個体に警戒心を抱いていない存在」と判断するだけの知恵を備えたゆえの行動であるなら。
……その思考を、何処から『供給』しているのか、と』